テレビ画面を注視していたかどうかが分かる視聴データを独自に取得・分析するREVISIOでは、16日に放送されたNHK大河ドラマ『べらぼう~蔦重栄華乃夢噺~』(総合 毎週日曜20:00~ほか)の第11話「富本、仁義の馬面」の視聴者分析をまとめた。

  • (左から)横浜流星、安達祐実、中村蒼=『べらぼう~蔦重栄華乃夢噺~』第10話より (C)NHK

    (左から)横浜流星、安達祐実、中村蒼=『べらぼう~蔦重栄華乃夢噺~』第11話より (C)NHK

女郎たちを午之助の歌声で救ってほしい

最も注目されたのは20時34分で、注目度76.5%。かをり(稲垣来泉)たち女郎が、富本豊志太夫・午之助(寛一郎)の『都見物彩色紅葉』を聞いてすすり泣くシーンだ。

午之助にはかつて若木屋与八(本宮泰風)によって、同僚である市川門之助(濱尾ノリタカ)とともに吉原からたたき出された屈辱的な過去があった。2人が吉原を嫌うには十分過ぎる理由である。そんな午之助に吉原の俄祭りに出演してもらうよう蔦重(横浜流星)は一計を案じる。蔦重は吉原を出て向島に2人を招き、りつ(安達祐実)と大文字屋市兵衛(伊藤淳史)の3人で誠意を込めて謝罪し、富本節を聞いてみたいという女郎たちとともに2人をもてなした。

会がおひらきとなった際、蔦重は午之助に女郎たちに富本を聞かせてやってほしいと願い出る。午之助たちはこころよく引き受け、即興で『都見物彩色紅葉』を披露すると、女郎たちはみな感動のあまり涙を流した。女郎たちの反応に戸惑う午之助たちに、吉原の女郎は芝居を観たことのないものがほとんどで、江戸にいながら芝居を見に行けずこの世に別れを告げる者もいると、蔦重は女郎の境遇を語った。

そして、蔦重はそんな吉原の女郎たちを、午之助の歌声で救ってほしいと俄祭りへの出演を嘆願する。「やろうじゃねえか」午之助は即座に了承した。女郎たちの涙が吉原嫌いの午之助の心を動かしたのだ。そしてそんな折、ある吉報が蔦重のもとに舞い込んできた。

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午之助と門之助の男気に魅了される

注目された理由は、午之助と門之助の芸が日々を苦界で過ごす女郎に刺さる様子に、視聴者が共感したと考えられる。

蔦重はかをりの芝居を見たことがないという言葉から、午之助の吉原へのイメージを払拭する策を思いついた。思惑は見事に的中し、午之助の俄祭りへの参加を取り付けただけでなく、直伝を出す許可まで得ることができた。

SNSでは、「吉原の女郎たちの一人ひとりの思いが伝わってきて胸がギュッとなった」「必死に芸を身につけているのに、本物を知らずに死んでいく女郎たちがたくさんいたのは切なすぎます」といった、過酷な毎日を送る女郎たちをおもんぱかる多くの視聴者のコメントが集まった。

また、「太夫は女郎たちのもてなしに感銘したのはもちろんだけど、何よりも自分たちの芸を心から感動してくれたのにグッときたんだろうね」「蔦重が祭への参加を依頼したときに、午之助が間髪入れずに返答したのがかっこよすぎる」と、午之助と門之助の男気に魅了された視聴者も続出している。

江戸時代、役者は主要な身分である武士・農民・職人・商人の「四民」より下の地位に位置づけられ、「河原者」とも呼ばれていた。それゆえに若木屋与八は、午之助と門之助を客とは扱わなかったのだろう。浄瑠璃は三味線を伴奏に太夫が物語を語る日本の伝統芸能。当初、浄瑠璃は琵琶を伴奏としていたが、琉球から三線が伝わり、三味線が誕生すると大きな発展を遂げる。三味線は音色の変化やリズムによって人間の感情や情景を細やかに表現し、太夫の語りとともに物語への没入感を深める。『浄瑠璃物語』という牛若丸・源義経と浄瑠璃御前の恋物語を描いた作品を起源とし、作者は織田信長に仕えた侍女・小野阿通(おののおつう)と思われていたが、その後の研究で否定され今は定説がない。

ちなみに浄瑠璃はサンスクリット語の「ヴァイドゥーリヤ」の音写で、清らかな青いサファイヤ、またはラピスラズリという意味。今回、午之助が披露したの『「都見物彩色紅葉』という演目だ。京都を舞台に、大原女(おはらめ)と男の恋の行方を描いている。大原女とは、山城国・大原(現在の京都市左京区大原)の薪や野菜などを頭に載せて、京都市街へ行商に出ていた女性たちのことだ。

富本豊志太夫・午之助を演じる寛一郎は、ユマニテに所属する東京都出身の28歳。父が佐藤浩市、祖父が三國連太郎という芸能一家に育った。2017年に俳優デビューし、2019年『グランメゾン東京』の芹田公一役で連続ドラマ初レギュラーを務めた。2022年大河ドラマ『鎌倉殿の13人』では佐藤浩市と親子共演(※ただし共演シーンはなし)を果たし、以来、2度目の大河ドラマ出演となる。午之助の表情やセリフ回しに佐藤浩市の面影を感じた視聴者も多かったようだ。