2番目に注目されたのは20時18分で、注目度74.2%。蔦重が銭内と吉原へ繰り出すシーンだ。

蔦重は貧家銭内(平賀源内)と名乗る男と、その従者・小田新之助(井之脇海)とともに夜の吉原を歩いている。平賀源内とは近しい仲だという銭内に、源内を紹介することと引き換えに吉原での接待を求められたからだ。

蔦重は源内に『吉原細見』の序文の執筆を依頼するため、源内の居場所を探していた。しかし一向に見つからず、源内が老中・田沼意次(渡辺謙)の屋敷へ出入りしていることを聞きつけ、以前、意次に会うきっかけとなった炭売りの男を探して厠で待ち構えていたところ、首尾よく男との再会がかなった。その男は貧家銭内といい源内とは親しくしているという。蔦重は半信半疑であったが、仕方なく2人を連れて吉原にやってきたのだ。

銭内は、吉原は古くさくて、金持ちの爺と田舎者しか来ないと聞いていると言いながら、老舗女郎屋である松葉屋を希望した。蔦重は格式も金額も高い松葉屋ではなく、河岸見世に連れていきたかったが、銭内に押し切られしぶしぶ松葉屋へ足を運んだ。銭内という男は一体何者なのだろうか…。

銭内のペースに振り回される蔦重

このシーンは、自分が平賀源内だということを隠して、蔦重をからかう銭内の行動に視聴者が興味を引かれたと考えられる。

ほうぼうに手を尽くして蔦重はようやく、平賀源内と知り合いという貧家銭内を見つけることができた。しかし、足元を見られた蔦重は銭内のペースに振り回されることになった。わがままな取引先に翻ろうされる自分を重ねたビジネスマンの視聴者も多かったのではないだろうか。

SNSでは「軽妙でうさん臭い源内先生、見ていて楽しいな」「平賀源内、魅力的だな。しゃべり方や粋な序文、瀬川を思う表情ぜんぶいい!」「源内先生が最高すぎてこれから一年楽しみ!」と、クセつよの源内だが、その評判は上々だ。

この頃の吉原には、およそ2,000人の女郎が所属していた。吉原で遊ぶには、まず引手茶屋と呼ばれる仲介をする店を訪れるのが一般的だった。蔦重の住んでいる蔦屋もそうだ。引手茶屋で自分の予算や好みの女郎を告げ、紹介してもらう。その後、女郎の部屋へ案内され、酒宴をするなどして親睦を深めるのが一般的な流れだった。

初めて訪れた客が、いきなり親しい間柄になることはできない。 複数回通うことで、女郎との関係を深めていき、ようやく枕を交わすことができた。女郎に気に入られなければ、初回で振られることもあった。また浮気も許されず、もしほかの遊女のもとへ通ったことが発覚すると、詫び料の支払いが必要だったり、場合によっては出禁を言い渡されることもあった。このような厳格なルールが定められていたこともあり、より遊びやすく料金も安価な岡場所に人気が集まっていた。

平賀源内は、本草学者・地質学者・蘭学者・医者・殖産事業家・戯作者・浄瑠璃作者・俳人・蘭画家・発明家と非常に多くの顔を持っていた。1761(宝暦11)年に伊豆で鉱床を発見し、この頃に老中・田沼意次と知り合っている。

また、第1話で蔦重が朝顔に読み聞かせていた『根南志具佐(ねなしぐさ)』は源内が風来山人という号(ペンネーム)で書いた戯作。当時の人気歌舞伎役者・荻野八重桐の溺死事件を題材に、その死を巡る様々な憶測やウワサをユーモアを交えて描いた作品だ。作中には瀬川菊之丞や妖怪まで登場する。男色に関する描写も多い大胆な作品だった。ファンタジー+BLという現代でも通じそうな設定に源内の才能がうかがえる。