新NISAやiDeCoなどの影響もあり、投資への関心がかなり高まりつつある。実際、投資は知れば知るほど面白く、そして奥深いもので、その種類やスタイルもかなり多岐にわたっていると言える。
例えば「CFD取引」。FX取引と比べられることも多く、比較的少ない資金から始められるという特徴を持つが、まだその認知度は高くない。そこで今回はCFD取引を扱うGMOクリック証券を訪問。FXとCFDのスペシャリストである稲井有紀氏に詳しい話を聞いてみた!
▼手元に現物を持たずに投資できる「CFD取引」
ーー本日はよろしくお願いします! さっそくですが、そもそもCFDとはどんな投資方法なのか、改めて教えてください。
当社では、「コモディティ」と呼ばれる商品……例えば原油や金、穀物などさまざまなアセットがありますが、これらの商品CFDや日本225などの株価指数CFD、他に米国VIなどのバラエティCFD、そして、個別株などの株式CFDが取引可能です。取引方法については、"有価証券や現物商品などの受け渡しは行わず、買った金額との差額のみを受け渡しする"差金決済取引となる特徴がございます。
ーー「手元に現物がない」というのはどういうことなのでしょう?
例えば、一般的な「金」の売買の場合、まずは金を買い、保有し、値上がりしたときに売り、利益を出す……という流れになります。しかし、CFDは「金の価格だけを保有する」というイメージで、値が上がったときに売却し、その差額分だけを決済するんです。
実際には我々のような証券会社が、金の取引をしている“カバー先(金融機関)”と取引を行いながらロールオーバーしているので、お客さまに現物を気にせずお取引をしていただける環境を提供している、という仕組みになっています。
ーーどういう仕組みで利益や損失が発生するのか、具体的にご説明いただけますか?
利益については、例えば1株100万円の株があったとします。通常、この100万円の株を1枚買うには100万円の資金が必要です。そして購入後、1株が110万円、または120万円になったときに決済したら、110万円であれば10万円の利益、120万円になれば20万円の利益が確定します。
しかしCFDの差金決済だと、現物有価証券のやり取りはせず、100万円で買った権利を保有していただいて、110万円、120万円になったらその権利を手放す。そうして10万円、20万円の利益を証券会社から受け取るというかたちになります。
損失も同じですね。100万円が90万円に値下がりしたところで手放してしまうと、10万円の損失というかたちで証券会社と差金決済していただく流れになります。
ーー普通の株のように、値下がりしてもそのまま保持することはできるんですか?
可能ですが、CFDには少ない証拠金で多額の取引ができる「レバレッジ」があるので、そのぶんリスクも高い取引にはなってきます。株の価値が下がっていくと、お客様の投資した金額以上のマイナスが出てくることもあるので、それを保護するために「ロスカット制度」(強制的に決済して損失を確定させる仕組み)を整備していて、これにかかってしまうようだと保有は難しくなってしまいます。
▼CFD取引、GMOクリック証券ならではの“強み”とは
ーーGMOクリック証券では、どんな商品を扱っているんですか?
株価指数なら日経平均を原資産とする日本225、NYダウ、ナスダック、S&P500を原資産とする米国30、米国S500、米国NQ100あたりが代表例で、これを「株価指数CFD」と呼んでいます。一方で「商品CFD」というものもあって、こちらは原油、天然ガス、金、銀などを取り扱っております。
また、一般的にあまり馴染みがないかもしれませんが「米国VI(恐怖指数)」というものも存在して、例えばリーマンショックやコロナ禍、ロシアのウクライナ侵攻などでマーケットがかなり不安に駆られるようなニュースが出た場合に上がっていく数字のことを指すのですが、これを「バラエティCFD」として取り扱っています。
ーーそんなものもあるとは。ちなみに、GMOクリック証券が扱うCFDの特徴、他社との違いなどがあれば教えてください。
強みという意味では、外国株を含めて取引手数料が全て無料だということ。そして一部の銘柄は、最小取引単位が0.1枚から可能だということですね。1枚からスタートという会社も多い中、より少額で、リスクを抑えた取引ができるのがGMOクリック証券の特徴です。
また、当社独自のルールとして、保有しているポジションごとに「ロスカットレート」を設定しているのも特徴です。一般的には、保有している金や銀、日本225などのいずれかがロスカットにかかってしまうと、すべてのポジションがまとめてカットされてしまうんです。しかしGMOクリック証券では、該当するポジションのみがカットされるので、そのほかのポジションはそのまま保有いただける仕組みとなっています。
▼“売り”からもスタートできる! CFD取引の“5つ”のメリット
ーー現物取引と比べ、CFDにはどんなメリットがあるのでしょう?
メリットは大きく分けて5つございます。
まずは国内だけでなく、国外の銘柄にも簡単に投資できること。日本に住んでいると、どうしても日本の株式市場がベースになってきますが、今はアメリカのハイテク企業などのほうが魅力的だったりもするので、CFDなら気軽に投資できるという点は大きなメリットですね。
2つめがレバレッジ取引が可能だということ。現物と違い、取引のスタートラインで多額の証拠金を必要としないという点はやはり魅力的だと思います。「商品CFD」はレバレッジ20倍、「株価指数CFD」は10倍、「バラエティCFD」と「株式CFD」は5倍のレバレッジでそれぞれ取引可能です。 3つめが取引手数料が全て無料になっているということ。
4つめが、現物取引は「買い」からしかスタートできないのに対し、CFDは「売り」からでもスタートできるということ。マーケットの数字は上下するものなので、現物取引の場合は一度下がり始めてしまうと、下がりきるまで待たなければいけません。
しかしCFD取引に関しては、下がっている途中で売り、下がりきったところで買うこともできます。そして上がったらまた売ればいいので、マーケットの数字が上下している間に取引が2回できる。現物取引よりチャンスが多いというメリットがありますね。
そして最後に、CFD取引はほぼ24時間、何かしらの銘柄が取引できるという点。時差のおかげで、日本では日中よりも夕方以降のほうが海外マーケットが本格化します。お仕事のあとにゆっくり取引できるので、機会を逃しにくい。これも魅力のひとつだと考えています。
ーーそれでは逆に、デメリットやリスクについても教えていただけますか?
やはりリスクコントロールが何より重要だということですね。レバレッジをかけることで資金効率のいい取引ができますが、20倍とかになるとどうしても値動きが大きいので、よりリスクコントロールが重要になってきます。レバレッジが高ければ高いほどハイリスク・ハイリターンになるので、そこはどうか気を付けていただきたいと思います。
もうひとつは、CFDのスプレッド(価格差)が変動性になっていることです。FXの場合はスプレッドの幅が変わらない「原則固定スプレッド」なのですが、CFDは「変動性スプレッド」が基本。なので、前月の主要銘柄に関しては、「月間平均でどのぐらいのスプレッドが出ていましたよ」という部分をホームページで開示し、お客様にご理解いただくサービスを提供しています。
▼“投機”ではなく、“投資”として付き合うための心構え
ーー少額から始めやすいということですが、CFDをスタートする際の最低限の資金感覚について教えていただけますか?
いくらからでもスタートはできるのですが、大体、必要最低証拠金の3倍くらいのお金からスタートしていただければと考えています。日本225だと、1枚あたり約4万円が必要最低証拠金になってくるので、12万円くらいの資金があればスタートしていいんじゃないかというところです。
原油などは1枚5000円ほどの必要最低証拠金なので、1万5000円程度。今年追加した銘柄の中に「豚肉」があるのですが、これは必要最低証拠金が最も安く、1枚あたり650円程度になっているので、まずはこういうところからスタートしてもいいかもしれませんね。0.1枚から取引できるので、実質65円の3倍……約200円から始められます。
ーーどれくらいの知識があれば、CFDをスタートしても問題なさそうですか?
なんで株が上がるのか、なんで下がるのか。こうした基礎知識がある方であれば問題ないと思います。
例えばアメリカでは今後、トランプ氏が大統領に就任しますが、トランプ大統領はビットコインに好意的な発言をしています。すると、どうしても金融資産全体が盛り上がりを見せるので、基本的にリスクオンになっていきます。つまり、「リスクをどんどん取っていきましょう」という動きになるので、円安の方向になりますし、株高にもなる。逆に、金利は下がっていきます。
この株高、円安、金利安みたいなところのバランスなどをなんとなくイメージできる方であれば、すぐにCFD取引もできるのではないでしょうか。逆に、「なんで市場が動いているのかわからないけど、とりあえず買ってみた」という感じだと、投資ではなく“投機”になってしまうので、あまりおすすめはできません。
ーーCFD取引は、どんな人に向いているのでしょう?
最も向いているのは、損切りができる方、リスク管理ができる方ですね。FXよりも価格変動が高い商品なので、取引機会、収益機会は、FXより何倍もチャンスはあります。だからこそ、リスク管理を怠って損切りできず、チャンス(取引機会)を逃がしてしまうようだと、ちょっと難しいかもしれません。
実際、損切りできる方と損切りできない方で2分化されている印象があります。FXだと上下どちらか一方向に動くときもあるのですが、FXはレンジ相場が7割といわれていて、基本的には狭いレンジで上下しています。だから、ある程度ポジションがマイナスに行っても、我慢すればなんとかなるというケースも多いんです。
しかしCFDはレンジ相場の期間がかなり短く、逆方向に行ってしまうと一方向に行ってしまうことも多いので、どうしてもそこでロスカットされたり、取り返しのつかない状態になってしまうので、損切りできない方はCFD取引には向いていないかもしれません。
▼投資経験者がCFD取引を始める際の注意点
ーーそれでは、FXにはないCFDならではの魅力などがあれば教えてください。
FXではどうしても通貨ペアの数が限られてしまいます。当社も26通貨ペアの取扱いがありますが、それがCFDだと150銘柄を取り扱っているので、自分に合う銘柄が見つけやすいのではないかと思います。
また、FXだと最近は「エマージング通貨」といって、メキシコペソやトルコリラなどの高金利通貨が人気ですが、メキシコペソはトルコリラがどのような理由で上昇したのか、下落したのか、背景が分かりづらい点があります。
その点、CFDは生活するうえで身近なものが多いので親しみやすいと言えます。例えば原油の場合も、「ガソリンの値段が上がっている」というニュースを聞けば、「ああ、原油価格が上がってるんだろうな」とピンと来やすいですよね。
ーー投資経験者がこれからCFD取引を始める際、注意すべき点や準備しておくべきことなどはありますか?
日本株や為替と違い、CFDは外国株やコモディティが対象銘柄になってきます。よって、日本株や為替と比べ、投資情報が乏しいという側面はあります。
ファンダメンタルズ分析(世界情勢、経済指標、経済ニュースなどを基にマーケットの値動きを分析する手法)に必要な情報が少ないので、1つの情報が入ってきたら、そちらを重要視していただきたいと思います。
例えばちょっと前だとココア、最近だとコーヒー。この2つの銘柄はずっと上昇しているのですが、その一番の大きな原因は原産国の天候不良なんです。となると、すぐにまた生産を増やすことは難しく、トレンドも長続きしやすい。これもFXや株にはないCFDの特徴なので、そのあたりの感覚の違いは意識したほうがいいと思います。
ーーそれでは最後に、これからCFDに挑戦したいと思ってる方々にメッセージをよろしくお願いします!
CFDは良くも悪くもハイリスク・ハイリターンです。 FXの場合、わかりやすくドル円が動いても1%から1.5%、本当によく動いても2%くらい。だけど、CFDは「株価指数CFD」でも1日5%くらい動きますし、個別株だと8%から10%くらい動く日もあります。これはリスクが高い反面、収益機会や取引機会が多いというメリットだとも言えます。
そして基本的に、どの投資対象の金融商品であっても、やっぱり動きに癖はあります。FXと比べ、「あ、この商品は自分に合うな」「この通貨ペアは合うな」と肌で感じられる銘柄に出会う確率も高いはず。そんな銘柄に出会えれば、投資の面白さも感じられると思います。最初は値動きの大きさに抵抗があるかもしれませんが、まずは数量を減らし、FXと同じようなリスク値でCFD取引をやってみるといいかもしれませんね。