
金村の仕上がりは順調
台湾シリーズが盛況のうちに終わり、初っ端、エスコンの西武戦を皮切りにオープン戦日程が始まった。いよいよ開幕カウントダウンである。もっともGAORA中継を見ているとオープン戦でなく、「プレシーズンゲーム」という呼称を用いている。英語としてはその方が正しいだろう。プレシーズンがあって、シーズンがあって、ポストシーズンがある。オープン戦というのはどうも日本独特の表現らしく、「もうすぐ開幕」の意味のオープンにひっかけたという説とセ・パのチームがリーグの別にこだわらずオープンに対戦するという説があるようだ。まぁ、例えばサッカーでは天皇杯のようにJ1、J2等のカテゴリーやプロアマの枠を取っ払って戦う「オープントーナメント」という言い方があり、セ・パの枠組みだけじゃ大してオープンじゃないだろうという気もするが、この呼び方ができた昭和の昔は交流戦が存在しなかった。
ファイターズは「北海道日本ハム」になってから、いったん沖縄から北海道へ戻ってオープン戦日程をスタートする決まりだ。今年は台湾シリーズが入って少し変則になったが、エスコンフィールドの外は雪が残り、ドーム球場のありがたさが身に沁みる。対戦相手は開幕シリーズと同じ、新生・西口ライオンズ。お互いデータがなく、初見で力勝負した台湾シリーズと違って、リアルな駆け引きが始まる。手の内を隠すにせよ伏線を張るにせよ、ザ・プロ野球の攻防だ。という意味ではいちばん面白いカードじゃないか。しかも先発が開幕投手の金村尚真(西武は主戦・隅田知一郎)。むちゃくちゃ楽しみじゃないか。
万波中正、水谷瞬、齋藤友貴哉の3人は侍ジャパン招集のため不在(水谷を筆頭にオランダ戦で大活躍!)だったが、その分、今川優馬や矢澤宏太が張り切っていた。また第1戦は「レフト野村佑希」、第2戦は「ライト中島卓」を試してみることもできた。
ファンがいちばん注目したのは開幕を任された金村尚真の仕上がり具合だろう。4イニング投げて2失点。色んな球種を試していたが(そして変化球が高めに浮いていたが)、まっすぐは生きていた。変化球を続けても、腕を振って生きたまっすぐが投じられる。しかもコントロールで間違わない。外角低めにビタッと決まる。あぁ、これぞ金村だなぁという投球だった。開幕3週間前ということでいえば合格点だ。
逆に侍ジャパンの今井達也は(初見のオランダ打線相手だったが)もうこんなに仕上がってるの?、というくらいキレがあった。今年から威圧感のないフォームの変えたそうで、スッと投げてギュウーンと球が来る。あれはタイミング取るのが難しそうだ。
ケガで開幕離脱が一番怖い
春先の試合で心配なのはケガである。金村が1塁ベースカバーで足をひねったシーンがあり、うわ、マジか勘弁してくれと思ったのだった。これは大過なかったが、レイエスが8回裏、西武・黒木優太からデッドボールを食らい、負傷交代するシーンがあり、血の気が引いた。149キロのストレート。当たった箇所は右手首だ。骨折して開幕絶望なんてことになったら大ショックだ。
まぁ、黒木は去年までファイターズのユニフォームを着ていた選手であり、当てたくて当てたわけじゃない。育成契約で西武に拾われ、支配下復帰を目指して今、ぎりぎりの闘いを繰り広げているところだ。それがわかるだけに心中複雑だった。
新聞には大きく報じられた。レイエスはむちゃくちゃ頼りにされている。昨シーズン前半の「ダメ外人」評価がウソのようだ。ある意味、最も代えのきかない存在といっていい。結局、翌日の検査で骨に異常がないことがわかり、皆、ホッと胸をなでおろした。これが「主砲」ということだ。「4番を任された野村佑希」はまだ「主砲」の仮免である。西武戦の「プレシーズンゲーム」では第1戦マルティネス、第2戦清宮幸太郎にいい感じのホームランが飛び出した。ファイターズは今シーズン、打ち勝つ野球をもっと見せていきたい。その構想の大前提にレイエスがどっかりと存在するのだ。
それからこの西武戦シリーズはもうひとつ注目ポイントがあった。新しく実装された内野の人工芝だ。選手らも台湾から帰って、初めてエスコンの人工芝を体験した。これがハマるかどうかは、今シーズンのチーム成績に直接はね返ると思っている。
テレビの見た目はそんなに変わらないから、気がつかないファンもいることだろう。MLBで導入が進む「B1K」という最先端の人工芝だそうだ。3層構造になっていて、クッションパッドの上に砂が敷かれ、その上にヤシ殻の繊維でできた柔らかい層が乗る。そこに水を撒いて湿らせて使うという。
「人工芝なのに天然芝のよう。少し打球の勢いがなくなる感じはしたが、一定で来るので守りやすくなった」(上川畑大悟)
「めちゃくちゃ柔らかい感じです。打球がとにかく死ぬんで」(源田壮亮)
使用感は概ね好評のようだ。これまでエスコンの内野は守りにくいと言われてきた。チームのエラー数が減るだろうか。そこにも期待したい。