【小田原 観光スポットレポ】飯泉 八幡神社 - 酒匂川を見守る鎮守神

小田原巡礼街道を進んだ先、飯泉にある八幡神社(はちまんじんじゃ)。その立地は名刹・勝福寺の隣……というよりも、ほぼお寺の境内にあるかのように見えることが特徴の神社です。実際に神仏習合の時代は一体だったのですが、現代において神社と仏閣は完全に区別されるため、記事においても分けてご紹介いたします。

勝福寺の記事は下記リンクよりご覧ください。【小田原 観光スポットレポ】飯泉山 勝福寺(飯泉観音) - 奈良時代より続く古刹

神社のスタンダード・八幡神社

画像出典:湘南人

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日本には神社がコンビニやスーパーよりも数多く存在します。その中でも特筆して多くの信仰を集めるのが八幡神(はちまんしん・やはたのかみ)を祀る神社であり、飯泉の八幡神社もその中のひとつです。なお、神社によって八幡神社・八幡宮・若宮神社など、名称はいくつかに分かれます。

八幡神信仰の神社は日本全国に約7,800社が存在し、神社の総数が86,000社ほどですから、日本の全神社数の1割ほどを占めています。もちろん湘南(相模湾沿岸)だけでも多くの八幡信仰の神社が存在し、八幡神社は神社におけるスタンダード中のスタンダードといえるでしょう。

また、当記事の八幡神社は正式名称として「八幡神社」であり「飯泉」は頭に付きませんが、他と区別するためにこのように呼ばれる事があります。他には番地を取って「八幡神社(飯泉1164)」と呼称される事もあります。

古代の天皇を神格化した神を祀る

画像出典:湘南人

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八幡神は「誉田別命(ほんだわけのみこと)」とも言い、これは第15代応神天皇が神格化された姿です。軍神とされた一方、学問の神でもあり、神仏習合の時代には菩薩であるともされました。また、応神天皇は歴史・考古学的に実在を確認できる最古の天皇だとする説があります(第10代崇神天皇が実在する最古の天皇だとする説もあります)。

造営は江戸時代初期

画像出典:湘南人

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飯泉の八幡神社が造営されたのは、記録によれば1623年(元和9年)の事とされています。時代区分でいえば江戸時代初期にあたり、3代目将軍徳川家光の天下が始まった年です。この頃、日本全国に八幡神社が広がっていきました。砕いて言えば空前絶後の神社建設ブームで、飯泉の八幡神社もその流れに沿って造営されているといえます。

酒匂川の歴史と共に

画像出典:湘南人

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神社の役割のひとつはその地に平穏をもたらすことです。飯泉には街道と山道が交わり宿場があり、交通の要衝でした(今も宿場でこそありませんが、往来の激しい場所です)。

それを形成したのが酒匂川ですが、同時に氾濫によりたびたび破滅的な被害をもたらす川でした。そのため飯泉の八幡神社は地元の強い要望により、災害が起こらないようにと造営された経緯を持っています。

ちなみに酒匂川は江戸時代から近代にいたるまで幾度も治水工事が進められましたが、ようやく災害が収まったといえるのは現代に入ってから。具体的には1978年(昭和53年)に三保ダムが完成してからですが、その後も2010年台風9号(平成22年)や2019年東日本台風(令和元年)に土砂流入の災害が起きています。

このように現代技術をもってしても災害の恐れが強い場所ですから、神頼みが今より大きな意味をもっていた過去の世界で、八幡神社にかけられた期待は並々ならぬものがあったといえるでしょう。

安寧が揺れる現代こそ行ってみたい

飯泉の道祖神。八幡神社ではありませんが、目の前にあります。

画像出典:湘南人

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情報があふれ、物事の価値基準が不確かな現代は、神にすがればなんとかなると純朴に信仰できる時代ではありません。ですが、そんな今だからこそ過去の人々の想い・考えに触れることで開ける道もあるでしょう。その場所としても神社は大切な意味を持っています。特に飯泉の八幡神社はお寺と隣り合わせになっており、それ自体がタイムスリップ的な空気を醸成している場所です。異なる時代の空気に触れるにはうってつけといえます。

祭礼

画像出典:湘南人

こちらは飯泉八幡神社の主な年間行事です。

12月30日:大祓(おおはらい)11月23日:新嘗祭(にいなめさい)【勤労感謝祭(きんろうかんしゃさい)】10月第1日曜日:例祭(れいさい)【秋季例大祭(しゅうきれいたいさい)】

まとめ

飯泉の八幡神社は日本で最も多い八幡神を信仰する神社のひとつです。お寺と一体になったような立地が永い時の流れを感じられ、その歴史に触れてみると酒匂川を中心にした災害の記憶とも結びつく、土地に密着した施設だといえます。神社仏閣が好きな方も、そうでない方も、折に触れて訪れてみてはいかでしょうか。

 

飯泉 八幡神社

開門時間:

9:00~17:00(八幡神社自体は開門・閉門時間を公表していませんが、隣接して敷地を事実上共有する勝福寺がこの時間で開門・閉門します)

休務日:

なし(社務所はありません。御札やご祈祷のお問い合わせは宗我神社へどうぞ)

アクセス

公共交通機関:JR小田原駅東口6番バス乗り場より「新松田・下曽我行き」へ乗車後、「飯泉観音前」にて下車。

自動車:国道255号線の桑原交差点より国道711号線へ入ってそのまま直進。※小田原方面からは国道255号線の飯泉交差点より巡礼街道へ入る伝統的なルートもありますが、軽自動車でもすれ違いに難儀するほど細い生活道路に入るため、2輪車以外は711号線の利用を推奨します。2輪車であっても騒音の大きい場合は711号線の利用を推奨します。

※隣接する勝福寺の境内から門を出ることなく移動できるため、鳥居をくぐって出入りしたいと考えている方はご注意ください。

住所:〒250-0863 神奈川県小田原飯泉1164駐車場あり(無料)普通車10台ほど問い合わせ先:0465-42-1282(本務社の宗我神社)045-761-6387(神奈川県神社庁)