3月に開設された「フジテレビドキュメンタリー」公式YouTubeチャンネルの登録者数が10万人を突破。これを記念して13日、ドキュメンタリー番組『ザ・ノンフィクション』(毎週日曜14:00~ ※関東ローカル)で2020年4月に放送された“クズ芸人”小堀敏夫(ガッポリ建設)に密着した「52歳でクビになりました。~クズ芸人の生きる道~」の期間限定配信が、同チャンネルとFODでスタートした。
パチスロとギャラ飲みで生計を立てる小堀のドキュメンタリーは、婚活に挑み、体験修行の寺から2日目で逃亡するところまでを描いた続編「クズ芸人の生きる道~57歳 婚活始めます~」を今年1月に放送して大きな話題に。ウソをつき、約束を破り続けても、どこか憎めない彼の魅力を、「あの生き方が面白い」と語る朝川昭史ディレクター(NEXTEP)は、さらなる続編について“映画化”という構想を打ち明けてくれた――。
初対面で賄賂を持ちかけてきた
朝川Dと小堀との出会いは、彼が当時所属していたワハハ本舗からの紹介。主宰の喰始が「クズ芸人」と呼び、手を焼いているということで、小堀の家賃28,000円(当時)の部屋を訪ねると、「いきなり“どうぞ”と言って草加せんべいを渡されたんです。“これ何ですか?”と聞いたら、“いわゆる袖の下(賄賂)です。よろしくお願いします”と言われて、びっくりしたのを覚えています。もちろん受け取りませんでしたが」と、強烈な第一印象を食らった。
その上で、取材対象にした決め手は、「喰さんから“クズ芸人”と言われてるのを知らなくて、“俺、天才なんですよ。だから稽古もしないし、稽古するやつはバカだから”とか、むちゃくちゃ言ってて(笑)。今の芸人さんの考え方と全く違うのが面白いと思って、興味を持ちました」ということで、密着取材がスタート。実際に追い始めると、「びっくりするくらいテキトーで、ちょっとあ然としました(笑)」と、また面食らったという。
ウソや約束破りを繰り返し、喰からは「人に興味を持って人と接しろ」と説教されていた小堀。取材当初は、朝川Dから「もっと喰さんの言うことを聞いたほうがいいんじゃないですか?」など進言することもあったそうだが、「周りのことはまるっきり考えないで、自分の思うようにしか動かない人なんで、もうほったらかしですね」と諦めた。
だが、今年1月の放送で、自暴自棄になって「坊主頭になる」と言い出した時は、「あの頃、顔がちょっと似てる水原一平さんのネタがテッパンだったので、“絶対やめたほうがいい”と言ったんです」と説得。
それでも、「俺はもう出家する」と制止を振り切って寺で修行することになった小堀。婚活のために入会した結婚相談所の山本早織社長に「これから2年修行して、生まれ変わって帰ってくるから、それまで婚活はお休みします」と宣言し、朝川Dも「これは本気だと思いました」と覚悟を感じたが、蓋を開けたら2日目で寺から逃亡していた。
SNSの誹謗中傷もどこ吹く風
放送の反響は大きく、小堀が街を歩いていると見知らぬ年配の人が近づいてきて、「あんなことしちゃダメだ!」と説教されることが2件ほどあったのだそう。5年前の放送後は、女子高生から一緒に写真撮影を頼まれることもあったが、「2回目の放送後は“遠くから見られる感じ”と言ってました。嫌われキャラとして印象付いた気がします」と、受け止められ方に変化があった。
だが、5年経っても小堀敏夫という人間は、「驚くほど何も変わってないです。(お笑いコンビ・ガッポリ建設の相方の)室田(稔)さんはケーブルテレビ局で出世して独立し、(一番弟子の)魔法使い太郎ちゃんは焼肉店の店長として頑張って、みんな前に進んでるのに、小堀さんだけ何も変わってないのにびっくりします。いい意味で言えば、ブレないということなんですかね(笑)」という。
このようにテレビ番組の密着からの大きな環境変化があっても、我が道を行くスタイルを貫く小堀。SNSでの誹謗中傷のコメントも気にせず、「注目を浴びること自体は悪いことじゃない」と前向きに捉えているそうだ。
今回のナレーションを担当したのは、フジテレビの斉藤舞子アナ。冷静で落ち着いた口調と、型破りな小堀の姿とのギャップが絶妙だ。収録中、思わず吹き出してしまう場面もありながら、「突き抜けすぎて、すごいですね」と感想を漏らしていた。