第50期棋王戦コナミグループ杯五番勝負が2月2日に開幕しました。挑戦者になったのは、今期好調の増田康宏八段。今の心境、挑戦できた要因、うわさの彼女についても語っていただきました。

※2025年2月3日に発売された、『将棋世界2025年3月号』(発行=日本将棋連盟、販売=マイナビ出版)より、一部を抜粋してお送りします。

  • 『将棋世界2025年3月号』より 【写真】将棋世界編集部

    【写真】将棋世界編集部

(以下抜粋)

和服は自分で作りました(笑)

棋王戦の挑戦権を獲得して10日がたちましたが、いまの心境はいかがですか?

「うれしい気持ちもかなりあるんですけど、藤井聡太棋王が待ち構えている番勝負は厳しい戦いになります。あと他の棋戦もかなり重要な局面になってきています。A級順位戦はリーグ終盤で佳境ですし、叡王戦は本戦初戦で藤井さんと顔を合わせるので棋王戦の前から勝負です。浮足立ったり、逆に落ち着いたりもありません。普段と変わらないですね」

挑戦権を獲得されてから、師匠の森下卓九段と何かお話はされましたか。

「連絡はきてないですね。日本将棋連盟の理事として五番勝負の第2、3局に来られるようですけど。和服を作っていただけるかと期待したんですけど、自分で作りました(笑)」

(笑)和服は開幕戦に間に合いそうですか?

「12月24日に白瀧呉服店に伺ったので大丈夫です。年内にいけば2月頭には間に合うらしかったので」

何着ぐらい作ったのですか。

「羽織、着物、袴で1セットとして、2セット購入しました。入れ替えれば4パターンぐらい作れるみたいです」

なぜ挑戦できたのか

今期の棋王戦では挑戦者決定トーナメントで7連勝しました。挑戦権を獲得できた要因はどこにあったと思いますか?

「それが難しくて、自分でもよくわかっていないんです。中・終盤で致命的なミスが少なかったのが勝因ですかね」

印象に残っている対局はありますか?

「3回戦の伊藤匠叡王戦です。最後、自分が寄せ損なって持将棋が濃厚でした。そこで強引に寄せにいく手もあったんですけど、もう1局やろうという気持ちになって自重したのが大きかった。それで相手が寄せにきてつながらなくて勝つことができました。以前の自分なら無理に寄せにいって負けていたと思います」

以前と違って、もう1局でもいいやという気持ちになれたのはなぜですか?

「以前は寄せ損なった時点で感情的になるというか、すぐに取り返そうとしてミスを重ねることが多かったんですけど、それが減りました。その時点で最善の選択ができるようになったことで、間違いなく勝率が上がりましたね」

先手番だと矢倉を多用されていたようですが、その理由は?

「自分がここ5年くらい矢倉をやっていなかったので相手の意表を突けるのと、矢倉は他の戦型に比べて細部の研究がそれほど進んでいないので、あまり研究将棋にならないからです」

増田さんがこの5年ぐらい、矢倉をあまり指さなかった理由は?

「基本的に他の戦型で勝てていましたし、相掛かりと角換わりのほうが優秀だと思っていたこともあります。ただ最近、研究がかなり進んできて、特に角換わりは誰がやっても同じ局面になっちゃうので使う必要性がわからなくなりましたね。相掛かりも先手の5八玉型とか自分と似たような将棋を指す人も増えましたし」

彼女に助けられている

いまの増田さんの趣味は何ですか? 以前はピアノやNBAの動向を追うこととおっしゃっていましたけど。

「いまは彼女がいるので、趣味に費やす時間があまり取れなくなりましたね」

彼女の存在は将棋にプラスになりますか?

「僕はプラスだと思いますね。人によると思うんですけど、ずっと1人で家にこもって将棋の勉強をしていても、ちょっとあれなので」

メンタルが変になってきませんか。

「よっぽど将棋が好きでも変になってくるし、あと進歩しなくなっていくと思う。だから週1回でも遊びにいくのは精神的に結構いいのかなと思っています。僕がいきたい場所ってあんまりないんですよ。相手がいきたいところに一緒に出掛けて僕も楽しいって感じですね。ずっと家にこもって研究していて人と会うことが負担になっちゃっても困ります。対局にいくことがストレスになったら駄目なので、だいぶ助けられてます」

彼女ができてからタイトル戦挑戦が決まったというのはいいですね。逆の人はいるかもしれないけど(笑)。

「そうですね。自分の時間はより短くなったので、その中でいかに工夫するかも考えるようになりました。いままでは時間がありすぎるとグダっちゃうこともあったので、それがなくなったこともよい影響かなと思います」

彼女さんは将棋がわかるんですか?

「将棋はわからないんですけど、結果はXとかでわかるじゃないですか。さすがにモバイル中継は見ていませんけど(笑)。あ、でも順位戦がYouTubeで中継されると見てるみたいで、評価値のパーセンテージでどっちが有利とか不利とかはわかるみたいですね。そういえば『将棋世界』も読んでますよ」

ええっ!

「数ヵ月前に『私の戦い方』でインタビューが載ったときに買って読んでくれたらしくて。彼女ができて喧嘩ばっかりです、みたいな発言を見られちゃって怒られました(笑)」

ははは(笑)。このインタビューも読んでもらえるのかな。

「多分、表紙に出れば買って読むと思いますね」

最近、喧嘩のほうは大丈夫ですか。

「最近はしなくなりました」

彼女さん、さすがに番勝負は見にこないんですかね。

「いやー、見られてると思うとちょっと……。親でもあんまりですから。なのでABEMAとかで見て応援してくれると思います」

(第50期棋王戦コナミグループ杯挑戦者 増田康宏八段「いまの自分がいちばん強い」/【聞き手】大川慎太郎)

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