俳優の寛一郎が、16日に放送された大河ドラマ『べらぼう~蔦重栄華乃夢噺~』(NHK総合 毎週日曜20:00~ほか)の第11回「富本、仁義の馬面」から、浄瑠璃の流派の一つである富本節の二代目・富本豊志太夫(午之助)役で登場(※第12回からは富本豊前太夫)。美声を披露し、反響を呼んだ。第12回「俄なる『明月余情』」で描かれる「俄(にわか)祭り」にも参加する富本豊前太夫、そして、演じる寛一郎について、第11・12回の演出を担当した小谷高義ディレクターに話を聞いた。

  • 大河ドラマ『べらぼう~蔦重栄華乃夢噺~』富本豊志太夫(午之助)役の寛一郎

江戸時代中期の吉原を舞台に、東洲斎写楽、喜多川歌麿らを世に送り出し、江戸のメディア王にまで成り上がった“蔦重”こと蔦屋重三郎(横浜流星)の波乱万丈の生涯を描く本作。脚本は、『おんな城主 直虎』(17)以来、8年ぶり2度目の大河ドラマとなる森下佳子氏が手掛ける。

富本豊志太夫は別名“馬面太夫”。その美声で江戸中を魅了する浄瑠璃の人気太夫だ。第11回で、俄祭りへの参加を蔦重が直訴し、出演を快諾。また、蔦重の働きかけによって、浄瑠璃の元締めである鳥山検校(市原隼人)から、富本豊前太夫襲名が認められた。

小谷氏は、富本節について「蔦重が本格的に出版物を増やしていく頃に馬面太夫の人気が出て、富本節の正本や稽古本を売っていくので、一緒に上昇気流に乗っていくという印象。ドラマで描いている富本はまだ勢いが出だした頃で、新興勢力が出会うという感じです」と説明。浄瑠璃のさまざまな流派の中で、富本は恋の歌が多く「色気」が特徴だと感じたという。

そして、馬面太夫の絵などが多く残っていることから、「相当な人気を誇っている」と想像。「新興勢力としてのフレッシュさや勢いに加えて、人気の理由であろう品と色気を出していただきたいと考え、寛一郎さんへオファーさせていただきました」と起用理由を明かした。

SNSでは寛一郎の美声に「馬面太夫の声が美しすぎて震える」「素敵な声だったなぁ」「色気のある声だわ」といった声が上がったが、小谷氏も「大変なチャレンジをしていただきましたが、ご自身の声の特性を生かして切なさを表してくださったと思いました」と称賛する。

出待ちの客がキャーキャー言うなど、女性と相対するシーンも、どのように演じるかいろいろ試して演じていたそうで、「彼の演じる太夫であれば、にこやかに応対してもいいんだなと、強い説得力を持って演じていただき新鮮でした」と話していた。

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