NTT西日本は、12月10日と11日の2日間、広島県立総合体育館(広島グリーンアリーナ)にて、災害発生時の復旧工事や生成AI活用技術などを競い合う社内競技大会「マイスターズカップ 2024」を開催した。
「マイスターズカップ」は、NTT西日本が通信インフラ事業者および地域のICTパートナーとして、安心安全なサービスの持続的な提供へ向け、優れた業務ノウハウの共有と実践スキル競技を通じて、より一層の現場力向上を図るための社内競技大会。「サービス品質の向上」「お客様満足度の向上」などを目的に、社員同士が専門技術を切磋琢磨する場として2004年より西日本エリア各地において持ち回りで開催されている。
20回目となる今回は、2004年の第1回が開催された広島にて開催。西日本エリアの各予選会を勝ち抜いた約380名が、日進月歩の最新技術と実務で培った経験を駆使して、16の種目で技術を競い合った。
大会当日は、データをビジュアル分析するためのプラットフォーム「Tableau」を活用して、制限時間内に視認性・実用性に富んだダッシュボードを作成する「Tableauダッシュボードコンテスト」、予め設定されたシナリオに従い、生成AIを駆使して外部情報の要約や資料作成などのアウトプットの内容を競う「生成AI活用」、マイクロソフトのローコードツール「Power Platform」で業務効率化を図る簡易なアプリを構築する「ローコードツール」などの競技が公開されたが、ここでは、マイスターズカップにおける花形競技である「複合オンサイト」の模様を中心に紹介していく。
「複合オンサイト」は、災害などで通信設備が被災した際に、いち早く被疑箇所を切り分け、必要な復旧作業のスピード・正確性などを競う競技。高度な技能を有した保守技術者が3名1チームとなり、現場さながらの環境で災害などによって故障した設備・サービスを復旧していく様子がシミュレートされる。
今回の大会における「複合オンサイト」では、予選を勝ち抜いた「鹿児島支店」「福井支店」「九州支店」「東海支店」「中国支店」「長崎支店」「熊本支店」「四国支店」に、NTT東日本から選抜されたチームを加えた計9チームがしのぎを削った。
「複合オンサイト」の開会式では、NTTフィールドテクノ サービスエンジニアリング部 フィールドオペレーション部門長の牧啓一氏より「NTTの通信サービスの土台を支えているのはまぎれもなく皆さん」と激励の言葉を掛けられ、競技参加者たちも、競技開始に向けて緊張感を高めていく。
続く「応援タイム」では、各ブースにおいて各支店とリモートで接続。中継先から選手を応援する熱いメッセージを受け取った。
各ブースに分かれた選手たちが気合を高める中、競技に必要な各種情報を記載した書類が配布され、競技前準備を実施。そして120分に及ぶ「複合オンサイト」の幕が切って落とされた。
各ブース内は、通信ビルから最寄りの電柱等までの通信設備区間(アクセス区間)と、引き込み線および宅内の通信設備区間(宅内区間)をイメージした環境が構築されており、選手たちは、災害復旧対応を想定し、アクセス区間では故障探索や不良箇所の復旧を実施。宅内区間では、ビジネスホンなどのトラブルや「お困りごと解決」を想定した故障切り分けや復旧など、通常はなかなか見ることができない地上や地下での様々な通信設備の複合的な復旧作業が実施された。
■「複合オンサイト」競技の模様
■NTT西日本 北村社長が「マイスターズカップ」の意義を語る
「マイスターズカップ」の狙いのひとつは「業務ノウハウを共有」というNTT西日本 代表取締役社長の北村亮太氏は、「技術やスキルを伝承していくことで、現場力を向上させていく」ことの重要性を訴えた。さらに「知恵や技術を磨いて、新しい価値の創造、共創にチャレンジしていくことでチャレンジ精神を養う」ことも大きな目的のひとつだと説明する。
また、今回はすべて初参加の選手たちによって競われたが、「年々グレードが上がってきている」と選手レベルの向上を実感。「非常に心強く、頼もしく思っている」と笑顔を浮かべる北村社長。
また、自身が社長就任後、能登の震災復旧現場に足を運んだ際、輪島の朝市にて地元の方から「私達も頑張るから、NTTさんもよろしくお願いします」といった声を掛けられたというエピソードを披露。そういった声を掛けられたのが、局舎に寝泊まりしながら、日々復旧作業に携わったエンジニアたちのおかげであるとし、「我々にとってエンジニアは宝」と、その活躍にあらためての感謝と激励の言葉を贈った。
「マイスターズカップ」が広島で開催されるのは、20年前の第1回大会、10年前に続いて3回目となるが、「この10年間を振り返っても、全国各地で自然災害が発生している」というNTT西日本 中国支店長の桑原史憲氏。「この広島の地からも、復旧作業に派遣し、地域の通信の復旧・復興に尽力させていただいた」と、災害時の復旧作業に力を入れてきたことをあらためて紹介する。
そして、普段の訓練においてもスキルを磨き、地域の自治体やインフラ事業者との間に結ばれた連携協定を通じて、「いざ災害が起きたときにも、万全の備えができるような取り組みを日々行っている」といった姿勢を明らかに。そして、10年前に起こった広島市北部の自然災害において、通信関連で17カ所の被害を受けながらもスピーディーに復旧できたのは、日頃の訓練のおかげであるとし、土砂災害の警戒区域の設定数が日本で一番多いという広島において、「日々の鍛錬を通じて、皆さまに安心安全な通信をお届けできるように取り組みを進めてまいりたい」と意気込み新たにした。
そして、「この大会に出たいという社員のモチベーションは非常に高い」という北村社長は、20回目を迎えた「マイスターズカップ」の歴史が、「社員のスキルを向上させ、災害やアクシデントに対しても、迅速に対応できる体制を作り上げた」と、その開催意義をあらためてアピールした。
■120分の激闘を終えて
120分の競技終了後、総評を行ったNTTフィールドテクノ サービスエンジニアリング部 フィールドオペレーション部門 フィールドマネジメント担当部長の井手喜紀氏が、「選手の皆さんが、各支店、あるいはNTT西日本の代表として期待を背負い、これだけの観客が見ている中、最大のパフォーマンスを発揮していただいたことに感動している」と選手を称賛すると、会場全体も大きな拍手で包まれた。
そして、安全、迅速性、リモート連携、そして品質といった「複合オンサイト」における評価ポイントについてあらためて解説し、「選手の方を見ると、ほっとしたような笑顔の表情が見える。本当にお疲れさまでした」と、激闘を終えた選手たちに労いの言葉を贈った。
安堵の表情を浮かべるNTT西日本 中国支店の選手たちは「会社の方々の応援のおかげでここまでやって来られた」と感謝の言葉を述べ、「まだ結果が出ていないので、まだドキドキはしていますが、まずはホッとしているのが一番の感想」と笑顔を見せる。「積極的に声掛けを行うなど、3人でずっと練習してきた成果が出せた」と競技を振り返りながら、「連携こそが僕らの一番の強み」と自信を覗かせた。
競技で力を出し切った直後ということもあって、「明日からは練習しなくても良いんだという開放感がすごい」と素直な感想を述べながら、応援に駆けつけた支店のメンバーとあらためて健闘を称え合った。
NTT西日本では、令和6年能登半島地震に伴う通信復旧において、全国からの広域支援も含め、復旧作業員を最大950名動員し復旧作業を進めた。今後、NTT西日本は複合オンサイトの有スキル者の育成をさらに推進し、災害が発生した際、一日でも早く通信が提供できるよう、技術力を研鑽し現場力を高めていくとしている。