フジテレビのドキュメンタリー番組『ザ・ノンフィクション』(毎週日曜14:00~ ※関東ローカル)で、22日に放送された「人生を変える寿司~東京 板前物語~ 前編」。都内に7店舗を構える人気寿司店「意気な寿し処 阿部」の熱血社長と板前たちを追った作品で、29日に「後編」が放送される。
会社をリストラされた中年男性や、児童相談所の紹介でやってきた若者など、様々な事情を抱える人たちを社員に受け入れてきたのが、今回の主人公である阿部浩社長(53)。どんな過去や背景があっても「人生は変えられる」という信念を持って奔走する姿から、今作がディレクターデビューとなる小川将也氏(ネツゲン)は「人と向き合う覚悟」を学んだという――。
「阿部さんの店だから、ここで頑張りたい」
前編で描かれたのは、無断欠勤を繰り返すようになってしまった入社13年目のサワさんと、毎日のように彼を自宅まで訪ねて声をかける阿部さんの姿。昨今の考え方では、“自宅まで押しかけてくる上司”として「パワハラではないか?」と捉える人もいるかもしれない。
小川Dも「最初は大丈夫なのかなと、ちょっと心配になりました」というが、その後も取材を続けて見ていくと、「阿部さんと従業員の人たちにしか分からない関係性があるんだと気づきました。サワさんに“阿部さんが家まで来るのは嫌じゃないんですか?”と聞いたら、“そんなことないです。阿部さんの店だから、ここで頑張りたいと思ってるんです”と答えてくれたんです。本当に家族のような関係なんだと思いました」と理解した。
勤務日数が減り、給料が下がったために滞納してしまったサワさんの家賃を、阿部さんが立て替えた際には、小川Dからたまらず「もう見放してしまっても仕方ないのでは?」と聞いたことも。それに対して、「そんなの分かってるけど、やるんだよ」と言う阿部さんに、小川Dは「弟子を思う信念の強さを感じました」と受け止めた。
「自分が情けない」悔し泣きする姿に感情移入
番組に映るのは雨の日が多いが、「僕、めちゃくちゃ雨男なんです。(このインタビューを行った)今日も雨ですね(笑)」と自覚。それでも、「いい場面が撮れた時は、雨が降っているというジンクスがあるんです」と前向きだ。
そんな雨の中、自宅から出てこないサワさんを、阿部さんは5時間も待ち続けた。「まさかこんなにサワさんの家で時間がかかると思わなくて、途中でカメラのバッテリーがなくなってしまったんです。その場を離れるわけにいかないので、途中からスマホで撮らせてもらいました」と、想定外の場面に立ち会った。
これは、約2年におよぶ今回の取材の中でも序盤の出来事だったそうで、阿部浩という人間に一気に引き込まれることになった。
そこまで阿部さんが親身に寄り添ってくれているのに、期待に応えられないサワさんが「自分が情けない」と悔し泣きする姿は、前編の中でもハイライトとなるシーン。小川Dは「あの場面はサワさんにすごく感情移入しました」といい、「今の時代にあれだけ向き合ってくれる阿部さんの存在は、すごく心強いんだろうなと思いました」と想像した。