女装愛好家のキャンディ・H・ミルキィさんが3月27日、間質性肺炎のため、72歳で亡くなった。女装趣味によって家族は崩壊したが、世間の偏見や差別にめげることなく、最後の最後まで自分がやりたいことを貫く人生を走りきった。
そんなキャンディさんが亡くなる直前までを追った動画、ザ・ノンフィクションStream「キャンデイさんのその後 最期の日々」が、『フジテレビドキュメンタリー』公式YouTubeチャンネルで2日に公開され、3日(14:00~ ※関東ローカル)には同局の特番『フジドキュの世界 自分らしく生きる人SP』で放送される。亡くなる3日前の集中治療室の姿まで映し出す貴重な映像だ。
取材したのは、同局のドキュメンタリー番組『ザ・ノンフィクション』(毎週日曜14:00~ ※関東ローカル)の「女装と家族と終活と ~キャンディさんの人生~」(21年8月1日放送)でキャンディさんに密着し、ともにYouTubeチャンネルも作ってきた込山正徳ディレクター。30年以上の交流がある中で、今回のドキュメンタリー制作を通し、改めてキャンディさんにどんな思いを抱いたのか――。
息苦しい中でも女性のカツラをかぶり…
今回の映像が始まるのは、キャンディさんが亡くなる4カ月前の姿から。医療用の酸素ボンベが欠かせず、日増しに呼吸が苦しくなることを吐露しているが、しゃべりだしたら止まらないマシンガントークは健在だ。
込山Dは「全然元気なんじゃないかと思ってしまうのですが、呼吸が苦しいから逆に大きな声を出さないと大変だと言っていました」と意識的に行っていることを解説。それでも、女装して外出し、声をかけられることがバイタリティになっていたようで、酸素ボンベ入れにも、かわいさを追求していた。
しかし後日、体調が急変した連絡を受け、自宅に駆けつけた込山D。そこにいたのは、もうかわいい服を着て外を歩くことができない、息苦しそうなキャンディさんだった。
それでも、カメラを回すと何とか力を振りしぼり、女性のカツラを手に取ってかぶり、インタビューに対応。「もう執念を感じました。私にはどこか、キャンディさんにとって女装はお遊び的な部分があると思っていたのですが、あそこでカツラをかぶって“女装した姿が自分なんだ!”と言っているようで、本気だというのを改めて感じました」と驚かされた。
“正しくなかったけど、楽しかった”人生
キャンディさんがこのインタビューで発したのは、「我が人生、本当に楽しかった。こんなに好き勝手やって」「つくづく皆様のおかげで、本当に幸せな人生だったな」と、実に清々しく自らの歩みを振り返る言葉だった。
込山Dは「聞いていてこっちも気持ちがいいんです。本当にいい人生を送ったんだなというのが伝わってきました。奥さんに逃げられたりもしていますが、自分が選択した人生が、“正しくなかったけど、楽しかった”という感じがしました」と表現。
長くドキュメンタリーを制作し、何人もの最期に立ち会ってきた中で、「本当にそれぞれの考え方で死を迎えるのですが、ここまで自分の人生を清々しく肯定して、後悔がない感じが伝わってくるのは、キャンディさんが一番でした」とのことだ。