暖かくなってくると旅に出たくなるもの。行き先の条件が「おいしいものが食べられること」なら候補に静岡県静岡市はどうだろうか? 東京から新幹線で1時間で着くため交通の便もよく、静岡市内のアクセスも公共交通機関で移動ができ、1泊2日でも十分に美食を堪能できるのだ。
全国唯一!? 「石垣」でいちご狩り
静岡市でいちご狩りを楽しむなら、おすすめしたいのが早川農園。久能山東照宮から徒歩1分ほどの場所にある農園で、かなり珍しい「石垣」で栽培されているいちごを楽しむことができる。積まれた石垣の間に苗を植え育てる独特の栽培方法により、日光で石垣が温まり、光熱費を削減できることからリーズナブルに提供できるという。
品種は「あきひめ」が中心。練乳が不要なほどとても糖度が高く実がやわらかいため、全国への流通量が少なく、いちご狩りや直売所からの地方発送や静岡県内での消費がほとんどだそう。ケーキなどの加工品に使用しようとしても糖度が高く生クリームに色が染み出てしまうほど。そのまま生食するのが最高においしい品種なので、いちご狩りや直売所でお楽しみいただきたい。
「早川農園&cafeいちご畑」ではいちごの販売を行っており、2階のカフェではいちごを3種類食べ比べできるメニューや、いちごを贅沢に使用した「久能山白いちごパフェプレート」など存分にいちごを味わうことができる。
現役農家オーナーが腕をふるう海沿いレストラン
静岡県の真ん中あたりの久能地区にあるファーマーズ ピッツェリア「DON FARM」は現役農家のオーナー畑田敏克さんが「野菜の魅力を伝えたい」「ここでしか食べられないメニューを提供したい」と始めた静岡でもかなり人気の店。店の前には海が広がるロケーションも魅力だ。
畑田さんは土づくりからこだわっており、有機肥料を使用することでふかふかの土を実現。その結果、野菜はみずみずしく、みるく(=静岡弁で柔らかい・若いの意味)なるという。今回いただいた「A Lunch」は季節野菜のスープ・朝採り野菜の前菜・ピザかパスタ・ソフトドリンクがついて1,925円。この日は「紫大根のスープ」に「窯焼き野菜―ビーツのソース―」が提供された(※通常提供メニューとは異なります)。
葉しょうがは、久能の海と山に囲まれた温暖な気候により40年ほど前から栽培され、静岡では春野菜としてなじみが深いもの。茎の付け根の鮮やかな紅と柔らかな肉質・マイルドな辛みが特徴だ。
港町の老舗問屋で絶品しらす丼
静岡市に来たのならしらす丼が食べたい! そんな方におすすめしたいのは老舗のしらす問屋「マルカイ」が用宗のみなと横丁内にオープンした飲食店。静岡駅から2駅の場所にある用宗エリアは「しらすの町」として知られ、すぐ近くには用宗港がある。水揚げされた新鮮なしらすをしらす丼として提供しているのが「次郎丸」だ。
釜揚げしらす丼や生しらす丼、あるいはその両方を贅沢に楽しめるハーフ&ハーフも。他にはまぐろ丼や海鮮丼など。50年以上の経験がある寿司職人がつくる丼は絶品だ。
地元食材のご当地フレーバーを楽しむジェラート店
お腹が満たされたら用宗エリアの散策がおすすめ。古民家一棟貸しの宿「日本色」や用宗みなと温泉、雑貨や静岡名物が購入できるハットパークなど、海沿いを歩きながらスタイリッシュな静岡を垣間見ることができる。
甘いもの好きなら立ち寄りたいのがジェラート店「LA PALETTE」。静岡の厳選した食材を生かしたジェラートが人気だ。そのフレーバーは「三ヶ日みかん」「川根本町産ゆず」などから「由比産桜えび」「久能産葉しょうが」「安倍川もち」「用宗産釜揚げしらすヨーグルト」などどんな味か想像がつかないものも多い。
回転する大きなショーケースから店員さんがアイスを盛り付けてくれるのもワクワクする。3つがカップに盛り付けられ、さらに「もう1種類お味見用にスプーンにつけることができますよ」と言ってくれるので迷ってしまう。
2階のテラス席で目の前に広がる海を眺めながらいただく。選択したフレーバー「しらすヨーグルト」は釜揚げしらすを混ぜ込んだ変わり種。想像よりもずっとジェラートとしておいしく爽やかなヨーグルト風味だったが、後味になぜかしらすを感じるのが面白かった。
ビール好きの夢「タップ付き客室」のホテル
お酒好きな方に紹介したいのは用宗エリアにある「West Coast Brewing」。以前は老舗のフレンチレストランだった場所を改装し、1階は最大16タップ・常時10種前後のクラフトビールを飲むことができるタップルーム、2階は"ブルワリーに泊まれる"をコンセプトとした直営ホテル「The Villa & Barrel Lounge」。なんと全客室にビアタップがついており、宿泊者しか飲むことができない限定のビールが10リットルまで好きなだけ味わえるという。
毎週木曜日には新作のクラフトビールがリリースされ、その銘柄数は400種類を超えている。新作を楽しみにしているファンも多く、また缶のアートワークのおしゃれさにも注目が集まっている。
道路を挟んだ向かい側には醸造所があり、常に数種類の新作ビールがリリースに向けて醸造されている。同じ場所には用宗みなと温泉があり、風呂上がりの一杯を楽しむにはあまりにも贅沢なロケーション。
店主はお茶マニア! 日本茶をフル活用した食堂
静岡らしい食事を味わいたいなら、夕食には静岡駅近くにある「お抹茶こんどうの食堂」を推したい。日本茶インストラクターの資格を持つ大将がお茶をフル活用したメニューを提供してくれる。
まず驚くのがドリンクメニュー。さまざまな静岡茶をつかったドリンクはアルコールもソフトドリンクも充実しており、「お抹茶ショット」など一見想像もつかないものも多い。
たとえば「お抹茶ショット」(990円)は、グラスに注いだ生ビールに抹茶をその場で注ぎ入れるというもの。
ビールと抹茶……? と戸惑うが、注ぎ入れた直後は泡・抹茶・ビールの3層になり美しい。そしてビールの旨味に抹茶のまろやかさが合う! こんな相乗効果は初めてで感動してしまう。
さらに、「お茶割」もただ割ったものではなく、1杯ずつ立てたお茶を急須で氷の入ったグラスに注ぎ入れ「まずはお茶そのままでお飲み下さい」と言われる。お茶のおいしさをちゃんと味わった後に焼酎を自分で入れ、「お茶割」にするというわけだ。さすが静岡というか、お茶の扱いがかなり丁寧、そしてかなりおいしい。
料理も静岡の食材をつかった絶品ばかり。今回は「大将おまかせの6品コース」(1人4,015円~/要予約)をいただいた。メニューは仕入れと大将の気分で内容が変わるとのことだが、いずれもお茶を使ったお酒との相性も抜群なものばかり。
大将は日本茶インストラクターの資格を持つだけあって、とにかくお茶マニア。ドリンクメニューからもわかるように、お茶へのこだわりが尋常ではない。最後にデザートで提供された「お抹茶ソフト」も「静岡ほんやま抹茶」と「福岡八女の抹茶」をブレンドしており、さらに仕上げには特製お抹茶ソースと石臼で挽きたての抹茶をかけている。
静岡市といえば、自然豊かでのどかな場所というイメージが強いが、近年特におしゃれでスタイリッシュな要素が急上昇している。さらに各店の店主が趣向を凝らした絶品メニューも多い。グルメな方であれば一人旅でも友達同士でも家族旅でも存分においしいものを楽しめる旅になるに違いない。
取材協力: 静岡市