全国の高校生が企業の課題解決に挑むビジネスコンテスト「マイナビキャリア甲子園」。第11回となる今年、過去最多の全国3,136チーム・1万1,595名が参加する中、Innovation部門で見事に優勝を果たしたのが、ロッテ代表の「ロッテで繋がろって」(聖学院高等学校)だ。
「ロッテで繋がろって」は4月18日、優勝報告も兼ねてロッテ本社を訪問。中島英樹社長らの前で再びプレゼンを披露し、自らが練り上げたサービスへの熱い想いを語った。
■「楽しく学ぶ」「共に遊ぶ」! 課題解決の鍵は“ゲーム”
「私たちが手にする1枚のチョコレート。甘くてとろけるような美味しさ。でも、その向こう側には知られざるストーリーがあるのです」
この言葉を皮切りに、高校生チームはチョコレートの原料であるカカオの現状について解説。気候変動や病害の影響で生産量が世界的に減少しており、特に主要生産地であるアフリカでは、老朽化したカカオの木や痩せた土地が深刻な課題となっているという。
現地の状況をリアルに伝えるため、実際にカカオ農家の支援を行っている「カカオハンター」からもヒアリングも行い、現場の声として紹介。「世界的な需要は高まっているのに、生産が追いつかない」という現状を訴えかけた。
この社会課題をどうすれば解決できるか。彼らが導き出した一つの答えは、“楽しみながら知ること”だった。
「チョコレートでつながる、幸せの循環を目指したい」。そんな思いから生まれたのが、ロッテのチョコレート商品をテーマにした、まちづくり発展アプリ「チョコレーティア」だ。
このゲームアプリでは、ユーザーがロッテのチョコレート商品をベースにした街を開拓。パイの実をテーマにした“高層マンション都市”や、コアラのマーチをモチーフにした可愛い街など、商品ごとに世界観が異なるユニークな仕様となっている。
「ワクワク感」だけでなく、「社会問題の啓蒙」に力を入れているのも特徴で、例えば、コアラのマーチのワールドでは、オーストラリアの森林火災やユーカリの栄養価減少といった問題が、ストーリーやイベントを通じて自然とユーザーに伝わる仕組みを採用。
もうひとつの核となる要素が「支援」だ。チョコレーティアでは、ユーザーがゲーム内で課金したお金の一部を、実際のカカオ農家支援に充てる仕組みを設計している。
「環境問題や社会課題に対しての意識はあっても、実際に行動する人は日本では21%程度しかいません。だからこそ、行動への一歩を後押しするシステムが必要だと考えました」
単に寄付を募るのではなく、寄付先を「栄養(肥料)」「苗木の提供」「剪定」といった具体的な用途から選べるようにし、ユーザーに“自分の支援が何に使われるか”を明確に伝える。さらに、支援の成果は街の発展に反映され、ランキングを可視化。ユーザーの課金(寄付)に対する抵抗を取り除くべく、商品パッケージのQRコードを読み込むことでポイントチャージができる「ちょこっとサンクス」というシステムも提案した。
■社長との歓談で見えた“つながる未来”
プレゼン後は、ロッテの中島社長をはじめとする社員らとの歓談の時間が設けられた。高校生たちは緊張した面持ちながらも、プレゼンに込めた想いや制作過程での苦労、将来の夢などについて語り合った。
中島社長は「社会課題の入り口として、ユーザーのみなさんが参画できる仕組みをゲームで実現できたらすごくいい。今は若い人たちのなかでも、社会課題に対する意識の高い人が増えていますからね」と高く評価。
「このゲームは実現可能なんでしょ? 本当にやってみたいね」と社員らに確認したうえで、高校生チームに「とてもいい刺激になりました。我々としてもチョコレートの需要促進や社会課題の解決は進めていきたい。こうしてヒントをいただいているので、ぜひこれを実現したいですね」と改めて感謝を伝えた。
高校生チームも「決勝直前も、ロッテさんにはかなり厳しいフィードバックをもらいましたが、あのアドバイスがなければ本当にどんな結果になっていたかわかりませんでした」と感謝を表し、「一度白紙に戻してプレゼンを作り直したのですが、決勝の前々日や前日はもうほとんど寝られませんでした(笑)」と優勝の舞台裏を明かした。
■中島社長「今後も若い世代とは関わり続けていきたい」
歓談を終えた中島社長に、改めてプレゼンの感想を尋ねてみると、「彼らの能力や意識が高いのはもちろんですが、とにかくすごく真剣に考えたんだろうというのが伝わってきました。だから内容も突き抜けてきたんじゃないかと思うんです」と口にする。
さらに、ロッテ社内からはなかなか出てこないアイデアだったとも回想。「ロッテでもいろんな挑戦、いろんなアイデアを求めていて、『失敗してもいい』とは言っているんです。でも、会社で働いていると、どうしても現実を見て、『これはちょっとダメそうだな』と自分の中で縛りができちゃう。でも、彼らにはそれがない。 だから発想が自由だったんだと思います」と話した。
また、若い世代との接点について、「今、我々も『食育活動』に力を入れていて、各地の学校に出向いて商品のアイデア作りやビジネスについて教える出張授業をしているんですよ。私も今度、講師としてうかがうのですが、今後も若い世代のみなさんとは関わり続けていきたいですね」と考えを示した。
■ロッテで繋がろって「優勝するほど努力してきた甲斐があった」
社長らとの面会を終えた「ロッテで繋がろって」。メンバーの原田剣之介さんに感想をお聞きしてみると、「緊張しました(笑)。いや、もうひたすらに緊張。本番よりも緊張しましたね」と明かし、「でも、中島社長の人柄がすごく温かくて、本当にロッテを選択してよかったな思いました。優勝するほど努力してきた甲斐があったなと、改めて感じました」と喜びを語った。
メンバーの井辻光斗さんは、マイナビキャリア甲子園に参加したことで、「オールステータスに磨きがかかった気がします。物事を俯瞰して見たり、いろんな人に壁打ちする行動力を得たり。多分、自分たちで気づいていない部分も成長していると思います」と手応えを実感。「10年後、20年後に振り返ってみたときに、『やっぱりマイナビキャリア甲子園が大きく影響したよね』っていうふうに気づくんじゃないかな、と思います」と総括した。
「この半年間で、やっぱりアイデアっていいものだなと改めて感じました」と振り返ったのは、チームリーダーの髙橋巧己さんだ。「僕はもともとアイデアを考えるのが日常的に好きだったのですが、こうしてチームでやっていくことで生み出せたものもあるし、外部とのコミュニケーションから得たものもあります。むしろそのおかげでこの半年間、突き進んでこれました。他人からの意見の重要性をすごく実感できました」と語った。