UberアプリからWaymo(ウェイモ)の自動運転タクシーが呼べる新しい配車マッチングサービス「Waymo on Uber」が米国テキサス州の都市オースティンでスタートしています。この街ではWaymoの点検整備を行うデポ(車両基地)をUberが主体となり、運営・管理しています。たくさんのWaymoのタクシーがずらりと並ぶ、普段は非公開の車両基地に潜入した貴重なレポートをお届けします。
UberがWaymoの自動運転タクシーを整備する
米Uber Technologiesは今年の3月4日から、米Alphabet傘下のWaymoと組んで、Uberの配車アプリからWaymoの自動運転タクシーが、人間が運転する自家用タクシーと変わらない感覚と価格で利用できる「Waymo on Uber」のサービスをオースティンで提供しています。
実際にサービスをどのように利用できるのか、筆者が現地で取材した体験レポートをぜひ合わせてご覧ください。
「Waymo on Uber」のサービスはオースティンに先駆けて、2023年10月からアリゾナ州の都市フェニックスで開始されています。UberとWaymoの両社はフェニックスの街で自動運転タクシーを展開してきたノウハウを活かし、オースティンの街に最適化を図る形で協業によるサービスを展開してきました。UberアプリからWaymoの自動運転タクシーが呼べるサービスのおおまかな立て付けは同じですが、フェニックスとオースティンの場合で大きく違う箇所がひとつあります。それが今回レポートする、Waymoの点検整備を行うデポ(車両基地)の運営スタイルです。
フェニックスではWaymoが独自に車両の点検整備を行っています。対して、オースティンではUberが自動運転車両の点検整備のエキスパートであるAvomo(アヴォモ)とパートナーシップを組んで提供する形を採っています。
なぜオースティンでUberがWaymoの車両点検までを担うことになったのか、背景にある理由などについて、Uber TechnologiesのAutonomus Mobility and Delivery部門のグローバル・ゼネラル・マネージャーであるノア・ジッチ氏がデポの取材ツアーに集まった記者によるグループインタビューに回答しています。
熟練技師による丁寧なメンテナンス
Uberがオースティンでは独自にWaymoの車両点検を行うことになった背景には、自動運転システムについて熟知するパートナーであるAvomoと組み、車両の運用状況をより正確に把握しながら、さらに質の高いサービスを提供する狙いがあったようです。
Waymo on Uberの車両基地は、オースティンの街の中心から車で15分ほど移動した郊外にあります。Waymoの自動運転タクシーはここから「出勤」して、充電や整備が必要になると自らここに戻ってきます。オースティンでは3月のサービス開始時点で数十台(おそらく40〜50台前後)、Waymoの自動運転タクシーが稼働しています。この日、車両基地に報道陣が集まった時間には点検整備、または充電中の車両が20台弱集まっていました。
この場所では通常のタクシーと同じようにすり減ったタイヤの交換、ウォッシャー液の補充、車内・車外の清掃のほか、Waymoの自動運転車両の管理マニュアルに従って、安全な自律走行に欠かせないセンサーのクリーニング、コンピュータシステムのメンテナンスなどが実施されます。作業は熟練した車両整備士たちが身体と手を動かしながら丁寧に行っていました。
常に一定数の自動運転タクシーを現場に回すシステム
車両の整備は必要に応じて行われますが、清掃やバッテリーのチャージはより高い頻度で定期的に実施されます。ただある時、24時間365日稼働しているはずのWaymoの自動運転タクシーが車両点検や充電のため一斉にデポに戻り、「オースティンの街中で1台も走っていない」という状況は未然に防がなければなりません。
Uberでは独自に配車サービスアプリの利用状況を見ながら、自動運転タクシーの需要予測を立てて、全体の稼働時間を最適化を図るシステムを構築しているのだと、ジッチ氏は説明しています。
充電を完了して"出勤"するWaymoの自動運転タクシー。立て続けに、充電のため帰還してきたタクシーにも会えました。
このようにUberが車両点検まで自社で行い、独自のノウハウを注入しながら質の高いサービスを提供するビジネスモデルは、オースティンの次にWaymo on Uberの実施を予定するジョージア州アトランタにも引き継がれるようです。またジッチ氏によると、今後は車両の充電に関してはデポにまで戻らなくても、より街中に近い場所でできるように"充電ポイント"を別途も受けることも検討しているといいます。
自動運転タクシーは安全という認識が速やかに浸透した
オースティンの街でWaymo on Uberのサービスが始まってからまだ2週間ほどですが、ここまでサービス滑り出しはとても順調で、小さなものも含めて事故もなく安全・安心なサービスが提供できているとジッチ氏は胸を張ります。
運転席でハンドルを握るドライバーがいない、自動運転タクシーが街中を走る様子はオースティンで生活する人々にとって既になじみ深い光景になりつつあるようです。ジッチ氏は「単に見慣れるというだけでなく、自動運転タクシーに乗ってみると、このテクノロジーがいかに信頼性が高く安全であるかを認識してもらえるからだろう」と話していました。
オースティンの車両基地から得られた知見が、今後Uberが世界で展開する自動運転タクシーによるサービスの安心・安全に広く活かされることを期待しましょう。
取材協力: Uber Japan