ビジネスの現場では、うまくいかないことが必ずあります。しかし、特に若いビジネスパーソンの多くは、問題を冷静に受け止めることができず、具体的な解決策を考える前に焦ってしまう傾向があります。
新しいことにチャレンジした際、誰もが最初はうまくいかないものです。まずは、何がうまくいっていないのか、何を解決しなければならないのかという問題と冷静に向き合うことが大切です。
幸いにも、これまで多くの先人たちが問題解決をしてきたなかで、問題解決をするフレームワークはすでに確立されています。
「問題解決は技術だ」ということを理解して、そのプロセスを頭に叩き込んでおけば、問題が起こっても、事態を必ず打開することができます。
問題解決のフレームワークはシンプル
まずは、「問題解決の技術」とは、「(1)問題⇒(2)原因⇒(3)打ち手」というシンプルなフレームワークであることを暗記してしまいましょう。このフレームワークを使いこなせれば、ビジネスがかなり簡単に思えるはずです。
(1)問題(特定)
何かが「うまくいっていない」と感じたときには、まず「何が問題なのかを特定する」ことです。問題を感じながらも、問題が何か分からないまま悩んでいるケースは意外と多いものです。
例えば、自分の営業成績が悪い場合、「売上が低い」という漠然と考えるのではなく、「目標1億円に対して8,000万円しか達成できていない」という具体的なギャップを明確にすることです。この「ギャップ=問題」という視点が、解決への第一歩になります。
(2原因(特定)
問題が特定できたら、次は「なぜそのギャップが生じているのか」を分析します。例えば、営業成績が悪い場合、以下のように要因を分解することが大切です。
・行動量が足りないのか?
・見込み客の数が少ないのか?
・成約率が低いのか?
・価格設定が適切でないのか?
このように、考えられる原因をリストアップして、それぞれの可能性を検討していくことで、問題の本質が見えてきます。
(3)打ち手
原因が分かれば、その原因の解決に優先順位を付けて、それに対する具体的な打ち手を考えます。例えば「見込み客の数が少ない」にした場合、以下のような解決策が考えられます。
・他の営業マンがどのように見込み客を増やしているかを調査する
・新たなアプローチ方法(SNS活用、紹介制度の強化など)を試す
・自社の提供価値を再整理し、顧客に対してより魅力的に伝える
解決策を決めたら、実際に試して結果を分析し、必要に応じて調整していきます。
キャリアとビジネスに活かす問題解決法
この問題解決のフレームワークは、ビジネスだけでなく、個人のキャリアにも応用できます。
例えば、将来は会社の社長になるという目標を立てた場合、以下のようなステップを踏むことで、目標達成に近づきます。
1.理想の状態を設定する(例:10年後に会社の社長になる)
2.現状とのギャップを把握する(例:現在は営業職で、経営経験がない)
3.ギャップの原因を分析する(例:経営知識が不足、業界内の人脈が少ない)
4.解決策を考える(例:MBA取得、業界の勉強会に参加、成功者から学ぶ)
5.実行して改善する(例:計画を定期的に見直し、進捗を確認する)
この「理想の状態を定め、現状とのギャップを明確にし、解決策を講じる」というフレームワークを活用すれば、どんな目標も実現可能です。
多くの若手ビジネスパーソンは、このフレームワークのどこかで足踏みしてしまっていたり、どこかの取り組みを飛ばしてしまったりしていることで、問題を解決できずにいるのです。
原因を特定しない限り、解決はできません。原因を洗い出し、それに対する打ち手を作るというフレームワークは非常に有効です。この問題解決のフレームワークを活用し、トレーニングを重ねることで、確実に問題解決力を高めていくことができます。
上司や先輩から適切なアドバイスが受けられる問いかけ
一朝一夕では達成できないような目標を設定した場合は、「理想の状態を定め、現状とのギャップを明確にし、解決策を講じる」を繰り返していきます。
例えば、先ほどの10年後に会社の社長になるという目標では、3年ごとに進捗を区切り、それぞれの「あるべき姿」と現状のギャップを明確にします。そのギャップが問題となり、その原因を特定し、それに対する解決策を講じることで自分が成長していきます。
次の段階でも同様にギャップを埋める作業を繰り返していけば、最終的には目標に到達することができる。このプロセスを続けることで、社長になるという目標や理想を確実に実現できるのです。
世界レベルの偉人にはなれないかもしれませんが、一般的な人がやれていることならば、たいていのことは解決できるはずです。
また、問題を解決するためには、徹底的に改善策を考えることが必要ですが、若いビジネスパーソンはそのための経験や知識が不足しています。そのため、もし改善策が自分で思いつかなければ、上司や先輩に相談することが重要になります。
ただし、漠然と「売上が上がりません」と相談しても、有益なアドバイスが得られないだけなく、仕事のできない社員だと思われてしまいます。
そこで、「売上を1億円にしたいのですが、現在は8,000万円。残り2,000万円を埋めるための原因は○○だと思います。どんな解決策があるか、ヒントをいただけませんか?」とフレームワークに沿った質問をすれば、必ず有益なアドバイスが得られるとともに、仕事がデキる社員だと思われるでしょう。
明確な課題を示し、質の高い回答を引き出す力も重要なビジネススキルです。
問題の原因が自分で分からなければ、当事者に訊く
このフレームワークは個人の仕事だけでなく、チームや会社といった組織のビジョン達成や問題解決にも役立ちます。
あるクライアントの税理士事務所で、担当する顧客の解約が全くない税理士と、短期間で解約される税理士がいました。原因を調査しても明確な違いが分からなかったため、お客様にアンケートを実施しました。
その結果、短期間で解約される税理士に関しては「覇気がない」「何をしているのか分からない」「この1年間、何をしてくれたかが分からないし、来年何してくれるかも分からない」という評価が返ってきました。
そこで、その税理士は半年ごとに顧客に業務報告と今後の予定を伝えるよう改善したところ、顧客に解約されることがなくなっただけでなく、契約数が大幅に増加したのです。
問題の原因が自分たちで分かればいいですが、上のケースのように自分たちでは分からなかった場合、対顧客の問題の場合は顧客に訊くのが一番早いし、対上司なら上司に、対部下なら部下に訊くのが早いと思います。
ただ、顧客に「うちの何が悪いんでしょう?」などと直接的に聞くのは、自社の弱みを見せることになる可能性もあります。
ですので、顧客に意見を求める際は「より良いサービスを提供するために意見をください」といった前向きなアプローチを取ることで、建設的な意見を得られやすくなります。
このように、どんな問題であろうとも、真剣に原因と打ち手を考えれば、いきなり100点を取ることは無理でも、着実に問題解決に近づいていけるわけです。
若手ビジネスパーソンの多くは、ミスや改善点を指摘されることに慣れていません。しかし、成果を出すためには「間違いを指摘されること」を前向きに捉え、自ら改善していく姿勢を習慣にしましょう。
本当に成果を出せる人は、問題の本質を見抜き、適切な解決策を実行することができる人です。この「原因を明確にし、具体的な打ち手を考え、実行する」というプロセスを習慣化すれば、個人の成長はもちろん、チームや会社全体の成果向上にもつながります。
「問題解決は技術である」という意識を持ち、日々の業務やキャリア設計に取り入れることで、どんな課題も乗り越えていける力を身につけることができるでしょう。
著者プロフィール:安東邦彦(あんどう・くにひこ)
ブレインマークス株式会社 代表取締役
中小・ベンチャー企業のコンサルティングを行う株式会社ブレインマークス代表取締役。世界的コンサルタント、マイケルE.ガーバーから直々に学び、「社長が不在でも事業を拡大する仕組み」を支援。その独特の手法で、講演やコンサルティングの依頼が絶えない。