海の大切さを学ぶため、大阪みなと海洋少年団の子どもたちが2泊3日の瀬戸内海クルーズに参加した。大阪を出港した名門大洋フェリーの船上では、客室とブリッジを見学。門司港に到着すると、福岡海洋少年団、門司海洋少年団と合流して手旗信号、ロープワークなどを共同学習した。

  • 門司港で記念写真に収まる、大阪みなと海洋少年団、福岡海洋少年団、門司海洋少年団の子どもと指導者

観光フェリーを体験

大阪みなと海洋少年団に所属する幼稚園児6名、小学生6名、中高生3名、保護者と指導者は1月11日、大阪南港フェリーターミナルに集合。名門大洋フェリーが運航する「フェリーふくおか」に乗り込んだ。

  • 大阪南港フェリーターミナル(大阪市住之江区南港南2丁目2)

  • フェリーふくおかに乗船

フェリーふくおかは、全長195m、全幅27.8m、旅客定員675名の大型旅客船。トラック162台、乗用車140台を搭載できるキャパシティを誇る。子どもたちは一般搭乗の2時間前に乗船。名門大洋フェリーの担当者の指示に従って、まずは客室などを見学した。

  • こちらはフェリーふくおかと同型の、フェリーきょうとの模型

  • 初めて乗るフェリーで、まずは船内見学へ。早くもワクワクが止まらない!!

今回のイベントは、内航海運業界における船員の確保・育成をサポートする「船員確保チャレンジ事業」の一環として実施された。主催者は近畿内航船員対策協議会と、九州地区船員対策連絡協議会。船内で、近畿内航船員対策協議会の松野佳幸氏に話を聞いた。

  • 参加者はツーリスト向けの部屋に寝泊まりした

  • 個室の様子

いま内航海運業では船員不足の解消が喫緊の課題となっている。そこで関係者は、幼い頃から海に親しむ海洋少年団の子どもたちに業界の未来を担ってもらうことを期待している。松野氏は「こうした催しが少年少女たちの海洋に対する関心を醸成し、将来、海運業に興味を持つきっかけに繋がればと願っています」と話す。

  • ベットと畳のある部屋。家族旅行やグループ旅行で利用できそうだ

  • 「見て!トイレが浮かんでるー」

ここまで大きなツアーを開催するのは今回が初めて。松野氏は「たくさんの団員に参加してもらえました。フェリーでは海上から大阪や北九州の町並みを眺め、瀬戸内海を行き来する船舶、そして港湾施設なども観察してもらえたら」と話し、有意義な3日間にしてほしい、と続ける。

  • スイートルームでは「ホテルみたい!」と目を丸くする子どもたち

  • 港には夜の帳が下りる

出港前にブリッジ(船橋)も見学した。もちろん、普段なら人が立ち入ることが許されない場所だ。案内してくれたのは、船長と機関長。たくさんの機械を前に、子どもたちも興味関心が尽きない。操舵装置、船舶の衝突を防ぐARPAレーダー、電子海図(ECDIS)といった計器の役割と使い方について、様々な質問を投げかけた。

  • ブリッジ見学へ

「瀬戸内海は漁船を含め、たくさんの船舶が航行する特殊な海域です。したがって、船舶が直進できるよう舵を自動制御してくれるオートパイロット機能は使えません。安全航行のため、船員が交代で勤務するワッチ=当直の規則も厳しく定められています」(機関長)

  • 自動衝突予防援助装置(ARPA、アルパ)について丁寧に説明する船長

ミーティングルームに戻ると”海洋学習”の時間ももうけられた。はじめに、名門大洋フェリーの関係者が事業内容について紹介。「このフェリーでは人と貨物を運んでいます。売上の比率では人:貨物=30:70くらい。安全性、定時性に優れたフェリーは、物流危機(いわゆる2024年問題)解消の一手として、また大規模災害時の救援・救護輸送の手段としても社会から活躍を期待されています」と話す。

  • フェリー事業について紐解いていった

このあと、三興海運 専務取締役の礒合信之氏が「海の大切さと船員の仕事」について説明。「内航海運で活躍する内航船では、生鮮食品、日用品などの生活必需品のほか、あらゆる産業の原料、製品を運びます。国内貨物の40%は内航海運が輸送します。トラックは55.6%、鉄道は4.4%、飛行機は0.17%といった割合です」と紹介する。そして内航海運は省エネルギーで地球環境に優しいことにも触れた。

  • 三興海運 専務取締役の礒合信之氏

内航船員なら3か月働いて1か月の休暇をとる、というような働き方ができると礒合氏。同席した保護者に向けては「全国の海上技術学校・短期大学校、海技大学校に進めば船員になれます」と紹介する。最後は、子どもたちに「いま船のお仕事は働く人が少なくなっています。将来、なりたい職業のひとつとして、船のお仕事も選択肢に加えてもらえたら嬉しいです」と呼びかけた。

19時から、展望レストランで夕食。フェリーは19時50分に大阪南港を出港した。

  • 展望レストランの様子。料理はバイキング方式で種類も多く、「何を食べても美味しい」と子どもたちにも評判だった

21時過ぎには、明石海峡大橋を通過。船内のアナウンスでも案内があったため、甲板に出て記念写真を撮る家族の姿も見られた。ただ寒波の影響もあり、展望デッキは身を切るような寒さ!!

  • 綺麗にライトアップされていた明石海峡大橋

  • 小さな子たちが就寝後、中・上級生たちはミーティングルームに有志で集い、学校の勉強を進めた

穏やかな瀬戸内海を行く名門大洋フェリー。船内は揺れずに快適で、これなら寝不足の心配もなさそうだ。