2027年放送のNHK大河ドラマの主演に決まるなど、俳優としてますます存在感が高まっている松坂桃李。映画にも引っ張りだこで、『父と僕の終わらない歌』(公開中)では寺尾聰とともに主演を務めた。松坂にインタビューし、本作への思いや自身の変化、今後の抱負などを聞いた。

  • 松坂桃李

    松坂桃李 撮影:辰根東醐

本作は、アルツハイマー型認知症を患い記憶を失っていく父・間宮哲太(寺尾聰)と、父を支え続ける息子・雄太(松坂桃李)の日々を描いた物語。世界中を感動させたイギリスの実話を元に、日本の横須賀に生きる父と息子に置き換え、父が若き日に諦めたレコードデビューの夢を再び叶えようとするまでを描く。

アルツハイマーについて、松坂は「あまり深く考えたことはなかったですが、家族を持ったことで、自分がどんどん年を取っていく中で子供に迷惑をかけないようにするにはどうしたらいいんだろうと考えたときに、アルツハイマーだったり、将来の自分がかかってしまう病の可能性を考えるようになりました」と述べ、「それがすごくいいきっかけになって、本作にちゃんと向き合うことができました」と語る。

そして、テッド・マクダーモットさんと息子サイモンさんの実話のエピソードや動画に心を動かされ、「どの人にも病や老いは訪れるけれど、向き合い方次第であらゆる可能性を持つことができる」という希望を見出すことができたという。

「アルツハイマーになってしまった父親を嘆いて悲しんでいるだけではなく、失っていくものの中で失わない大切なものがある。サイモンさんの場合はそれが『歌』で、それによって父親の情緒が安定する傾向があり、ただ待つだけではなく、病への向き合い方次第であらゆる可能性があるということを教えてもらいました」

その希望を本作の観客たちにも受け取ってもらいたいと考えている。

「老いや病は、どの人にも、どのご家庭にも訪れるけれど、大切なものを見出すことで自分たちの可能性を見つけることができるという、ある種の希望があるということを伝えられる作品になればいいなと思い、この作品に参加する意義があると感じました」

  • (C)2025「父と僕の終わらない歌」製作委員会

30代になってから作品を届ける意義をより意識するように

現在36歳。俳優デビューから16年が経ったが、年齢を重ねて作品を届ける意義をとても意識するようになったという。

「20代はいろんな作品にがむしゃらに挑戦するという思いでやっていましたが、30代になってから作品との向き合い方が変わり、一つ一つの作品に丁寧に向き合うように。作品のテーマや内容に魅力を感じ、これを世に届けたいという思いが強くなりました」

2020年に結婚し、2023年に第1子が誕生。家族を持ったことも、松坂に大きな変化をもたらした。

「独身とは違い、経済的な面でもしっかりと働いていかなければいけないという思いは強いです。責任感があります」

また、作品への時間のかけ方も変わったという。

「台本を読む時間が圧倒的に変わりました。子供ができたことによって、まずは子供が優先で、自分の優先順位がものすごく下がってランク外みたいな(笑)。台本を読もうと思って読める環境ではないので、限られた時間の中で台本を読んだり、作品の準備をしています。環境が大きく変わり、強制的に自分がその環境に馴染んでいって、その中でやるしかないなと。それが嫌な気はしなくて、すごく心地いいです」