転職サービス大手のビズリーチ社が1月28日、新たな人材管理サービス「社内版ビズリーチ byHRMOS」を発表した。
企業内の優秀な人材の流出を防ぎ、社内でのキャリア形成を支援することを目的としたサービスだ。
すでにキリンホールディングスなど約15社で先行導入が進んでおり、人材活用の新たな手法として注目されているという同サービスの発表会に参加した。
ビズリーチの成長と新たな挑戦
2009年にビズリーチを創業し、現在ビジョナル代表取締役社長を務める南壮一郎氏は、「私たちは16年間にわたり、ビズリーチを通じてダイレクトリクルーティングの価値を提供してきた」と語る。
また、企業の採用管理、労務手続き、人事データ管理などを支援するクラウドサービスの展開も進め、累計3.3万社以上の企業が導入している。
さらに、同社は生成AI技術を活用した新機能の開発にも力を入れており、「生成AIを活用したレジュメ自動生成機能」を提供。求職者は約60秒で基本的なレジュメを作成できるようになった。
「社内スカウト」で人材流出を防ぐ
新サービス「社内版ビズリーチ byHRMOS」は、企業内で埋もれているスキルや高いモチベーションを持つ人材を発掘し、適切なポジションに配置することを目的としている。
ビズリーチ代表取締役社長の酒井哲也氏は、「企業には、社員が気づいていない魅力的なポジションが多く存在する。外部の求職者にスカウトを送るように、社内の社員にも『社内スカウト活動』を行うことが重要だ」と語る。
実際に、富士通では2020年からジョブ型人事制度による社内公募を導入し、約2万7,000人が応募、約1万人が異動を経験。みずほフィナンシャルグループでも社内転職制度を採用し、社員のキャリア選択の幅を広げている。
こうした背景から、本サービスが誕生したのだ。
生成AIを活用した新機能
その特長は、生成AI技術を活用し、人材のマッチングを最適化する点にある。酒井氏は、以下の3点を特長として挙げる。
●転職市場のデータを学習したAIが、企業の人材管理を支援。
●社員の「社内レジュメ」と「ポジション要件」を自動生成。
●人材検索の精度を向上させ、適したポジションを推薦。
この機能により、社員が主体的にキャリアを選択し、企業内で新たなキャリア形成を実現できる。
シニア人材の活用にも期待
新サービスの導入は、若手だけでなくシニア人材の活性化にもつながる可能性がある。
ビズリーチの執行役員 HRMOS事業部 事業部長 小出毅氏は、「本サービスは企業の課題に応じて活用でき、シニア社員のキャリア再構築にも役立つ。実際、シニア層を対象に部分的な導入を進めたいと考える企業もあり、具体的な議論が始まっています」と述べる。
また、「どのような状況においても、まずは社内に眠っている人材のレジュメを可視化することで、企業がその方の活躍するポジションを見つけたり、新たに作り出したりすることが可能になる」との見解を示している。
近年、定年延長の議論が進む中、会社で埋もれているシニア社員の価値を再発見し、有効活用することが重要な課題となっている。
本サービスは、シニア人材が新たな活躍の場を見つける契機となる可能性がある。
転職市場への影響
発表を聞いて最初に思ったのは、「人材の流動性が低いといわれる転職市場にブレーキをかけないか?」という疑念だった。
しかし、発表会の質疑応答で南氏は「自分が予想した以上に、日本企業において雇用の流動化は進んでいない」と述べる一方で、コロナ禍の期間に大手企業で働く若手の20代、30代の社員がビズリーチに登録する動きが増えたことを明かした。
若手社員が主体的にキャリアを考え、行動を起こし始めていると言う。
今回のサービスは、働く側にキャリアの選択肢を増やし、可能性を広げることを狙いとしている。
結果的に「自社の囲い込み」という面もあるが、公募案件を通じて自社でキャリア形成を進めた後に他社へステップアップする道も開かれる可能性がある。
短期的には人材流出を防ぐ一方で、長期的には転職市場の流動性を高める役割も果たすだろう。
さらに、会社内で埋もれたシニア人材を活性化する仕組みとしても機能する可能性がある。
本サービスがどのように転職市場全体に影響を与えるか、引き続き注目していきたい。