“フェイク画像”は100年前から存在していた!? ジャーナリスト堀潤が解説「100年近くフェイク画像が“本物の写真”として扱われ…」
山崎怜奈(れなち)がパーソナリティをつとめるTOKYO FMのラジオ番組「山崎怜奈の誰かに話したかったこと。(ダレハナ)」(毎週月曜~木曜13:00~14:55)。2月12日(水)の放送は、ジャーナリストの堀潤(ほり・じゅん)さんが登場! 2月7日(金)に発売した書籍「災害とデマ」(集英社インターナショナル)について伺いました。

(左から)パーソナリティの山崎怜奈、堀潤さん

◆フェイク画像は100年前からあった!?

れなち:「災害とデマ」は、数々の災害現場に赴いて現地の方に取材を重ねてきた堀さんならではの1冊となっていますが、記者の仕事をなさって何年になりますか?

堀:(NHKに入局したのが)2001年なので、気づけば20年以上ですね。そのあいだにも東日本大震災など(大規模災害)だけでなく、名前が刻まれなくても深刻な被害を受けた災害はたくさんあって、本のなかでは“名もなき災害”と書いていますが、そのたびにデマであったり、情報が錯綜したり、伝えられないことで苦労を強いられる現場はたくさんあって……。メディア環境が大きく変わったので、もう今は大変ですよね。

れなち:当時はインターネットもまだ……。

堀:出始めた頃ですね。ただ、今は情報空間の取り扱いが日に日に難しくなっている一方で、みんながフェイクを好んで見ている。これって、調べてみると本質的には100年前の関東大震災の頃から変わっていないんです。

れなち:そうなんですね。

堀:実は、関東大震災のときにフェイク画像が出回っていたことも今回の取材のなかで明らかになりました。

れなち:当時はどんな媒体で出回ったんですか?

堀:“絵ハガキ”なんです。

れなち:絵ハガキ!?

堀:元は新聞の写真で、3万8,000人が蒸し焼きになった悲しい現場があるんですけど、そこの写真を報知新聞が一面で載せたところ、当時の政府が「この写真は人心を惑わすから回収せよ」と命令を出しました。

ところが、市中には「やばい写真が出回ったの見た?」「見てない、見たいよね!」っていう大衆の欲望が渦巻きまして、そこに目をつけた絵ハガキ業者が“これは売れる! ただ写真はない……だったら”と、別の写真に偽の説明を加えて売り捌いた。そうしたら飛ぶように売れて、たちまち商売になってしまった。

最終的には、中央気象台(現:気象庁)の公式資料に採用されてしまったがために、100年近くフェイク画像が本物の写真として扱われ、それを元共同通信・写真部の沼田清さんが数年前に明らかにしたことで、100年越しのファクトチェックがおこなわれたんです。

れなち:それまで気づかれていなかったのですか?

堀:そうなんです。ですから、“怪しい情報”“人々がハッとするようなもの”“見てみたいもの”ってたちまち出回り、それがお金に変わるとわかるとみんなが飛びつく。これって、今と本質的には変わってないんです。

◆“感動”“恐怖”を覚えたときは要注意

れなち:よく「リテラシーを高めよう!」って言うじゃないですか。ニュースをただ受け取って、“このニュースは本当?”って思わないで生きていると、思わぬところにトラップがある。怖いですよね。

堀:(情報リテラシーは)防災と同じで、本来なら避難訓練が定期的に必要なぐらい大事なことだと思います。ちなみに僕は、大学時代プロパガンダの専門で“いかに心の内側に偏った情報を吹き込むか”その手法を編み出す側の研究をしていたんですが、固く閉ざされた心のなかに侵入しようとしたとき、最初にするノックってどんな情報だと思いますか?

れなち:わかりやすいスローガンだったり、色使いだったり、マークとかですか?

堀:一番は“恐怖”か“感動”です。“おっかないな”と感じたときに心の扉が開いて、そこにスッと入る。もしくは、感動したときも心の扉が開いているので、そこに植え付けていくんですね。

だから皆さんも、情報に触れたときに「すごい!」とか「うわ〜」って思ったときは、一度“誰かが入ろうとしているかも”って踏みとどまってもらうといいんじゃないかな。感動か恐怖を覚えたら、それはフェイクかもしれません。

----------------------------------------------------

<番組概要>

番組名:山崎怜奈の誰かに話したかったこと。

放送日時:毎週月~木曜 13:00~14:55

パーソナリティ:山崎怜奈

番組Webサイト:https://www.tfm.co.jp/darehana/