今期も、予選を勝ち抜いたベテラン棋士たちが立川に集結し、2代目「達人」の座を争いました。2024年12月27日に発売された『将棋世界2025年2月号』では、高見泰地七段の解説とともに準決勝・決勝を振り返った特集「第2回達人戦立川立飛杯 冴え渡った勝負勘」が掲載されています。本稿では、この特集冒頭の現地の様子が語られた部分より抜粋してお送りします。

※2024年12月27日に発売された『将棋世界2025年2月号』(発行=日本将棋連盟、販売=マイナビ出版)より、一部を抜粋してお送りします。

(以下抜粋)

  • 『将棋世界2025年2月号』より 【写真】日本将棋連盟

    【写真】日本将棋連盟

ー達人戦の準決勝2局と決勝の解説を現地大盤解説役を務めた髙見泰地七段にお願いします。髙見七段は前夜祭出席と初日のベスト8の解説役を務める予定でしたが、2日目の解説役だった佐藤天彦九段が体調不良になったため、急遽2日目の解説も務めることになりました。まずは前夜祭の印象から教えてください。

「普段のファンの顔ぶれとちょっと異なっていたような気がします。達人戦に出場するベテラン棋士の昔からのファンもいれば女性の方もいたりと、バラエティに富んでいて華やかな雰囲気でした」

ー藤井聡太竜王・名人が出場しない棋戦の前夜祭は新鮮です。初日のベスト8の4局を振り返って印象に残ったことは?

「前回優勝者の羽生善治九段と行方尚史九段の将棋はずっと均衡が取れていましたが、最後に行方九段が鋭い切れ味を発揮して勝利されました。丸山忠久九段は増田裕司七段にかなり苦戦を強いられていましたが、最後に穴熊の堅さを一瞬生かして耐えた感じです。森内俊之九段は谷川浩司十七世名人と相掛かりを戦ってかなり難解な中盤だったんですけど、受けの妙技が光りました。反撃も素早かったです。木村一基九段対佐藤康光九段戦は最も印象に残りました。木村九段が序盤で桂馬を取れてよくなりましたが、感想戦を見ていたら佐藤九段は自分があまり悪いと思っていないんですよ。普段のダイレクト向かい飛車の設定に比べれば桂馬の取られ方の条件がいいと主張されて(笑)、堂々と指して腕力でねじ伏せた感じです。4局ともそれぞれの棋士の個性が出ていて興味深かったですね」

ーホールの壇上で行われる対局を客席から観戦できる形式でしたけど、大盤解説はどこで行ったのですか?

「ホールの外の別室でやっていまして、解説の模様はステージの上部のスクリーンに映されています。もちろん対局者には見えません。コンサート会場のように対局を観戦されている方にはイヤホンが渡されていて、それで解説を聞くことができます」

ー対局者には聞こえないのですね。観客はかなり気を遣いそうですが。

「会場内は静かにしなきゃいけないので、『笑ってはいけない対局室』みたいな雰囲気になっていましたね。私と竹部さゆり女流四段のコンビはいつもそうなんですけど、漫才みたいな解説になって、会場でプッて吹き出しちゃった人が何人もいたみたいです。対局者が、『あれ?なんで笑ってるんだろう』って疑問に思ったみたいで、それは申し訳なかったです。でも私のせいじゃないんですよ(笑)。笑わせにいったわけじゃないので」

ー髙見さんと竹部女流との掛け合いは夫婦漫才のようで楽しいですからね。別の部屋で解説しているということは、解説者の前にお客さんはいないのですね?

「いや、10人から20人くらいはいらっしゃいました。見たければ見られるんです。でも公開対局を観戦できるのにわざわざ解説を見にくるのはかなりのマニアというか、解説者や聞き手のよほどのファンでしょうね。ありがたかったです」

ー達人戦は持ち時間30分で、切れると30秒の秒読みです。普通の公式戦ではそれほど例がない条件のようですが?

「そうですね。体感だと30分あれば割と考えられるところもある。でも秒読みになると30 秒なのでアップダウンが激しいというか、いきなり厳しい流れになります。そこにうまく対応することも勝ち上がるための条件だと思いました」

(第2回達人戦立川立飛杯 準決勝・決勝 冴え渡った勝負勘/【解説】高見泰地七段 【記】大川慎太郎)

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