
a子が3月2日にワンマンツアー『a子 LIVE TOUR 2025 "LOVE PROPHET"』東京公演をEX THEATER ROPPONGIにて開催した。1⽉25⽇に⼼斎橋BIGCATにて行われた大阪公演と合わせて、自身最大規模となった同ツアー。その間には台湾・台中にて大型野外フェス『浮現祭 EMERGE FEST 2025』に出演しており、万全の仕上がりとなるであろう本公演には大きな期待が寄せられていたようだ。
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会場にはa子のシグネチャーカラーである赤色を思い思いの形でコーディネートに取り入れたオーディエンスが散見され、どことなく緊張感を漂わせながら開演を待っていた。ステージの後方には、赤い花が咲いた樹木が屹立。さらにa子が立つであろうマイク周辺には白く咲き誇る草花が配置されており、シンプルなライブハウス公演に留まらないスペシャルな一夜を予感させる。
開演時刻を迎え客電が落ちると、青白く照らされたステージにa子が率いるクリエイティブチーム・londog所属のバンドメンバーたちが登場。力強いハウスのビートが再生され、それが次第にバンドのグルーヴに変化していく中で、ゆっくりとa子がステージ中央に向かう。一曲目に披露されたのは、1月15日に配信リリースされたシングル「朝が近い夜」だ。フロアライクなサウンドと生演奏のうねりを融合させ、彼女のトレードマークであるウィスパーボイスを主軸にしながら、時に地声での歌唱で感情を露わにする。
冒頭セクションでは、そんな「朝が近い夜」に象徴されるダンサブルな最新モードが、「LAZY」「racy」「暴く春」といった四つ打ちのナンバーによってプレゼンテーションされた。疾走感あふれる「LAZY」はギターロック的なアンサンブルでかき鳴らされるが、「朝が近い夜」で作り上げた軽やかなサウンドメイクを踏襲していて暑苦しさがない。一方で「racy」は「朝が近い夜」との差別化を図るかのようにテンポを落とした艶やかなアレンジで披露され、ツインギターによるソロプレイの掛け合いも新鮮な印象を抱かせてくれた。
「生まれ変わったらアリアナ・グランデの犬になりたかったんやけど、最近はもう一度自分になってもええかなと思うようになって。そんな感じで作った曲です」と語り披露されたのは、温かな音色に包まれる「good morning」。a子はハンドマイクでステージ左右を往来する。セットリストはダンスフロアを抜け出してa子の内面へと向かい、オーディエンスはその自己開示に応えるようにゆるやかに身体を揺らす。
じっくりと歌声に耳を傾けていて改めて実感させられたのは、音響設計の巧みさである。a子の囁きは音源同様に繊細さを保ったまま発せられているが、しかしバンドの演奏に一切埋もれることなく会場全体に届いており、ライブならではのダイナミックさと耳元に迫る親密さを両立させる。ライブでの音作りはエンジニアを交えて試行錯誤したそうだが、そのクオリティは数々の現場を経て確かなレベルまで高まったと言えるのではないだろうか。
Photo by Goku Noguchi
ライブ中盤には、未リリースの新曲をプレイ。掴みやすい楽曲構成とメロディがポジティブな光を放つ8ビートのロックチューンで、今後のライブでハイライトとなるポテンシャルを感じさせてくれた。新たなアンセムの誕生に、フロアからは惜しみない拍手が送られる。その流れを引き継いでバンド感の強い楽曲が続く。「シニスター」ではスラップで激しく主張するガクウスイ(Ba)にメンバー全員が視線を送っていたのが印象的だった。愛嬌あふれるポップロックナンバー「miss u」では、わずかにチャンネルをひねることでその個性をキュートにもダークにもアウトプットできる巧みな表現力を実感させられる。
Photo by Goku Noguchi
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代表曲「あたしの全部を愛せない」で大きなカタルシスを迎え、一息ついたa子。「実は今日、ゲストがいらっしゃるんですよ」と招き入れたのは、これまでレコーディングでタッグを組んできたバイオリニストの斎藤ネコだ。「大尊敬している先輩」だという斎藤を横目に見遣りながら演奏されたのはオリエンタルな「愛はいつも」。誤解を恐れずに言えば、それまでの緻密に整理された音響と演奏が、斎藤が加わったことで大胆に破壊されたようだった。幽玄でありながらスリリングなその音色に当てられるように、a子とバンドメンバーの熱も高まっていく。「samurai」ではハンドクラップが巻き起こり会場の一体感はピークに。本編ラストの「ときめき」まで、斎藤との化学反応は連鎖し続けた。
Photo by Goku Noguchi
アンコールに応え再登場したa子は、「つまらん」を2本のアコースティックギターをフィーチャーしたセンチメンタルなアレンジで披露し、またしても新たな表情を覗かせる。活動初期からの楽曲「CHAOS」では、ステージ上手からImu Sam(S.A.R.)がふらりと現れ(後のa子曰く「急に不審者が来たかと思ったやろ?」)、グルーヴィーなラップでフロアを沸かせる。インディーズ時代から制作やライブをともにしてきた仲間と舞台上で再会しハイタッチするというリラックスした流動性が、londogによるアーティスティックでありながらポップなクリエイティブを実現させた推進力そのものなのかもしれない。最後に地声とウィスパーを行き来する「ボーダーライン」を情緒を込めて歌い上げたa子は、メンバーとぎこちなく手を繋ぎカーテンコール。フロアからの歓声を浴びながらステージを後にしたのだった。
ブレない「らしさ」をその歌声と佇まいに湛えながら、多彩な楽曲とゲストとの共演によって異なる魅力を提示し続けたa子。その姿は、根を張るかのように揺らがない木と、ステージ照明によって色を変える白い花に重なって見えた。この日発表された通り、10月には『a子 LIVE TOUR 2025 "Odyssey"』を開催。10月19日の大阪・なんばhatch公演、10月24日の東京・Zepp Diver City(TOKYO)公演と、これまで以上のスケールで届けられるライブに期待が高まる。
Photo by Goku Noguchi
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a子 LIVE TOUR 2025 ”LOVE PROPHET”
2025年3⽉2⽇(⽇)@東京・EX THEATER ROPPONGI
バンドメンバー:中村エイジ(Key)、白川詢(Gt)、中松文吾(Gt)、臼井 岳(Ba)、満陽(Dr)
ゲスト:斎藤ネコ(Violin)、Imu Sam from S.A.R.
M-1 朝が近い夜
M-2 LAZY
M-3 racy
M-4 暴く春
M-5 good morning
M-6 trank
M-7 As I landed on Mars
M-8 bye
M-9 新曲
M-10 惑星
M-11 シニスター
M-12 miss u
M-13あたしの全部を愛せない
M-14 愛はいつも
M-15 太陽
M-16 samurai
M-17 ときめき
【ENCORE】
EN-1つまらん(アコースティックVer)
EN-2 CHAOS
EN-3 ボーダーライン