J:COMは4月1日、国内14拠点のカスタマーセンターおよびマーケティング部門に生成AIを導入し、顧客対応の効率化と品質向上を図った取り組みの成果を公表した。
同社は、Googleの生成AIモデル「Gemini」を全国の電話応対に導入し、1日5,000件の通話データを自動分析することで、従来150種類が限界だった通話内容の分類を3,000種類にまで細分化し、大幅に精度を向上させた。これにより、顧客対応の解像度が高まり、個別対応力が強化されたという。さらに、通話内容の要約にも生成AIを活用し、月間1,500時間以上(オペレーター約10名分)の作業時間を削減。オペレーターの負担軽減と、顧客の待ち時間短縮につながったとしている。
生成AIは、会話の内容分析や感情分析にも利用されており、顧客のニーズや課題を深く把握することで1to1コミュニケーションを実現。また、今回の取り組みで通話の開始時と終了時の感情変化を計測する「最終ポジティブ率」がNPS(顧客推奨度)と相関することが確認され、2025年度からはオペレーター評価の新たな指標として活用されるという。
従来のNPS評価では評価の理由の把握や回答数に課題があったが、今回のAI活用により「顧客がなぜその評価をしたのか」といった顧客の本音が可視化され、対象とする分析範囲も従来の数パーセントからすべての応対へと拡大。得られた洞察は、オペレーターの育成や業務改善にも活用され、より質の高いサービス提供に役立てられるということだ。
J:COMは、2024年度にAI活用推進組織「AI-CoE」を設立し、カスタマーセンターおよびマーケティング領域でのAI導入を進めてきた。2025年度は映像領域における商品・サービスへのAI実装も検討している。
また、履歴入力やケース処理の自動化も進めており、2027年度までに平均処理時間(AHT)の40%削減を目標としている。さらに、通話内容の多角的分析によって、応対の概要や要望の背景、感情の変化を的確に把握できるようになり、「ネガティブ」から「ポジティブ」への変化を可視化し、より的確な対応と深い顧客理解が可能になっているという。