4月10日にみなとみらい線馬車道駅近くにオープンした「SUBWAY 横浜ベイサイド本店」(神奈川県横浜市)は、他のSUBWAY店舗とは少し異なる点がある。店舗運営は基本的にスキマバイトサービス「タイミー」のスタッフが行い、時には店長を含むすべてのスタッフが「フルタイミー」で構成されることもあるのだ。オープン初日にはSUBWAYを運営するワタミの渡邉美樹氏が登壇、その背景について語った。
ワタミ傘下に入った「新生SUBWAY」はどうなる?
2024年10月にSUBWAY日本法人を買収したワタミ。半年間の準備期間を経て新生SUBWAYを象徴するモデル店舗となる「SUBWAY 横浜ベイサイド本店」を4月10日にオープンした。
オープン初日に記者発表会を開いたワタミ 代表取締役会長 兼 社長CEOの渡邉美樹氏は買収後について、「半年間経営をしてまいりましたが非常に手応えを感じております。ワタミは今後、ファーストフードのSUBWAYを軸に国内の外食を進めていきたいと考えております。そして『横浜ベイサイド本店』はSUBWAYが抱えるさまざまな課題をクリアしていくお店とさせていただきました」と語った。
「さまざまな課題」の1つ目は夕食需要。SUBWAYでは昼食時には行列ができる店舗もあるが、夕食時に空いている店舗が多いことを受け、夜に食べたくなる商品を開発。SUBWAY 横浜ベイサイド本店限定で、これまで「焼肉の和民」で培ってきたノウハウを生かしたサンドイッチ「牛カルビチーズ」、そして居酒屋の「和民」で人気のサラダから着想を得たサンドイッチ「シーフードグラタン」を販売する。
2つ目の課題として渡邉氏が挙げたのは「野菜のSUBWAYと言われ、ヘルシー・フレッシュというイメージがあるけれど、メニューの表現が下手だ」ということ。その改善策として有機農業を推進するワタミとして開発したのが「サラダラップ」だという。サンドイッチだけどパンではなくレタスで野菜を包んでいるのが特徴だ。さらにサラダは従来のものより約200円値下げし、日替わりのサラダを提供する。
3つ目の課題は、これまで「美味しくない」と言われていたというコーヒー。渡邉氏は「ファーストフードで一番美味しいコーヒーを作ろう」と、SUBWAY 横浜ベイサイド本店ではスペシャルティーコーヒーを採用、従来のSUBWAYで提供していたコーヒーから原価は4倍に、価格は25%下げたという。
4つ目は内装。従来のSUBWAYで課題とされていた居心地の良さにこだわり、座り心地の良い椅子やWi-Fi、コンセントなどを揃え、「ゆっくりとパソコンを開けながらサンドイッチを食べる」ことができる空間にした。さらに注文は端末やモバイルオーダーを導入し、手間なく完了するようにしている。
人手不足を解消する「タイミー」による店舗運営モデル
ワタミでは今後SUBWAYの店舗数を3,000店舗に増やしていく目標を掲げている。そこで5つ目となる最後の課題「人手不足」がある。
タイミーでは働くことでキャリアがアップしていく仕組みがあり、接客を頑張っていれば「接客のバッジ」を獲得、時給が上がっていくという。新橋にある「THE赤提灯」という居酒屋では店長以外すべてタイミーのスタッフで運営、スタッフ自身のノウハウやステップアップにもつながる。今後SUBWAY 横浜ベイサイド本店でもこの方法で店長以下すべてのスタッフがタイミーの「フルタイミー」、店長のみ社員でスタッフがタイミーの「従業員全員タイミーワーカー」、そして社員とタイミーが混在する「従業員がタイミーワーカーとアルバイト」の3パターンで運営していくという。
タイミー代表取締役 小川嶺氏は「2年間『THE赤提灯』で行ってきた実証実験の結果、人手不足の新橋というエリアにもかかわらず、マッチング不足による休業やヘルプは年間でゼロ日、さらに飲食未経験者のうち約62%が取得したスキルを生かして、他の飲食店で働くことができました。今後直面する人手不足という大きなトレンドにおいても弊社がパートナーになり店舗出店を加速させていきたい」と語った。
新生SUBWAYを象徴するモデル店舗を横浜に作った理由について渡邉氏は「居住性の良いこの内装を表現できる広さの店舗であること、そして情報発信に適した場所ということで横浜に決まりました。さらに、アパホテルが目の前にあってインバウンド客の方に来てもらえるという狙いもありました」と説明した。