大正製薬は5月27日、「熱中症への対策意識および実態」についての調査結果を発表した。調査は2024年7月12日~16日、自立した生活を送ることができる20代~80代の男女(60~80代を高齢者とした)700人を対象にインターネットで行われた。
高齢者の熱中症救急搬送人員は最も多い
年々夏の暑さが厳しくなり、熱中症による救急搬送人員は近年増加傾向にある。総務省消防庁によると、令和6年5月~9月の熱中症による救急搬送人員は97,578人となり、調査を開始した平成20年以降、過去最多を記録した。また、高齢者の熱中症による救急搬送人員は例年全体の半数を超えていることから、高齢者の熱中症は特に深刻な社会課題となっている。
高齢者、実は熱中症への対策意識は最も高い
年代別に熱中症対策意識について調査した結果、高齢者(60~80代)の8割近くは室内であっても熱中症対策を意識していた。また、熱中症対策の基本である水分補給に関して、高齢者の9割近くは夏場の積極的な水分補給を意識しており、その割合は全年代の中で最も高いことがわかった。
一方で、前述の通り熱中症による救急搬送人員は他年代に比べて高齢者が最も多く、高齢者は熱中症対策意識が高いにも関わらず、熱中症が頻発していることがわかった。
高齢者は水分補給不足に気付いていない?
今回の調査で、高齢者の高い水分補給意識が明らかになった。一方で、十分な水分量を補給できていると答えた高齢者のうち、実際には水分補給量が不足していた人は40.7%いることがわかった。この割合は高齢者が全年代の中で最も高く、高齢者は水分補給量が足りていないことを自覚しにくいと考えられる。加齢に伴い、喉の渇きを感じにくくなることが知られており、これにより高齢者は無意識のうちに水分不足が生じている可能性がある。
一般的に高齢者は熱中症のリスクが高いとされている。加えて、今回の調査では、高齢者が水分不足を認識できない実態や、高齢者は熱中症対策意識が高いのにも関わらず熱中症を発症している可能性が示された。これらを考慮すると、高齢者には水分補給に加えて新たな熱中症対策のアプローチが必要といえる。
熱中症対策で意識したい「深部体温」
熱中症対策のアプローチの1つとして「深部体温」を下げることが挙げられる。熱中症対策には「水分補給」と「身体冷却」が重要とされているが、身体冷却として意識したいのが「深部体温」である。「深部体温」は脳や臓器などの身体の内部の温度を指し、深部体温の上昇は熱中症のリスクになる。
高齢者は汗をかきにくく、皮膚から身体の熱を逃がしにくいために熱が身体にこもりやすいことが知られているが、このような特徴をもつ人にとって、身体の内部からの冷却を用いた「深部体温」を下げるアプローチが、より有効にはたらく可能性が示唆されている。
近年、屋外で活動するアスリートや建設作業に従事する企業などにおいて、「深部体温」に着目した熱中症対策を導入する動きが広まってきているという。その中で注目されているのが「アイススラリー」である。
アイススラリーとは、液体に微細な氷の粒が混ざった流動性のあるシャーベット状の飲料のこと。大塚製薬はこれまで、アイススラリーの高い冷却効率や、深部体温を低下させる効果について研究を重ねてきたという。
加齢に伴う様々な身体機能の変化によって、高齢者は熱中症のリスクが高い。そのため、水分補給のみならず、身体内部からの冷却や深部体温を意識した熱中症対策が、より重要な対策となり得る。