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今シーズンも卓越した強さを誇っている昨季王者のロサンゼルス・ドジャース。サイ・ヤング投手のブレイク・スネルや、昨季エース格として躍動したタイラー・グラスノーなど、主力投手が相次いで離脱している中、その強さを維持出来ている要因は何か。今回はドジャース投手陣について分析した。(文:Eli)※今季成績は日本時間4月30日時点
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ドジャース投手陣の概観
ロサンゼルス・ドジャースの先発陣は日本時間4月30日の時点で162.0イニング(30位)を投げ、防御率3.94(15位)、2.1fWAR(17位)を積み上げている。
内容を見ると被打率.220(3位)、K%24.1(5位)、BB%11.3(30位)と打たれていない、三振を奪えているが四球が多く、K-BB%12.9(13位)、FIP4.15(18位)と全体的にはリーグ中間に落ち着いている。
先頭でローテーションを引っ張るのは山本由伸で、7先発40.0回を投げメジャートップの防御率0.90を叩き出している。
スプリット多投の影響で山本のコマンド評判にしては四球をリーグ平均程度に出しているが、それをカバーして有り余る程度の空振りを奪えている。ESPNのオッズではNLサイ・ヤング賞へポール・スキーンズに次いで2位につけている。
2番手を走るのはトミー・ジョン手術を含む一連の故障から復帰したダスティン・メイだ。離脱中に行ったフォーム変更が功を奏したのか、かつての100マイル(約160キロ)シンカーは鳴りを潜めているが、ゴロと弱いコンタクトを量産し効率よくイニングを消化できている。
制圧力に欠ける投球スタイルの影響で時々荒れるが、元々メイはローテ3,4番手の評価を受けていた選手であり、十分な働きを見せていると言える。
佐々木朗希
一部では新人王確定などと騒がれた佐々木朗希だが、現状ではそれは極めて難しいと言わざるを得ない。ここまで6先発25.1回を投げ防御率3.86と見た目は良いが、FIP5.39、SIERA5.42、xERA5.52と防御率推定指標すべてが5点台に乗っている。
ここまでは佐々木登板試合で驚異的な守備力を発揮しているアンディ・パヘスをはじめとした守備と運にかなり助けられている状態だ。
問題は多岐にわたる。まずはフォーシームだ。200球以上投じられたフォーシームの中で唯一空振り率が10.0を切っている。このフォーシームを50%以上投げており、早急にこの割合を別球種に逃がす必要がある。
また制球力も課題だ。一時期のような四球から崩れ失点するケースは減ったものの、依然リーグ平均以上の四球を出している。制圧力と制球力、どちらもない現状の投球を続けた場合エースへの進化はかなり難しい。
一方で、それほど焦る必要もない。佐々木のメジャーキャリア走り出しとしては最悪だが、山本の例を踏まえればドジャース首脳陣はこれを意図的に放置している節がある。昨季の山本も5月頃までの内容が悪かったにも関わらず、大きな改造を加えなかった。
そして6月以降本格的な調整をし始め、プレーオフで素晴らしい投球を見せたのは記憶に新しい。そしてメジャー2年目の今シーズン、ここまでサイ・ヤング級のパフォーマンスを見せている。
佐々木には山本のような技術はないため同じ道を辿ると確信を持って言えるわけではないが、メジャーの環境に適応出来たら何か良い改造がみられるだろう。
“今年も“故障者続出で…
今季も例によって故障者が多発している。シーズン当初40人枠には先発投手が13人登録されていたが、うちギャビン・ストーン、エメット・シーアン、リバー・ライアン、クレイトン・カーショーの4人はシーズン前の怪我と手術により離脱。
開幕前にはトニー・ゴンソリンが背中の張り、シーズン開幕後にはブレイク・スネル(肩炎症)とタイラー・グラスノー(肩炎症)という2人のエース候補が立て続けに離脱してしまった。
それでも、ゴンソリンは4/30のマイアミ・マーリンズ戦で復帰し6回3失点9奪三振、カーショーは60日故障者リストの制限が空ける5月中旬を目指して既にマイナー3Aでのリハビリを開始しており、離脱と共に復帰も徐々に進んでいる。
チームとしてはブルペンデーやイニング消化要因として確保した投手を総動員してカバーするなど、層の厚さで何とかやりくりしている。
一方で、プレーオフでの勝ちを目指すドジャースにとってはスネル、グラスノーが例年通り100イニング程度を投げるという前提に立てばこの時期に故障”してくれる”ほうがむしろ助かるという面もある。
昨シーズンのグラスノーのようにシーズン序盤に燃料切れになりプレーオフ欠場よりは、それほど重要ではない4,5月に休憩してプレーオフで元気に投げる方が良い。幸いスネル、グラスノーの故障は手術を必要とせずシーズン絶望とはなっていない。
また、チームも一時のスランプを脱し現在はMLBでも上位につけている。今後どうなるかは不明だが、無事にプレーオフまで戦い抜けることを祈るしかない。
若手選手にはチャンスだが…
このような故障者が続出したときに頼りになるのが若手だ。佐々木のような球界を代表する有望株は開幕からチャンスを与えられることが多いが、ほとんどの若手はメジャーレベルでの戦力不足を埋めるために起用されたことをきっかけに立ち位置を確立していく。
今季のドジャースブルペンでロングリリーフ要員を務めるベン・カスパリウスはマイケル・コペックとエヴァン・フィリップスの出遅れにより、メジャー定着を果たした。
しかし、今季の若手たちは軒並みスタートダッシュに失敗している。元々40人枠上にいた先発の若手投手は5人。ボビー・ミラー、ランドン・ナック、ジャスティン・ロブレスキー、ニック・フラッソー、マット・サウアーである。
このうちフラッソーは2024年をリハビリで全休、サウアーはマイナー契約で獲得した選手であるため、特段の活躍を求められているわけではない。
しかし、ミラー、ナック、ロブレスキーは別である。3人とも今季はメジャーのマウンドで数回チャンスを与えられたが、すべて失敗してしまった。まだ5月の段階であり今後の活躍に期待したいところだが、この中から成功例が出てきてほしいものだ。
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【了】