ヤマハ発動機は6月、次世代操船システム「HARMO(ハルモ)」新モデルの国内販売を開始する。
ハルモの新型は電動推進ユニットとステアリングシステムを統合した革新的な電動操船システムだ。欧州では昨年11月から先行して販売が始まったが、これまで国内では実証運行を中心に活用されてきた。今回、いよいよ本格的な市場投入となる。
これに先立ち、同社はメディア向け説明会と乗船会を開催。マリン事業本部の責任者らが登壇し、新型ハルモの性能や展望について語った。
国内販売が始まる新型ハルモ、自転車とコラボの新プロジェクトも始動!
説明会に登壇した同社事業推進部長の吉田氏によると、同社のマリン事業における2024年の売上収益は5,377億円、営業利益は878億円。いずれも前年比で減収減益となったという。先進国を中心とした金利上昇や物価高による総需要の減少が影響している。
一方、同社が注力する大型船外機の分野は高く評価され、販売は堅調に推移。とくに昨年発売された「F350B」は好調で、2025年は増収増益が期待されている。そんなマリン事業で“エレクトリック領域”を担うのが新型ハルモだ。
「ハルモはこれまでに全国各地の自治体や民間企業と連携し、実証運行を通じてその性能と可能性を検証してきました。今年1月には名古屋市の中川運河で、株式会社ダイイチ様との協業による実証運行も実施しております」(吉田氏)
新型ハルモは、同社の高性能操船支援システム「ヘルムマスターEX」との統合により、操作性と利便性が大幅に向上。「商用船だけでなく、プレジャー用途にも適した製品として、幅広い利用が期待されています」と吉田氏は可能性を語る。
その言葉どおり、同社はハルモを活用した新プロジェクトとして、今秋から横浜・みなとみらいで「横浜e-project」を始動する。
このプロジェクトは、同社のバイク試乗体験施設「eライドベース」と連携し、電動自転車と電動ボートの“陸と海の融合”による新たな価値体験を提供するのが狙い。ここで使用されるポンツーンボートには新型ハルモが搭載され、快適で優雅なクルージング体験が楽しめるという。
マリン業界初、“ジョイスティックのみ”の操船システム
続いて、「ハルモ」のプロジェクトリーダーを務める前島将輝氏が登壇。新型ハルモの特徴について詳しく解説した。
新型ハルモは単なる電動推進機ではなく、電動推進ユニットとステアリングシステムなどを統合した、新型の次世代操船システム。推進機の出力は3.1キロワットで、9.9馬力相当の推進力を持つ、低速域での使用に特化した設計となっている。
特徴のひとつとして前島氏が挙げたのが、“推進機本体”の進化だ。「レイアウト構造の見直しにより、初代ハルモと比べてコンパクトなシルエットを実現しています。また、ボートへの搭載性を広げるために、船外機同様のブラケット取り付け方式を採用しました」(前島氏)。トランサムの長さやカラーバリエーションも複数用意するなど、多様な用途に対応するという。
さらに、操船機能も大きく進化。新型ハルモでは、マリン業界初となる“ジョイスティックのみ”の操船システムを開発。「初代ハルモでは搭載必須だったリモコンスロットルレバーやハンドルが不要になることで、操船席周りをすっきりとしたレイアウトにできます」と前島氏は述べ、ユーザー体験の向上をアピールした。
操船の快適性をさらに高める要素として、ヘルムマスターEXとの統合による定点保持機能やオートパイロット機能も搭載。また、「新型ハルモでは、自動車で例えるとオートクルーズ機能のように、設定したプロペラ回転数でボートを走らせ続けることが可能です」と、ジョイスティックホールド機能による操作の便利さも紹介した。
ターゲットとしては、運河や河川など低速航行を必要とするシーンを想定し、国内では小樽運河、徳島のひょうたん島、東京・竹芝などを例に挙げた。
新型ハルモ搭載船に乗ってみた!
この日は実際に、先代ハルモを搭載したポンツーンボートと、新型ハルモを搭載したカナルボートにそれぞれ試乗させてもらうことに。梅雨真っ只中で生憎の雨となったが、雨合羽を着込んで、いざ乗船!
まずは先代ハルモを2機掛けで搭載したポンツーンボートから試乗。
最初に驚くのは、その静粛性の高さだ。機械音やエンジン音のようなものは皆無で、水がややパシャパシャと音を立てている以外、ほぼまったくの無音。むしろ波の音が耳に心地よく、遠くから届く街の騒音もどこか他人事で、逆にいいBGMのように感じる。気持ちいい。波の揺れはあるが、機械による振動はまったくないので、船酔いの心配も多少は軽減される気もする。
先代モデルはコックピット周りもいろいろと賑やか。この日の操縦士さんはジョイスティックではなく、ハンドルをメインに操船していて、ジョイスティックは主に、離着岸のときに使用していると教えてくれた。
続いて、新型ハルモを搭載したカナルボートにも試乗。
こちらが新型ハルモ。ブラケット方式に変更し、取り付けも容易になったという。
静粛性について特に変更点はないそうで、やはり先代ハルモと同様、非常に優れている。
本来、新型ハルモはリモコンスロットルレバーやハンドルを不要とし、ジョイスティックのみで操作可能な仕様となってる。この日は試乗船ということで、あくまで例外。
左下の「ジョイスティックボタン」を押し、スティックを数秒前に倒しっぱなしにすれば、自動車でいうオートクルーズ機能のように、指定した速度でボートを走らせ続けることが可能。指定速度の加減速も、スティックの操作によって簡単に調整できる。
新型ハルモはさらに、潮風などの流れの影響を自動的に調整してコースを保持する「コース維持モード」や、風潮流に対して方位を維持する「方位維持モード」も新たに搭載。いわゆる、オートパイロット機能である。
また、別途コンポーネントの追加が必要になるが、指定した地点を経由できる「トラックポイントモード」や、ジグザグ運転などができる「パターン操船モード」なども使用できるという。
いよいよ国内デビューを飾る新型ハルモ。主に商用利用が想定されるが、「横浜e-project」がスタートすれば、体験機会はより身近なものとなる。ヤマハ発動機が手掛けるマリン事業の最先端を、ぜひ一度体感してみてほしい。きっと、驚くはず。













