
『Octane』UKスタッフによる愛車レポート。今回は、1924年サンビーム14/40に乗るデイビッド・バージェス・ワイズが、冬眠からサンビームを目覚めさせた春の週末の出来事をお届けする。
【画像】大径ステアリングの恩恵で思いのほかハンドルさばきも軽いサンビーム(写真2点)
3月1日、晴天の土曜日。セント・デイビッド・ デイの日に、サンビームをガレージから出し、今年初めての走行をすることにした。今年の春は、1926年ドラージュよりも古い、こちらの車を先に出すことにした。というのも、もともと教区司祭(牧師補)の馬と馬車を収容するために1880年頃に建てられた我が家のガレージには、車を頭から入れる必要があり、サンビームでもそのやり方に慣れておかねばならないと考えたからだ。
始動は簡単だ。クローデル・ホブソン製キャブレターのチョークを全開にし、イグニッションレバーとスロットルレバーをハンドルの大きなニッケルのダイヤルで20対4 (フルイグニッションリタードと井戸リング)に設定する。イグニッションキーはない。ダッシュボードのボタンを押せば、エンジンは独特のタポタポというリズムを刻みながら始動する。
ガレージには頭から入れていたので、砂利道をバックして芝生の上で車をターンさせ、ゲートに向かわせなければならなかった。ドラージュ同様にサンビームも、回転半径はクイーンメアリー号並みに巨大だ。正しい方向に向けるには、何度も切り返す必要がある。ハンドル操作は低速では比較的重いが、いったん走り出せば、ナロートレッドの大型のタイヤのおかげで、パワーアシスト付きの現代の車のように軽くなる。
右ハンドルの3段変速ギア付きの車に乗るのは40年ぶりくらいだろうか。しかし思いのほかすんなりと馴染み、道を下ればクラッチもスムーズに動く。
ドラージュと違って、サンビームはウォームアップに時間がかかる。最初の1/4マイルほどは少し暖機運転が必要だが、すぐに安定して落ち着く。ギアチェンジも簡単だ。クラッチを切り、少し間を置いてから、太いレバーを元に戻すだけだ。ギアが噛み合うと、わずかにカチッと音がする。カンチレバー式の長いリアスプリングにより、スムーズで快適な乗り心地が実現されている。1924年モデルでは、14/40のサンビームに初めて前輪ブレーキが装備され、その力強さで安心感が増した。
エンジンが快適に温まった状態での帰路は、ご褒美のようなものだ。暖かくなったら、もっと長い旅をしたいと思う。
この週末は完璧だった。 翌日の日曜日は友人たちとランチに出かけ、フーパー製リムジンボディの1925年ロールス・ロイス・トゥエンティーのベッドフォードコード張りのリアシートに座ることもできた。頭上も足元も広々としている。それは、田舎の紳士がロンドンまで車で出向き、ボンドストリートの帽子屋に寄ってシルクハットを受け取り、ロンドンシティでの商売の準備をしていた、そんな時代を彷彿させるものだった。ランチの店までの道のりは、安定していてスムーズだった。
100年前のこれらの車と比較して、現代の車は果たして”快適さ”が大きく向上されたのだろうか?それには議論の余地がある。
文:David Burgess-Wise