――北大路さんと藤岡さんは、大スターを父親に持たれているということで境遇が同じですよね。

北大路:でも、よく考えてみると、世の中に生きている人はみんな二世なんですよ。たまたま俳優という職業であるがゆえに言われるんだけど、かつてはそれで悩んだことがあります。小さい頃はメンコに親父が出てきて、それで負けると「お前の親父弱いな!」って言われたのが悔しくて、油を塗って重くしたりしてね(笑)。でも、そうやって揶揄してきた子だってお父さんがいるじゃないかという思いが、いつからか生まれてきて、素直に二世としてそれぞれのご家族があるんだと思えるようになったんですよ。あなただってそうでしょ?

藤岡:二世がゆえの葛藤というのはよく聞きますが、僕はあまりそれで苦しんだりしていないんです。最近は、父と同じヒーローものの作品をやらせてもらうことが多いのですが、むしろ自分にとってプラスに捉えていますね。

北大路:えらいなあ。それはすごい捉え方だよ。

藤岡:現場の皆さんとのご縁もそうですし、今置かれている状況がありがたいなと思って、こういう父を持ったことに感謝していますね。

北大路:自分の生まれた境遇に対して素直に感謝できるというのは、本当にすごいと思う。大切にその思いを持って、これからいろんなことに挑戦してほしいね。私が20歳くらいの時はまだまだそこまでの心境にいっていなかったので、今聞いてちょっとびっくりしましたよ。

京都での撮影の日々が宝物に

――今回の作品のラストに、清左衛門が「得難い宝をもらった」と言うセリフがありますが、皆さんが今回の撮影で得た宝は何でしょうか?

藤岡:僕はこの作品に出会えたことですね。本当に、皆さんいい方なんです!(山下智彦)監督もすごい方で、衣装合わせの時に緊迫感と重圧があったんですけど、いざ話してみたら「気楽でいいんだよ」と言っていただいて、ガチゴチに固まっていた体がぐわっとほぐれたんです。その後に北大路さんにご挨拶に行かせてもらって、さらにほぐれました。そういった皆さんとの出会いもそうですし、撮影での時間とこの作品の全部が、僕にとって代えがたい宝物です。

大友:私は、京都の撮影所のスタッフの皆さん、大先輩の皆さんと一つの作品を作れたことだと思います。本番前に段取りがなかったり、スケジュール表の書き方が違ったり、スタジオの中で外のロケのシーンを撮ったり、現代劇と全然雰囲気が違うんです。その中で、各スタッフの皆さんが、言われたからやるのではなくて、どうしたらこのシーンのこのカットが生きてくるのかというのをディスカッションしながら撮影していく様子を、中に入って体感できたのは、すごく貴重な経験だったと思います。こうやってより良い作品ができるということを自分の中に留めておいて、私もこれからの皆さんに伝えていけるようにもっと成長したいなと思います。

北大路:いやもう、2人の言葉を聞いて感動してますよ。私にとっても、本当にスタッフの皆さん、共演者の皆さんに支えられて、第8作までやってきたことで、2人との出会いが生まれた。そんな2人からこんな言葉を聞けるとは想像していなかったので、すごいなあと思ってね。こうやって一つの仕事を共に無事撮り上げることができたことに非常に感謝するし、私にとっても大きな宝だと思います。