小泉今日子と中井貴一が主演を務めるフジテレビ系ドラマ『続・続・最後から二番目の恋』(毎週月曜21:00~ ※TVer、FODで配信)の最終回が、23日に放送された。

鎌倉の古民家へ越してきたテレビドラマプロデューサーの千明(小泉)が、その隣家に住む市役所職員の和平(中井)と出会い、和平の家族とともに恋や友情を育んでいく大人のロマンチック&ホームコメディ。第3シーズンとなる今作は、還暦間近の千明に定年を迎えた和平という、さらに円熟味を増した彼らの“今と未来”が丁寧に描かれた。

最終回はやはり、今作らしい“何も起こらない”が全うされており、清々しいものになっていた。

  • 小泉今日子と中井貴一=『続・続・最後から二番目の恋』最終話より (C)フジテレビ

    小泉今日子と中井貴一=『続・続・最後から二番目の恋』最終話より (C)フジテレビ

最終盤で市長問題がまさかの再燃

“何も起こらない”最終回だったとはいえ驚きのエピソードだったのは、終わり間際の最終盤に投下された「再びの和平の市長問題」だ。序盤から、律子(石田ひかり)と成瀬(三浦友和)の大人の恋の決着を爽やかに描き、真平(坂口憲二)と知美(佐津川愛美)、典子(飯島直子)と広行(浅野和之)それぞれの夫婦が改めてお互いを見つめ直し、万理子(内田有紀)は千明から立派に巣立ち新たな挑戦を見つけ…と、中盤までは実に最終回らしい、キャラクターたちの“決着”が丁寧に描かれていき、やはりこのドラマらしく“何も起こらない”エピソードの積み重ねで締めくくられるのだなと高を括っていた。

だが、そこから新しい物語を描き切る時間は残っていない最終盤、市長問題が再燃する展開になるのは衝撃であった。

もっと衝撃だったのはその“オチ”だ。和平が市長打診に再び逡巡してしまう様をちょっぴり描いたかと思いきや、突然の「9か月後」となる。そして、立候補するも落選し、だけど副市長になっていた!という“オチ”はおかしくもあり、なぜか安心感すらあった。それは、和平が副市長になっているという事象はこのドラマにとっては大きな事件なはずなのに、そこにいる和平はさして変わりがない。いつもの“困っている和平”がそこにいたということに安心したのだろう。

そして、副市長になる過程を一切ドラマチックに描こうとしない、つまり“何も起こらない”スタイルを最後の最後まで徹底したとも言えるのだ。

改めてこの第3シリーズにおいて、過去のシリーズから視聴者の見方が大きく変わった点と言えば、和平が市長になることについて、“あり”だと思わせたことだろう。大きな変化を求めていない今作にとってのそれは、かなり重要な変化だったと言える。しかもその“あり”を、市長になろうとする和平を克明に描くわけではなく、どこまでもおかしく、そしてさりげなく描写し、視聴者に“あり”と思わせた点が巧みだった。

とはいえ矛盾するようだが、和平の市長を“あり”だとは思いつつ、どこかにほんの少しだけ違和感があったのも事実。しかしそのちょっとした違和感を、和平は市長(=一番)ではなく副市長(=二番)が最も似合うという、視聴者の誰もが納得できてしまう新たな視点を加えてすべてを晴らしてしまった。市長落選からの副市長という二段オチの展開は見事であった。

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余白と未来を残した決着

そして今シリーズ最大の“何も起こらない”のピークはやはり、第3シリーズ最終回においても動じなかった千明と和平の2人の関係性だろう。11年前の前作で描かれた、酔った末の“プロポーズ”が、この第3シリーズのラストでお互い認識し合っていたということでモヤモヤが解消され、その先のもっと踏み込んだハッピーエンドが描かれるのかと思いきや、今から一緒になるわけではないが、“いつか一緒に暮らそう”という今作らしい余白、未来を残した。この決着も、やはり今作らしい、最大の“何も起こらない”だったと言えよう。

最終回は、いい大人になっても――恋はするし、失恋もするし、人がいるビーチでキスだってするし、今の今まで離れ離れだったのに急激に仲良くもなれるし、結婚するかしないかのけじめをつけないカップルもいるし、60を過ぎてもその先の未来を約束する――という今作のテーマが全て詰め込まれていたようだった。そして、主人公たちの年齢がこんなに上がってしまっていても、次回作を待ち望みたい。これまでのどんなシリーズものにもなかった稀有な作品だった。

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