
鎌倉市でいちご狩りができるスポットがあるのをご存知でしょうか。
湘南モノレール湘南深沢駅から徒歩約13分のところにある鎌倉観光いちご園は、駅近というアクセスの良さに加え、鎌倉市内でも数少ないいちご狩りができる人気のスポットです。

画像出典:湘南人
5棟あるビニールハウスのうち、今は3棟で体験が可能。その中に足を踏み入れると、甘い香りが広がり、真っ赤ないちごがたわわに実っています。いただけるいちごは紅ほっぺと、オリジナルブランドである紅静(べにしずか)の2種類です。
さらに、その大きさは見たことがないような手のひらサイズも。いちごを頬張るというよりも、かぶりつくという表現がもはや正しいと実際に体験すると感じるはずです。

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いちご園の二代目園主、郷原 啓介(ごうはら けいすけ)さん(以下、郷原さん)は、「いちご園をただの体験スポットではなく、人と社会が繋がれる場所にしていきたい」と話します。
いちご狩り体験だけではなく、繋がれる場所とはどういうことなのでしょうか。その謎を紐解いていきます。
オリジナルブランド「紅静」ができるまで
紅静の名は、鎌倉に縁のある歴史上の人物「静御前」に由来し、オリジナルブランドとして、長年愛されてきました。
甘さも紅ほっぺとは全く異なる濃さを持ち、口に入れるとその甘さにきっと驚くはず。ではどのように紅静というブランドを確立させたのでしょうか。
初代はさまざまないちごの品種の苗で試行錯誤を繰り返し、その1つに「紅ほっぺ」という品種を使用していました。それに突然変異が起こり、想像を超える立派な株が完成したのです。この株を残すことに成功し、初代は丁寧に大事に増やしていきました。
商標については「来てくださるお客様がこの味をわかってくれるから、わざわざ商標は取らなくてもいい」と初代が話すのを、郷原さんはよく聞いていました。しかし、ある取材を受けた際に、大御所の芸能人が紅静を評価し、「絶対商標を取ってください。それだけの価値がある」と背中を押されます。
そこから郷原さんご自身で申請をし、紅静をオリジナルブランドとして商標登録することに至りました。

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チャレンジャーな父から引き継いだいちご園
鎌倉観光いちご園は、約40年前に初代である郷原さんの父親が始め、2011年に二代目として引き継ぎました。幼心に「継ぐんだろうな」と思っていた郷原さんは、寡黙で職人気質、メディアが苦手な父親の背中を見て育ちます。
初代がいちご園を始めた頃、「いちごは土耕栽培でないと生育が難しい」と言われていましたが、当時では珍しく、今では当たり前になっている高設栽培に挑みます。さらに同じく難しいとされていた水耕栽培にも挑戦した初代は、見事にそれを実現させました。

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郷原さんは、そんな初代について「昔は絶対にできないと言われていたことが、今では常識になっていることが多い。初代は周りがやってないからやらないではなく、やる理由を見つけ、試行錯誤を繰り返し最善を尽くす。新しいことに臆せず挑戦できる人」と話します。
その初代から受け継いだいちご園に関して、「自分の代ではいちご園の在り方を、新たにブラッシュアップしていく計画を立てている」と、未来を見据えていました。
いちご園のポテンシャルを信じ、循環型社会を目指す
その未来とは、いちご園を基点に人と社会を繋げ、循環型社会を作っていくこと。まずはじめに、いちご園があるからみんなが集まる場所にすることに着目します。
地元の友達や身内が揃って集まることが、冠婚葬祭以外にあまりないことに気づいた郷原さん。そこで「いちご狩りのときに会える場」として、いちご園がある限り鎌倉市に来る理由がある場所にしたいと思いつきます。
例えば、冠婚葬祭の後に「また会おうね」となるより、「毎年いちご園で会えてよかったよね」と思えるように。年間スケジュールの恒例行事として組み込んでおけば、ここに来る理由ができます。
次に、モノの再利用をすること。園内には、インテルのサッカーグランドからいただいた人工芝が敷き詰められています。今まで使用した人たちの思い出が詰まった人工芝。そうした思いも大切に掬い上げ、利用することで特別感が生まれ、いちご園に来る理由のひとつになります。

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こうした循環を生むことで、郷原さんは「この場所にいちご園があり、農家だからできることとして、人と人を繋げられる」と話します。
いちご農家以外に不動産業のような事業にも取り組んでいる郷原さん。いちご園の近くにある空き家を欲しいと言っている人に、そこのオーナーさんを紹介したり、市外の友人に草刈りを依頼されたら、地元の農家の人に相談して行ってもらったり。
さらに郷原さんは「いちご農家でありながら、さまざまな人を繋げることができるのは、いちご園にポテンシャルがあるから。そこを基点として人と社会が繋がる可能性を広げていきたい」と笑顔で語ります。
いちご園から未来を創造し、人をつなぐ
次の世代に繋げる活動として、農業体験を子ども向けに開いており、「ここで間違っていけないことは、農業の良いとこ取りにしないこと」と郷原さんは強く訴えます。
「いちごを摘む体験をさせたいだけなら、例えるなら焼肉屋で肉を焼いてるのと同じだと思います。新鮮なものを新鮮なうちに食べるだけでは、農業とは言えません。本当に美味しいのは自分で作って育てたものですよね。
自分が伝えたいことは、収穫した後の地道なつらい作業があり、その経験を知ってもらうこと。
以前、畑で運動会を行ったことがあります。そこでは芋掘り体験をした後のぐじゃぐじゃになった土に試作の堆肥をまき、有機石灰で円を描き、芋のツルを使って土俵を作って相撲をしました。遊んだことで土に酸素が入り、保温されます。
そこにカラーボールを100個埋めて、子どもたちにスコップを持たせ、宝探しゲームをさせました。すると土が掘り起こされ、柔らかい土に変わります。
この経験によって、『自分たちが土に何かしたことで、次に何かを植えるんだ』と興味を持ってくれるのです。こうした関わり方を繋ぐためには、このように誰も興味を持たないであろう工程を知ってもらうという活動も農業の役割だと思います」。
最後に郷原さんは次のようにメッセージを伝えます。「今後もいちご農家をやっていく中で、自分の代で新しく何かを作っていきたい。それは農業というコンテンツを使って、この街の循環の一部になること。自分でやるところはやって、誰かに任せることは任せて、楽しい面白いという感覚を大事にしながら、人と社会を繋ぐ基点にしていきます」。
郷原さんの目標が、ご自身が大切に育てたいちごのように、大きく実ることを期待しています。

画像出典:湘南人
鎌倉観光いちご園
営業時間
土曜日予約制・日曜日10時のみ予約可、11時以降当日受付可※いちごがなくなり次第終了
休園日
月曜日〜金曜日※いちご販売は平日もあるため、詳細は公式ホームページをご確認ください
料金
小学生以上2,500円幼児1,300円(1歳未満無料)※受付開始時間前でもその日の上限人数に達した時点で受付終了
アクセス
湘南モノレール「湘南深沢」駅より徒歩13分住所:〒248-0027 神奈川県鎌倉市笛田2-11TEL:0467-31-5339駐車場:あり