――お子さんが生まれて、ご自身の内面的な部分の変化はいかがですか?
自分自身は特に変わったことはない気がします。「世界一大切なものができました」という声をよく聞きますが、そういう感覚もなくて。もちろん大事で、子供がしんどい思いをしたら代わってあげたいと思いますし、何か危ないことがあったら身を投げ出すと思いますが。「かわいい」と愛でる感じでもなく、1人の人間として面白いなという感覚です。
――1人の人間として対等に見ていらっしゃる感覚なのでしょうか。
そうですね。自分が育てていますという感覚ではなく、今はどうしたって自分ではできないことがあるから私がやっているだけというか。
――引退も考えたということですし、仕事に対する思いは変化がありましたか?
仕事をさせてもらえるありがたみをすごく感じるようになりました。夫や義理の母に見てもらっている時間だからこそ、仕事にかけるエネルギーをちゃんと出してお芝居したいという気持ちがより強くなり、今までもそうですが、より当たり前じゃないと感じていて、自分にできることをすべて出していくしかないという思いです。
――演じる楽しさも改めて感じましたか?
『35年目のラブレター』のときに、やっぱりお芝居は楽しいし難しいと感じました。また、ドラマの衣装合わせのときにも、皆さんで役を作り上げていくことが楽しいなと思い、夫に「やっぱり頑張りたい」と話したら、夫から本当に楽しいと思えているか問われて、そのときに「楽しい」と心から思えて涙が出てきたんです。母親感的にあまり変わってないとはいえ頭の中では母親だと思っているから、無意識に仕事を楽しんだらいけないと思っていた自分がいたことに気づき、夫から「楽しいと言えてよかったね」と言ってもらいました。
――その出来事がきっかけで仕事を楽しんでいいんだと吹っ切れたと。
そうなんです。だからこそ、より頑張ろうという気持ちになりました。
――仕事を楽しんでいいと思えるきっかけをくれた旦那さん、素敵ですね。
夫は仕事が大好きで、本当に楽しめているかというのを大事にする人間なんです。私も仕事が好きですけど、出産前は掛け持ちすることも多くて大変だなと思いがちで。でも夫と話し、原点に立ち返るというか、楽しいという気持ちが大事なんだと気づくことができました。
――これからも、ご夫婦としても女優業に関しても、「楽しい」というのが大事な軸に?
そうですね。生活を楽しんでいきたいという思いは常にあるので、その上でこの仕事であればなおうれしいなと思います。
「お芝居を続けていけたら幸せな人生」 おばあちゃん役への憧れも
――今後の人生どうなっていったらいいなと思い描いていますか?
年を重ねても面白味が出るのがこの仕事なので、お芝居を続けていけたら幸せな人生だなと思いますが、子供を産んでから、仕事でこうしたいとイメージしにくくなりました。でも、不思議と不安はないです。ありのままでお芝居するしかなくて、それ以上のものは出せないと思っているので。いずれおばあちゃん役をやりたいという気持ちはあって、憧れている諸先輩もたくさんいるので、そういう風になれたらという思いはあります。
――どんな方に憧れているのでしょうか。
たくさんいらっしゃいますが、余貴美子さんや風吹ジュンさんはおばあちゃん役もできるし、ご本人はすごく凛としていてかっこいい生き方をされていて。私もありのまま生きて、それが表現に生きたらいいなと。そのために、自分の人生を豊かにしていこうという気持ちが強いです。今、都心から離れた山が近くにあるところに住んでいますが、感覚が研ぎ澄まされている感じもあって、そういう風に生活を豊かにして、それを芝居に還元し、皆さんに認めていただけて次につながって……おばあちゃんまで続けばいいなと漠然と思っています。
1988年5月9日生まれ、大阪府出身。ドラマ『放課後。』(04)で女優デビュー。『放郷物語』(06)で映画初主演。近年の主な出演作に、映画『コンフィデンスマンJP -英雄編-』『犬も食わねどチャーリーは笑う』(22)、『正欲』(23)、ドラマ『恋のツキ』(18)など。NHK連続テレビ小説『わろてんか』(17~18)ではヒロイン・てん付きの女中・トキを好演した。