大正製薬は2月25日、睡眠に関する調査結果を発表した。調査は2025年1月6日、全国の20代以上の男女1000人を対象にインターネットで行われた。

  • 朝、すっきりと起きるために、どんな対策をしていますか?

男女1000人を対象に「朝、すっきりと起きるために、どんな対策をしているか」を調査したところ、上位5つは、「部屋や寝具を快適な温度にする(249人)」、「規則正しい生活を送る(235人)」、「寝る直前に食べないなど、食事の時間に気を付ける(182人)」、「部屋を快適な湿度にする(159人)」、「(適度な)運動をする(144人)」、「朝起きたら朝日を浴びる(121人)」という結果になった。

日本睡眠学会専門医で日本医師会認定産業医の白濱龍太郎氏によると、睡眠の質を上げるためには、環境づくり、生活習慣、食事などを組み合わせて対策することが重要だという。白濱先生に、睡眠の質を上げる方法とその理由を聞いた。

日中の過ごし方で意識すべきこと

朝日を浴びると体が活動的になる。光の刺激が脳に伝わることで、セロトニンやナイアシン、トリプトファンといったホルモンの分泌が促され、体内時計がリセットされるからだという。日光は10時頃までに浴びると効果的とされ、夏場は5分ほど、それ以外の季節は30分ほど浴びることが効果的だという。

入浴は寝る1~2時間前までに38~40℃のぬるま湯に10分ほど浸かると、体温を程よく上昇させることができ、寝つきが良くなるとのこと。適切なタイミングと時間で入浴することで、入眠後、最初の90分の眠りを深くしてくれる効果があるという。

また、1日10分でも運動習慣を作ることは、適度な疲労感につながる。メラトニンの材料であるセロトニンの分泌が増えることで、夜にメラトニンがしっかりと分泌されて睡眠の質の向上につながるとのこと。特にウォーキングや踏み台昇降などが推奨されている。

睡眠の質の向上に必要な栄養

食事のタイミングによって摂取すべき食材が異なるため、朝・昼・夜の食事内容を意識することが重要だという。

夜になるとセロトニンというホルモンがメラトニンに変わり、このホルモンが眠気を起こし、スムーズな入眠につながる。夜、メラトニンがしっかり分泌されるようにするため、朝食にはセロトニンの材料となる必須アミノ酸のトリプトファンを豊富に含む食品を取り入れるのが良いとされる。トリプトファンが豊富な食品としては、納豆やヨーグルトなどの発酵食品が挙げられる。また、セロトニンを合成するビタミンB6を含むいわしや鮭などもおすすめとのこと。

昼食では、昼食では、血糖値の急激な上昇を防ぐために、炭水化物をやや少なめにし、食物繊維を多く含む野菜やタンパク質をバランスよく摂ることが推奨され最初に野菜など食物繊維を摂ることで血糖値の上昇を緩やかにしてくれ、タンパク質にはトリプトファンが含まれるため、良質な睡眠を促してくれる効果が期待できる。丼ものよりも定食を選ぶと、炭水化物(ごはん)の量も調整しやすいという。

夜は、お酢やカプサイシン、GABA、タウリンなどを摂ることが推奨される。お酢に含まれる酢酸には胃腸での消化吸収を穏やかにする作用があり、血糖値の上昇を抑える効果があるとされる。唐辛子やキムチなどに含まれるカプサイシンも、寝る前に体温を上げてくれるのでおすすめだという。

タコやイカなどの魚介類に多く含まれるタウリンは、深部体温を低下させる作用や睡眠を調整する因子(CHRM1、CHRM3)を増加させる効果があるとされ、安定した睡眠を助けてくれる可能性があるとのこと。また、魚の場合は皮や軟骨などに多く含まれるグリシンも、中枢神経系で抑制性神経伝達物質として働き、体温の調整や睡眠の質の向上に関与することが明らかになっている。魚を皮ごと食べることで、タウリンとグリシンを同時に摂取でき、神経疲労、肉体疲労の両方にアプローチできる。

適切な水分補給量

人は寝ている間にコップ1杯分の汗をかくといわれている。季節や体調によって差はあるが、寝る30分~1時間前に200~250mlの水分を摂取することが推奨されるという。

水分を摂ることで血栓予防が期待でき、副交感神経が優位になることでリラックスし、睡眠の質が向上するとされている。このとき、利尿作用のある飲み物は避け、白湯など冷たくないものが良いという。また、お酒には筋肉を緩ませる作用があり、寝る直前の飲酒は、いびきや無呼吸の原因になるので、控えるのが望ましいとのこと。ただし、寝るまでに数時間ある晩御飯などのタイミングで適量飲むことはリラックス効果が期待できる。

睡眠に適した環境づくり

電気毛布を使用して布団を温める場合、就寝後約30分~1時間で最初の深いノンレム睡眠が訪れることを考慮し、タイマーを2時間程度で切れるように設定するのが良いとされる。

他にも、血行を良くする作用のある繊維を使ったパジャマの着用や、放熱がきちんとされるために靴下を履かないことも睡眠を助ける要素となる。

安全でスムーズな寝起きのためにできること

照明をつけることで脳が先に光を感知し、目が醒める。ただし、寒い朝に急に布団から出ると血管が急激に収縮し、ヒートショックを起こすリスクがあるため、タイマーで部屋を暖めておくことが推奨される。乾燥しやすい冬は湿度管理も重要であり、室温は18~23℃、湿度は40~60%が理想的とされる。

照明については、明るすぎると交感神経が優位になり、メラトニンの生成を抑えてしまうため、豆電球の常夜灯を点けておいたり、足元を照らすダウンライトのような光量が適しているとのこと。

音については、無音が落ち着く人もいれば、むしろ無音だといろいろな音が気になってしまうという場合もあるため、心が落ち着く音楽を、ボリュームを絞って流すことができる。実際に、飛行機に乗っている時にジェット機のエンジン音が気にならないように機内BGMを導入する航空会社もあるという。

睡眠不足は、日中の集中力や判断力の低下につながり、長期化すると認知症リスクが上がるといわれている。また、脳脊髄液の流れを促進することで脳の回復も担うため、睡眠と脳脊髄液には密接な関係がある。睡眠不足の状態だと脳脊髄液の流れが悪くなることで老廃物が蓄積しやすくなり、脳の機能や健康に悪影響を与える可能性も。「睡眠の質を向上させてすっきりと起きることを習慣にして、季節の変り目を健康に過ごしましょう」と白濱氏は述べている。