インプルーブメントは5月23日、「離婚時の住宅ローン問題」に関する実態調査の結果を発表した。調査は2025年4月18日~5月20日、結婚中に住宅ローンを組んだ経験があり離婚経験がある、または離婚協議中の202名を対象にインターネットで行われた。
離婚後の家の扱いは「住み続ける」が最多
「離婚後もどちらかが住み続ける(名義変更を検討・実施)」とした回答が48.0%で最も多く、97名が選択した。「すでに売却が完了し住宅ローンを完済」したとする回答は20.3%で41名であった。「まだ結論が出ていない」は12.9%で26名、「売却予定で手続き中」は8.9%で18名、「すでに売却は完了しているもののオーバーローンである」との回答は7.4%で15名、「その他」回答は2.9%で6名であった。
離婚後も自宅に住み続ける道を選んだ人が最も多く、売却・完済組は2割程度だった。一方、「まだ決まっていない」や「オーバーローンで完済できず」といった"行き場のない住宅ローン"を抱えている層が2割近く存在していることがわかった。
約3割が「ペアローン」や「収入合算」を利用
「単独名義」として住宅ローンを組んだとする回答が73.3%(148名)で最も多かった。「ペアローン」は17.8%で36名、「収入合算(連帯保証・連帯債務)」は9.0%で18名であった。夫婦それぞれの収入を合算しないと物件購入が難しいケースが増えるなか、約3割が「ペアローン」や「収入合算」を利用していることが判明した。
しかし、離婚時に「名義変更が銀行に認められない」「片方が支払いを滞納すると、もう一方に督促が来る」など、思わぬリスクが顕在化することもある。
離婚時の家や住宅ローン問題で「困ったこと・トラブル」
「特に大きなトラブルはなかった」とする回答が65.8%で最も多く、133件であった。「売りたいのに残債が多く、売却できない」は10.9%で22件、「相手の同意が得られず売却できない」は9.9%で20件、「ペアローン解消/名義変更が認められない」は7.9%で16件、「離婚後も連帯債務が残り、督促が来た」は4.5%で9件、「弁護士が不動産に詳しくなく話が進まない」は2.0%で4件であった。
35%(約3人に1人)が何らかのトラブルを経験。「オーバーローン」「名義変更の不許可」「売却同意の得られなさ」「連帯債務の督促」など、多様かつ深刻な悩みが浮き彫りになっている。自由記述でも「銀行に何度も断られた」「相手と連絡が取れず進まず放置」「養育費や残債の話し合いができない」など苦しみの声が散見された。
相談相手は「家族・友人」が最多
「家族・友人」に相談したとする回答が29.2%で最も多く、59件であった。「誰にも相談していない」は27.2%で55件、「弁護士」は26.2%で53件、「不動産会社(一般仲介)」は17.8%で36件、「金融機関」は11.9%で24件、「任意売却専門の不動産会社」は6.9%で14件、「司法書士・行政書士」も同様に6.9%で14件であった。
家族や友人に相談する人が多く、さらに約27%は「誰にも相談しない」と回答。一方、任意売却専門の不動産会社への相談は7%程度にとどまった。法律面で離婚問題を扱う弁護士への相談が26.2%という結果も出ているが、実際には不動産売却そのものに詳しいとは限らないケースも見受けられた。
「任意売却」を詳しく知っている人は12%
債権者の合意を得て不動産を売却する「任意売却」という方法があることを知っているか尋ねたところ、「言葉だけ聞いたことがある」との回答が48.0%で最も多く、97名がこれに該当した。「全く知らなかった」は39.6%で80名、「よく知っている」は12.4%で25名だった。
離婚時の住宅ローン問題がこじれる場合、「競売しかない」と思い込む人も少なくない。しかし、競売を回避してオーバーローンでも売却できる任意売却という方法を「よく知っている」人は全体の12.4%と低く、約4割が全く知らなかったと回答。任意売却の認知度不足が問題解決を遅らせている実態が見えてくる。
返済困難時に「任意売却を検討したい」は38.1%
離婚時に家の処分やローン返済が難しい場合、どのような手段を検討したいと思うか尋ねたところ、「任意売却」とする回答が38.1%で最も多く、77件であった。「支出削減・リスケジュール」は23.3%で47件、「リースバック(売却後も住み続ける)」は17.3%で35件、「分からない/放置する」は14.9%で30件、「法的整理(自己破産など)」は5.4%で11件だった。
離婚によって家を維持するのが厳しくなった場合、約4割が「任意売却」を視野に入れる一方、「具体的にわからないまま放置」してしまうケースが15%近くあることがわかった。家計の支出見直し(リスケジュール)やリースバックなども含め、早期に専門家へ相談したほうが解決の選択肢が広がる。
実際のトラブル事例
「離婚時の住宅ローン問題で苦労したこと、現在進行形で悩んでいること」を自由記述で尋ねたところ、以下の回答が寄せられた。
・「名義を切り替えたかったのに銀行が認めず、離婚後も連帯債務が残っています。住んでいない家の督促が自分に来るのが苦痛です」(40代・女性)
・「オーバーローンが原因で売りたいのに売れず、相手と連絡が取れないまま放置しています。競売寸前なのに協議が進まず頭を抱えています」(30代・男性)
・「ペアローンだったが、元配偶者が名義変更に協力せず、銀行から借り換えも断られました。住み続けるしかないのに、返済が大変です」(40代・女性)
・「弁護士に相談しても不動産売却に詳しくなく進展せず、やむを得ず競売と思っていましたが、任意売却という方法があると知って驚きました」(50代・男性)
「自分は家を出たのにローンだけ負担させられる」「元配偶者が滞納し、連帯保証人の自分に督促が来る」など、深刻な事例も複数見られた。