門司港、関門海峡へ

2日目の朝。7時前、フェリーは広島の沖合を航行していた。船窓に目をやると、タンカー、貨物船、観光船などが行き交っている。瀬戸内海を航行する船の多さに、いまさらながら驚く。

  • 夜明け前の瀬戸内海

  • 間もなく日の出の時刻

8時半に、フェリーは福岡県北九州市の新門司港に無事到着。大阪みなと海洋少年団は名門大洋フェリーの関係者に敬礼すると、専用バスで門司港レトロ地区に向かった。

  • 今回の航路

門司生涯学習センターでは、福岡海洋少年団、門司海洋少年団と合流した。

  • 大阪みなと海洋少年団、福岡海洋少年団、門司海洋少年団が一堂に会する

その冒頭、近畿運輸局 海事振興部の土本美和子氏が「わたしたちのくらしと船」をテーマにレクチャー。「関門海峡には、様々な船舶が航行しています」と切り出すと、「たとえばコンテナ船は、形や大きさの異なる貨物を入れたコンテナを、積み木みたいに綺麗に積んで運んでいます」「船員さんが力を合わせて船を動かしています。大きな船には20人を超える船員さんが乗っています」と説明する。

  • 近畿運輸局 海事振興部の土本美和子氏によるレクチャー

このあとも貨物船、液化天然ガスを輸送するLNG船、自動車専用船、タンカー船、貨物を積んだトラックやトレーラーをそのまま運べるRORO船の特徴について触れる。バナナ専用船を紹介したとき、子どもたちの反応が最も良かった。「フィリピンから日本まで、約5日で到着します。バナナの新鮮さを保つため、船の中が冷蔵庫になっています」と土本氏。

  • 船員の仕事や生活についても紹介した

船員のやりがいと魅力については「みんなの生活に欠かせない物を運んでいる」「大好きな海を毎日見られる」「いろんな船に乗れる」「星がたくさん見られる」「野生のイルカに会える」「夕日がきれい」とし、貨物船の居住区も写真で紹介。最後は、日本各地に船員になるための学校があることを伝えた。

後半は、海洋少年団が活動。みんなで日本海洋少年団の歌「みどりの広場」を合唱し、「海のような、広い心で団結し、すべての人を友とします」から始まる『ちかい』、および「海洋少年団員は、名誉をおもんじます」などの10項目から成る『やくそく』を復唱する。大阪みなと海洋少年団を代表して、団長の倉内勇氏は「今日は貴重な機会となりました。皆さんで楽しく交流してください。指導者の方も協力して、子どもたちの知識になるようなことを教えてください」と挨拶した。

  • 大阪みなと海洋少年団 団長の倉内勇氏が挨拶

このあと3団体の子どもたちは4つの班に分かれて手旗信号について学ぶ。指導員の号令で旗を振り、分からないところがあれば上級生が優しくフォローする姿が見られた。

  • 手旗信号に取り組む

  • 丸くなって答え合わせ

  • 年長クラスの子たちはメッセージの送受信で腕を磨いた

またロープワークにも挑戦した。出題されたのは、難易度の高い「花結び」。はじめは一様に戸惑う姿が見られたが、簡単に結えないからこそ「周りと相談しながら完成させよう」という意識が生まれたようだった。

  • 団体の垣根を越えて話し合う

  • 小さな子も果敢に花結びに挑戦する

12時には、国指定重要文化財の洋館・旧門司三井倶楽部内の和洋レストランで昼食。みんなで門司港名物の焼きカレーを頬張る。

  • 国指定重要文化財・旧門司三井倶楽部で昼食

  • 門司港発祥の名物「焼きカレー」は、海老、フグ、隠し味にバナナなどが入っていた

午後は観光。まずは門司と下関を全長780メートルの海底トンネルで繋ぐ「関門トンネル人道」を歩き、関門海峡の長さを体感する。たどり着いた先の壇之浦古戦場跡では、「壇ノ浦の合戦」(1185年)を紹介する源義経と平知盛の像、そして幕末に長州藩が外国勢力を相手にした下関戦争(1863年、1864年)ゆかりの長州砲(レプリカ)を見学。関門海峡をめぐる歴史に思いを馳せた。

  • 福岡県北九州市(旧門司市)と山口県下関市の県境をジャンプで飛び越えた

  • 壇之浦古戦場跡

  • 長州砲のレプリカ

そして唐戸桟橋から関門汽船に乗り、宮本武蔵と佐々木小次郎による「巌流島の戦い」(1612年)が行われたと伝わる船島=巌流島で下船。しばし散策を楽しんだ。それにしても、関門海峡の流れの速さ、そして行き交う船舶の大きさ、その交通量の多さには大人でも驚かされる。子ども心にも、強く印象づけられたことだろう。

  • 貨物船が通るたびに大きな波が押し寄せる

  • 関門海峡には大型船も入ってくる

  • 巌流島の宮本武蔵と佐々木小次郎像

門司港に到着後、福岡海洋少年団、門司海洋少年団は解散となる。半日という束の間の時間ではあったものの、行動を共にして親睦を深めた子どもたちだった。最後に大阪みなと海洋少年団は、関門海峡ミュージアムを見学。重要文化財に指定されている門司港駅の駅舎前でも記念写真を撮ってから、新門司港に停泊している名門大洋フェリーのフェリーふくおかに戻った。18時に出港、翌日(13日)8時半に大阪南港着。3日間の日程を無事に終えた子どもたちの表情は、とても充実したものだった。

  • 門司港駅で記念撮影