去る3月22日、東京都練馬区の光が丘IMAにおいて、警視庁とジェイコム東京による「特殊詐欺被害防止に向けた共同宣言」が行われた。このイベントは特殊詐欺に対する防犯意識の向上を目的としたもので、会場では柔道女子48kg級パリ五輪金メダルの角田夏実選手を特別ゲストに招いたトークショーも開催された。
警視庁とジェイコム東京による「ストップ!詐欺」共同宣言
ジェイコム東京は、2023年4月に警視庁より「警視庁特殊詐欺被害防止アドバイザー」を受嘱して以降、これまで被害抑制・防犯につながるサービスの提供や注意喚起のチラシ・ステッカーの配布などを通して地域の防犯意識を高める啓発活動を行なってきた。今回の共同宣言はその一環として実施されたもので、ケーブルテレビ事業者としては初めての取り組みとなる。
イベントでは、まず警視庁特殊詐欺対策本部の山本英治副本部長、 警視庁光が丘警察署の蔵谷吉喜署長、ジェイコム東京の國分孝夫代表取締役社長と植木敦子取締役が登壇。國分社長が「ジェイコム東京は警視庁と協力して特殊詐欺被害からお客様の安全安心を守るため、犯人に騙されないための対策を広めるため、『ストップ!詐欺』運動に取り組むことをここに宣言します」と宣言文を読み上げた。
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宣言文を読み上げるジェイコム東京 國分孝夫代表取締役社長
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警視庁特殊詐欺対策本部 山本英治副本部長(左)とジェイコム東京 國分孝夫代表取締役社長(右)
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共同宣言式にはピーポくん/ざっくぅの両キャラクターも同席
続いて登壇者によるトークが繰り広げられた。山本副本部長によると、昨年の都内における特殊詐欺の発生件数は3,594件、被害額が153億円となっており、いずれも前年に比べて増加しているとのこと。とくに被害額はこれまで最多だった平成30年の88億円を大きく超える事態になっている。
その手口も巧妙化してきており、最近は警察官を名乗る人物からの電話でお金を騙し取られるケースが急増。こうした状況に対し、ジェイコム東京では警視庁と連携して特殊詐欺に関する啓発動画を作成。J:COMチャンネルでの放送や、地域情報アプリ「ど・ろーかる」での配信などを通して注意喚起を行なっていくとのことだ。
イベントではその動画も放送されたが、警察官をかたる人物が電話で「あなた名義の銀行口座が犯罪に使われており、共犯の容疑者として逮捕状が出ている」と不安を抱かせてお金を騙し取る手口が分かりやすく映像化されていた。
角田夏実選手がともえ投げで気合を入れる!
続いて、柔道・角田選手をゲストに迎えたトークショーが開催された。角田選手は2021~23年の世界選手権女子48kg級で3連覇を成し遂げ、2024年パリ五輪では金メダルを獲得するなど、世界的に注目を集める柔道家。巴投げと関節技を得意とすることでも知られている。
会場のモニターで啓発動画を視聴した角田選手は、自分自身も同じような経験をしたことがあると告白。警察官を名乗る人物から「あなたの口座が犯罪に使われた」と電話があり、詐欺かなと思いながらも焦ってしまい「どうしよう、どうしよう」という感じになったという。
そのときは横に友人がいたこともあって、すぐ「知り合いの警察官に相談してみます」と電話を切ることができたそうだが、「ひとりだったら、焦って(相手の)誘導に流されるままになってしまっていたかも」と語り、「皆さんも(こうした電話がかかってきたら)一度冷静に考えてみてほしい」と会場に呼びかけた。
光が丘警察署の蔵谷署長によると「警察官を名乗って騙すオレオレ詐欺や、区役所職員をかたって騙す還付金詐欺などいろいろな手口が確認されている」そうで、なかでも最近はインターネットバンキングで送金させるケースが増えてきているという。そこで、練馬区内では警察と信用金庫が連携して定期預金の利用を促すなどの取り組みを行なっており、来場者にも「今すぐ使わないお金や資産は(解約に対面での手続きが必要な)定期預金に預けてみては」とアドバイスした。
なお、特殊詐欺というと高齢者が被害に遭いやすいイメージがあるが、最近は幅広い世代に被害が広がっているという。とくに、詐欺の手口を知っていて“自分は大丈夫”と思っている人が被害に遭うケースが多いため、“自分ごと”ととらえて油断しないよう気をつける必要があるとのこと。
トークショー終了後、会場にはマットが敷かれ、角田選手と柔道着に着替えた蔵谷署長が対面。角田選手が鮮やかな巴投げを決めて会場を沸かせていた。
角田選手は「こういうシチュエーションで投げるのは初めてだったのでちょっと緊張しました」と言いながら、「これで少しでも詐欺被害の減少に役立てれば嬉しいです」とニッコリ。特殊詐欺を一掃する意気込みで受けたという蔵谷署長は「やっぱり世界を制したともえ投げですね。あっという間に着地していて、すごいなと思いました」とコメントした。
イベント終了後の囲み取材で角田選手は「今回のイベントで、電話番号も偽装できるということを初めて知りました。知らない番号からかかってきたとき、不安になって番号を検索してしまうのですが、それが本当に警察署からだとさらに不安になってしまいそう」と語り、「そういった手口があることも頭に入れて対応していきたい」と表情を引き締めていた。