昨日、4月7日は、いわゆる「トランプ関税」の影響を受けて日経平均株価が大幅に下落しました。NISAをきっかけに投資を始めた方の中には、不安な気持ちで一日を過ごした方もいるかもしれません。本日8日の日経平均は急反発で始まったものの、依然として予断を許さない状況です。
このような局面を、どのような心構えで受け止めればよいのでしょうか。長年にわたり相場を見てきた、SBI証券 投資情報部のシニア・ファンドアナリスト、川上雅人さんにお話を伺いました。
* * *4/7(月)の日経平均は2,644円下落、下落率は▲7.83%となっています。先週から続く相場の急変を受けて、“積立をやめた方がいいのでは”と感じる人もいるかもしれません。しかし、積立投資においては、過去を振り返って長期の視点で考えることが重要と考えられます。
2025/4/7の下落と、過去の急落との比較から見えること
2025年4月7日、日経平均は大幅下落(年初来高値から-23.8%)となっています。主な下落要因としては、米国のトランプ政権が4月2日に発表した各国への相互関税率が想定よりも高くなったことに加え、4日には中国が米国からの全ての輸入品に対して34%の追加関税をかける「報復関税」を発表したことから、貿易摩擦が激化することで世界経済への悪影響を懸念する見方が強まったことがあります。
今回の下落は、トランプ政権による関税の最終的な着地点と関税による経済への影響が不透明のため、どこで止まるのか、どこまで下落が続くのか、見通せない状況ではありますが、長期の積立投資においては「今回の下落をどう受け止め、どう行動するか」が重要な視点となると考えます。
過去20年間における代表的な下落局面の事例として、米国の投資銀行リーマン・ブラザーズが経営破綻したことをきっかけに、世界的に起こった2008年の金融危機「リーマンショック」と、2020年の世界的な新型コロナウイルスの感染拡大「コロナショック」があります。
図表1は、過去約20年間のS&P500、全世界株式、日経平均のパフォーマンス推移を見たものです。
リーマンショックでは下落局面とその後の回復局面(安値から元に戻るまでの期間)は長くなりました。これは世界的な金融危機が実体経済に与えた影響が大きかったためです。また、この期間は円高ドル安が進んだことも、円換算されたS&P500や全世界株式の回復を遅らせる要因となりました。
一方で、コロナショックでは、新型コロナウイルスの感染拡大が実体経済に与える影響は限定的となったため、リーマンショックよりも下落が小さかったことと、下落からその後の回復局面は長くても1年以内であり、ショックは一時的なものであったといえます。
それぞれのショックの最大下落幅と元の価格に戻るまでの期間を数値でまとめたものが図表2となります。
リーマンショックの下落で積立をやめた人/続けた人
リーマンショックの局面(2008年9月末)で、以下の①、②のケースにおける資産の評価損益率の推移を示したものが図表3になります。
① 【積立なし】S&P500の積立投資をやめてしまい100万円のままで放置したケース
② 【積立あり】S&P500を100万円分保有し、翌月からも毎月3万円の積立投資を継続したケース
【まとめ】下落時こそ積立投資を続けよう
今後のマーケットの行方、トランプ関税の影響は誰にも分からないといえます。
しかし、主要な株価指数は、過去に何度も困難を乗り越えて長期的に上昇してきました。 今回も下落局面における大底がいつになるのか見通せない状況ですが、リーマンショックという極めて困難な状況においても積立投資は効果を発揮したという事実があります。私も十数年前にそのことを体験しました。
右肩上がりの資産に長期投資することを前提としているなら、下落時こそ積立投資を続けて、将来の投資成果をゆっくり待つべきではないかと考えます。
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『投資情報メディア』より、記事内容を一部変更して転載。
※1 BloombergデータをもとにSBI証券作成、全世界株式はMSCI ACWI、上記は過去の実績であり、将来の運用成果を保証または示唆するものではありません
※2 BloombergデータをもとにSBI証券作成、リーマンショック・コロナショックの最大下落率は各ショック前の月末値高値から月末値で計算(リーマンショックの期間は2007年の月末高値から)、元に戻るまでの期間も月末値で計算、上記は過去の実績であり、将来の運用成果を保証または示唆するものではありません
※3 BloombergデータをもとにSBI証券作成、2008年10月から2024年3月まで毎月末にS&P500(配当込、円換算)を3万円ずつ積立投資したと仮定し、概算の購入口数から積立評価額、損益率を計算したシミュレーション、上記は過去のシミュレーション結果を示したものであり、実際の取引とは異なります。また、投資元本の安全性および将来の運用成果を示唆・保証するものではありません