JR東海は1日、大井車両基地で「おつかれさま! ドクターイエロー(T4編成) おそうじ体験イベント」を開催し、その様子を報道関係者らに公開した。「新幹線のお医者さん」として活躍し、1月29日にラストランを迎えた「ドクターイエロー(T4編成)」の「おそうじ体験」などが行われた。

  • 検測走行を終え、引退する「ドクターイエロー(T4編成)」。大井車両基地で「おつかれさま! ドクターイエロー(T4編成) おそうじ体験イベント」が開催された

新幹線電気軌道総合試験車923形0番代、通称「ドクターイエロー」は、約10日に1度、東海道・山陽新幹線の営業線を走行し、電気設備・軌道設備等の状態を確認している。JR東海所属のT4編成は2001年9月から運用開始し、JR西日本所属のT5編成(2005年に登場)と交互に走行して検測を実施。その確かな検測データにより、新幹線の安全・安定輸送を確保してきたという。

黄色い車体に加え、運転時刻を公開していないレアな車両であることから、「見ると幸せになれる新幹線」としても親しまれてきたが、2編成のうちJR東海所属のT4編成が老朽化のため、2025年1月をもって検測走行を終了し、引退することに。1月29日にラストランを迎え、車両の窓に「ありがとうT4」のメッセージを掲げたT4編成が博多駅から東京駅まで走行したと報道された。

JR東海はT4編成の引退に伴うイベント等も企画。1月24日の「安全を守るおしごとを学ぶ! ドクターイエロー(T4編成) 体験乗車イベント」に続き、2月1日に「おつかれさま! ドクターイエロー(T4編成) おそうじ体験イベント」が開催された。「おそうじ体験イベント」は合計約200名を定員として募集を行い、抽選倍率は約115倍だったという。当日は6回に分けてイベントを実施。参加者たちは品川駅に集合した後、専用のバスに乗り、会場の大井車両基地へ移動した。

  • 大井車両基地で「ドクターイエロー(T4編成)」とN700Sが並ぶ

  • 参加者たちが「ドクターイエロー(T4編成)」の近くへ移動。「おそうじ体験」の前に刷毛を使った車体清掃の実演も行われた

  • 参加者向けに「おそうじ体験」で使用する道具も用意された

会場到着後、1回あたり約60名の参加者を3班に分け、新幹線メンテナンス東海(SMT)の担当者による説明と刷毛を使った車体清掃の実演に続いて、参加者たちによる「おそうじ体験」がスタート。7両編成のうち5・6号車の車体側面を掃除することになり、掃除用の道具も用意された。

水鉄砲を使って車体に洗剤をかけ、スポンジで洗剤をなじませた後、ブラシで車体を磨き、水をかけて泡を流していく。親子での参加が多く、こどもたちも「おそうじ体験」を楽しんでいた様子だった。一方で女性同士や、清掃に慣れた様子の男性グループもイベントに参加しており、改めて「ドクターイエロー」が幅広い層から親しまれた車両であることを感じさせた。

  • 親子連れを中心に、幅広い層の参加者たちが「おそうじ体験」を楽しんだ

「おそうじ体験」の終了後、報道関係者らとの囲み取材に応じたJR東海新幹線鉄道事業本部運輸営業部営業課課長の高井総子氏(「高」は「はしごだか」)は、今回のイベントを企画するにあたり、「T4編成を一番近くでお別れする場を設けたい」という強い思いがあったと話す。

「長らくT4編成に慣れ親しんでいただいたお客様に、『ありがとうございます』という感謝の気持ちをお伝えしたい。そのためにも、いかに(車両の)近くでお別れできるかというところに知恵を凝らし、清掃のスタッフ、車両所のスタッフとアイデアを出し合いました」と高井氏。この日のイベントを振り返り、「年齢・性別問わずお越しいただき、小さな手で一生懸命磨き上げている姿もあれば、プロさながらに清掃してくださる方もいて、本当にT4編成が皆様に愛されていたのだと実感できました。大変うれしく、私たちとしても非常に感慨深く思っています」と感想を述べた。

高井氏は引退するT4編成について、「私たちにとっても非常に意味深い車両だったと思います」とコメント。「本来は表舞台に出るような車両でないにもかかわらず、黄色い車体も相まって『幸せを呼ぶ新幹線』という風に慣れ親しんでいただきました。それが広まる中で、『安全にお客様をお運びする裏には保守がある。保守があって初めて成り立つ』ということもあわせて広めることができたのではないかと思います。ドクターイエローT4編成は大きな使命を果たしてくれました」と語った。

  • 囲み取材に応じたJR東海新幹線鉄道事業本部運輸営業部営業課課長の高井総子氏(「高」は「はしごだか」)

引退後の「ドクターイエロー(T4編成)」は廃車となるが、7両編成のうち先頭車両の7号車をリニア・鉄道館で展示することが決まっている。展示開始予定時期は2025年6月頃とされ、現在、「ドクターイエロー(T3編成)」を展示している場所に「ドクターイエロー(T4編成)」を展示する予定。「ドクターイエロー(T3編成)は展示を終了し、所有元であるJR西日本へ返却され、2025年6月から「トレインパーク白山」で保存展示する予定となっている。

なお、JR東海所属の「ドクターイエロー(T4編成)」が引退した後も、JR西日本所属の「ドクターイエロー(T5編成)」による検測走行は当面継続される。2027年以降をめどに「ドクターイエロー」の検測を終了する予定としており、その後はN700Sの一部編成に地上設備の検測装置を搭載することで「ドクターイエロー」の検査を代替。営業車による検査へ移行するとのこと。