第35回柴田錬三郎賞を受賞した金原ひとみ氏の小説『ミーツ・ザ・ワールド』が松居大悟監督、杉咲花主演で映画化され、10月24日に全国公開されることが16日、明らかになった。

『ミーツ・ザ・ワールド』10月24日(金)全国公開
金原ひとみ/集英社・映画「ミーツ・ザ・ワールド」製作委員会

本作は、東京・歌舞伎町を舞台に描かれる物語。擬人化された焼肉漫画『ミート・イズ・マイン』をこよなく愛しながらも、自己肯定感を持てずにいる27歳の主人公が、新たな世界に出会う様を描く。

原作者である金原氏の著書が映画化されるのは、第130回芥川賞受賞作『蛇にピアス』以来、17年ぶり。金原氏は「エンドロールで自分の名前が流れてきたのを見て、そうか自分が書いたんだ、とびっくりするほどのめり込んで観ました。それぞれに思いを託し、言葉で編み上げたキャラクターたち、行き場のない思いを拾い集めて紡いだストーリー、祈りを込めたラストシーンが、松居さんの斬新な演出と、素晴らしいキャストによって新たな作品に昇華していました」と完成した作品の感想を述べ、「同じ世界に生きられない人を愛してしまった全ての人に、この物語が届きますように」と願いを込めた。

メガホンを取ったのは、『くれなずめ』や『ちょっと思い出しただけ』などで青春の輝きを描き、若者から絶大な支持を得る松居大悟監督。「今回初めて、『生きること』についての映画に挑みたいと思いました」と、新たな境地に挑んだ。本作の舞台である歌舞伎町で撮影が敢行。この街に生きる人々の息遣いがスクリーンに焼き付けられている。「この物語の主人公である会社員の由嘉里は、大好きな擬人化焼肉漫画で、推しのマイナーキャラをカップリングして妄想することが心の支えで。映画を作る中で唯一確かだったのは、誰かや何かを、推す、眩しさです。信じる気持ちは眩しくて、狂気を孕んでいて、狭いからこそ光は眩しい。由嘉里を演じる杉咲花さんと、長い時間をかけて魂を込めて、この作品に挑みました」と製作への思いを語った。

主人公・由嘉里を演じるのは杉咲花。彼女が体現するのは、擬人化焼肉漫画に全力で愛を注ぎつつも、自分を好きになれず、仕事と趣味だけの生活に漠然とした不安を抱える等身大の主人公だ。脚本段階から携わり、作品に真摯に向き合った杉咲は「自分も誰かにとっての他者。そこに引かれた線のただただ寂しいとき、この映画を利用してほしいです。孤独をむしゃむしゃ噛み砕くふつつかな心意気が、疲れてしまった誰かの血肉になってくれたらと心を込めました」と語っている。

映画の公開に先駆け、第1弾ティザービジュアルと超特報映像が公開された。ティザービジュアルは、ゴミ散乱する部屋でどこか卑屈な表情を浮かべ、愛する擬人化焼肉漫画のアクリルスタンドを眺める由嘉里を捉えた幻想的な1枚となっている。超特報映像は、不安げな由嘉里が歌舞伎町へと足を踏み入れるカットから始まり、街の息遣いが伝わる映像が続く。

【編集部MEMO】

杉咲花は、1997年10月2日生まれ。27歳。東京都出身。2006年にデビューし、2018年にTBS系のドラマ『花のち晴れ~花男 Next Season~』で連続ドラマ初主演、同年10月公開の映画『パーフェクトワールド 君といる奇跡』で映画初主演を果たす。以降も話題作に出演し、2019年の『いだてん~東京オリムピック噺~』(NHK)でNHK大河ドラマ初出演、翌年のNHK連続テレビ小説『おちょやん』でヒロインの竹井千代役を演じた。父はギタリストの木暮武彦、母は歌手のチエ・カジウラ。