テレビ大分開局55周年記念として制作される時代劇ドラマ『はぐれ鴉』(7月放送予定)。原作は第25回大藪春彦賞を受賞した赤神諒氏の同名小説で、江戸時代の大分県・竹田を舞台に繰り広げられる時代ミステリーを、『鬼平犯科帳』『剣客商売』『大奥』シリーズなどを手がける山下智彦監督が映像化する。

復讐のため、14年ぶりに故郷・竹田に戻ってきた山川才次郎を演じるのは、時代劇初挑戦となる神尾楓珠。才次郎の仇敵で、周囲から“はぐれ鴉”と呼ばれる変わり者・玉田巧佐衛門を椎名桔平、巧佐衛門の娘・英里を山本千尋が務める。撮影は1月から2月にかけて進められ、大分県内でロケを行った後、時代劇のプロが集う京都の撮影所に拠点を移した。

マイナビニュースでは、この京都での撮影に密着。才次郎が巧佐衛門の屋敷に乗り込み、2人が対峙(たいじ)するという重要なシーンの模様とともに、神尾、椎名、山本が現場の様子や役柄への思い、舞台となった大分について語ったインタビューをお届けする。

  • 『はぐれ鴉』に主演する神尾楓珠

    『はぐれ鴉』に主演する神尾楓珠

三者三様・難しい演技を求められる重要なシーンを撮影

この日撮影が行われたのは、巧佐衛門と英里が暮らす屋敷のセット。巧佐衛門は竹田藩の城代という高位にありながらみすぼらしい屋敷で暮らしており、撮影所には父娘が暮らす家屋や畑などが再現された。

今の父娘の質素な生活ぶりが一目でわかる庭先で繰り広げられたのが、畑仕事をしていた巧佐衛門の前に才次郎が現れるという、ドラマでも山場のひとつとなるシーン。才次郎はついに自身の正体を明かすも、巧佐衛門はその場でひざまずき微動だにしない。そんな巧佐衛門に才次郎は刃を突き付けるが…。

撮影後のインタビューで、「(椎名に)飲まれないようにしようっていうのは常々思ってやっています」と役への心構えを明かした神尾。リハーサルでは、殺陣師が神尾に刀の構え方や刀をおろす位置などを細かく指導した。

神尾は、複雑な思いが交錯する中、抜刀し、激しいセリフで宿敵に迫る才次郎を熱演。一方、椎名はじっと動かず静の演技で受け止める。その佇まいはまさに巧佐衛門そのものだ。

そんな2人の間に入る山本も、決死の覚悟を決める英里を涙を交えて表現。のちに山本自身、この場面は「個人的にも一番難しくなる、課題のシーンだと思っていました」と語っていた。

京都でも指折りの名監督とスタッフが集結

撮影所のある京都市内は、10℃を下回る気温。時折強風が吹きすさび、屋外のセットには砂埃が舞い上がる。そんな現場で動くスタッフは、椎名も「京都でも指折りの名監督」という山下智彦監督を筆頭に、総勢約40人。山下監督は、自らセット中を駆け巡りながら、演者やスタッフに次々と指示を出していく。そして本番直前までセリフが変更されたり、殺陣師と動きを相談したりとブラッシュアップも常に行われ、その都度、熟練のスタッフたちが素早く応えていった。

こうして半日以上をかけ1シーンを撮影。対峙する才次郎と巧佐衛門、ただならぬ雰囲気を察して駆けつける英里という三者の迫真の演技が、何度もカメラ位置を変えながら丁寧に、余すところなく映像に収められ、日没ギリギリまで熱のこもった撮影が続けられた。

この日の撮影を終えた3人が、インタビューに応じた――。