J:COMは2020年12月に国連が設立した「SDGメディア・コンパクト」に加盟し、「持続可能な地域社会づくり」に取り組んでいる。コミュニティチャンネル「J:COMチャンネル」などで、SDGsに取り組む大学生の活動を取材・発信してきた。
そのJ:COMチャンネルの「大学生と考えるSDGs特集」を発展させたプロジェクトが、「大学生と考えるSDGsアクション支援プロジェクト」だ。地域課題にチャレンジする若い世代を支援するべく、2024年8月27日より「これから始めたい・もっと広めたい、地域課題の解決に取り組むアクション」を募集。11月4日に最終選考&表彰式を実施した。その模様をご紹介しよう。
ゲスト審査員として同世代の山之内すずさんが参加
最終選考の開会式には、JCOM株式会社 サステナビリティ推進部の藤野のぞみさんが挨拶。「J:COMチャンネルの特集を通じて、地域のことを考えて取り組む大学生がたくさんいることを知りました。そんな方々が新しくチャレンジしてみたいこと、さらに発展させたいと思っている活動を、J:COMが具体的にサポートしたり、一緒にアイデアを膨らませたりして、さらなる地域課題の解決に向けて一緒に取り組んでいきたいと思っています」と語った。
審査員を務めるのは、マーケティング・ビジネス視点の専門家である中央大学 名誉教授 田中洋さん、アイデア・発想視点の専門家として多摩美術大学 教授 佐藤達郎さん、地域課題視点の専門家として、若者と地域の心地よい関係を研究する「ゆるさとLabo(小田急エージェンシー)」の+増田光一郎さんと田中咲さんという顔ぶれ。ゲスト審査員としてタレント/女優の山之内すずさんも審査に加わり、「同世代の皆さんからたくさんの学びをいただけることをとても楽しみにしています」と挨拶した。
このほかにもJ:COMの社内審査員として、サステナビリティ推進部長の和泉克典さん、開会式にも登壇した藤野のぞみさん、ビジネス開発第一部長の浅井利暁さん、ビジネス開発第二部の亀割舞さん、映像制作第一部の大橋洋一さん、林田昭広さん、梶川凌雅さん、人事部の前島哲晴さんらも審査に参加した。
最終選考でベストアクションに選ばれたアイデアには、総額100万円相当のサポートが行われる。このほかに、審査員賞、参加する学生の投票によって決まる学生投票特別賞が用意された。
大学生12チームが考えるSDGsアクション
ベストアクションに選出されるとJ:COMから支援が受けられることに魅力を感じ、本プロジェクトには全国の大学生からの応募があったという(応募総数は未公開)。その中から一次選考を通過した12チーム23名が最終選考に挑み、1分半の持ち時間を使って概要のプレゼンテーションを行った。
12チームそれぞれの取り組むSDGsアクションは以下の通り。なお複数の大学の学生で構成されているチームについては、代表者の所属大学を記載している。
WAKUWAKU!(広島大学)
「元スポーツ選手に特化した人材バンクによる地域農業の活性化」
農業の人手不足と地域独立リーグの元スポーツ選手のセカンドキャリア問題に対して取り組む。元スポーツ選手に特化した人材バンクを設立し、農家と元選手をマッチングする。+mirai(慶応義塾大学)
「のさりの書~旅人が旅をしながら作る世界で一冊の観光本」
旅人や地元の人が地域の魅力を絵はがきに綴り、次の人につなぐ取り組みで、熊本県天草市にて展開中。“のさり”とは、「良いことも悪いことも、全ては天の恵み」という熊本の方言。AIドクター(早稲田大学)
「地域に根ざしたAI遠隔医療アプリ」
地域に根ざしたAI診療アプリを作り、症状を入力するとAIがビッグデータから病名を解析。診察が必要な患者には、地域の医師がオンライン診療することで医師不足を解消する。創価大学理工学部丸太ゼミ(創価大学)
「八王子産米の副産物バイオマスを有効利用した地域活性化とSDGsへ貢献する取り組み」
八王子の特産米で吟醸酒を造る過程で発生する米粉を有効活用し、米粉バイオマスプラスチックとして食べられるスプーンや環境に優しいクリップを開発。ゴミ袋の試作にも成功。北九州市の課題を食で解決!!(九州栄養福祉大学)
「竹を食べる?!北九州市の空の玄関の名物」
放置竹林問題を解決するため、北九州市の7区を7つの味で表現した、竹炭の真っ黒なかりんとうを開発。北九州空港のスターフライヤーとも協力し、新たな地域土産を目指す。ほな、坂いこかー?(玉川大学)
「坂のまち元気プロジェクト」
坂道が多い町田市玉川学園地区を、“住むのが楽しくなる坂の町”としてPR。スマホのGPS機能を活用した坂歩きや、地域の高齢者との学内の坂道散歩を実施し、地域を活性化する。ルーラルグラワー(早稲田大学)
「Blossoming bonds ― 一輪の花が紡ぐ100年の関係 ―」
花を媒介とした地方コミュニティの再生を目指す。参加者の小学生と保護者が、近所の高齢者が保有する畑を訪問し、花摘みやフラワーアレンジなどを楽しみながらの交流を企画。MGみつばち事業(宮城学院女子大学)
「みつばちと森と人の共生~大学生による養蜂事業と密源の保全活動~」
学内に巣箱を置き、蜂蜜を生産から販売まで手掛ける「みつばち事業」を2020年より展開。その一環として、キャンパスに隣接する自然保護区の森林の保全活動にも取り組む。温泉インカレ(別府溝部学園短期大学)
「ベップの共同温泉に浸かって若者のQOLを爆上げさせようプロジェクト!!」
日本有数の温泉地として有名な別府。若い世代の温泉利用者数が激減している課題に向けて、別府市内の大学生が温泉を利用するきっかけ作りとして様々なイベントを実施。Will CONNECT(慶應義塾大学)
「ゲストハウスを拠点とした大学周辺地域の空き家活用」
大学周辺地域の放置空き家の減少、地域コミュニティの再生、若者の自己実現にアプローチ。交流の場となるゲストハウスを作り、大学生と空き家の所有者をつなぎ、伴走支援を行う。unucycle(岩手大学)
「海洋プラスチック回収と未利用魚交換プロジェクト」
海や河川などで回収した海洋プラスチック量に応じてポイント還元。そのポイントで未利用魚を手に入れることができ、廃棄される魚を軽減。環境保全と資源の無駄遣いに取り組む。林業改革(北海道大学)
「LiDAR搭載ドローンを活用した林業ビジネスの変革」
林業従事者の高齢化や人材不足に対する取り組み。空間分析や地形モデリングなどが行えるLiDARという技術を搭載したドローンを活用することで、森林資源を効率的に計測する。
12チームはプレゼンテーション後、ポスターセッションでより詳しいSDGsアクションをアピール。審査員だけでなくん、他チームの学生たちも熱心に説明を聴く姿が見られた。
地域課題解決に向けて2つのベストアクションが決定
表彰式では、まず学生投票特別賞が発表された。選ばれたのは創価大学理工学部丸太ゼミの「八王子産米の副産物バイオマスを有効利用した地域活性化とSDGsへ貢献する取り組み」。
投票した学生からは、「実現可能性が高く企業との協業のイメージが湧いた」「実際に活動していて、うまくビジネスアイデアとして成立していると感じた」などのコメントが寄せられた。
プレゼンターとなったゆるさとLaboの田中咲さんは、「今後、皆さんの活動がつまずいたりすることもあると思います。そんな時に同じような活動をしている人に相談することで、乗り越えられる例はたくさんあります。今回のこのつながりを大切にしていただけたらなと思います」とコメント。創価大学理工学部丸太ゼミの神崎羽子さんは、「これから実現に向けて、丸田ゼミの6人で活動していきます」と熱意を伝えた。
佐藤教授からの審査員賞は、WAKUWAKU!の「元スポーツ選手に特化した人材バンクによる地域農業の活性化」に授与された。佐藤教授は「問題に対する分析と共に、解決策にアイデアがあるかどうかが重要だと考えます。農家の人手不足問題を、元スポーツ選手のセカンドキャリアと組み合わせること自体にアイデアや発見があると思いました。ただ、人材バンクという名称は一般的すぎるので、例えば、農業の“農”と “スポ”―ツで“農スポ人材バンク”とするとか、中身が分かる名前にした方がいいかなと思いました」と総評した。受賞したWAKUWAKU!の髙橋結依さんは、「これからこのアイデアを実現していくために、持続可能な社会を目指して頑張っていきたいと思います」と語った。
田中名誉教授による審査員賞には、学生投票特別賞も受賞した創価大学理工学部丸太ゼミがここでも選ばれた。田中名誉教授は、「商品開発からのプロセスが非常にしっかりしていました。すでにいろんな企業からサポートも受けているので、実際に商品を販売してビジネス化できると思いました」と選定理由についてコメント。創価大学理工学部丸太ゼミの神崎羽子さんは、「八王子の活性化に尽力していきたいと強く思いました」と、2つの賞に選ばれた喜びを伝えた。
ベストアクションは2つあり、最初に+mirai の「のさりの書」が発表された。JCOM株式会社 サステナビリティ推進部 部長の和泉克典さんは、「高校生の時の授業で天草の地方創生に関わり、大学生になって地元を離れて改めて天草の魅力に気づいたというきっかけが響きました。その魅力を主観的に絵はがきに描いたり、地域ペイを組み合わせながら分析して、地域の魅力を発信していく姿勢が良かったです」と選考理由を伝えた。
その言葉に対して+mirai の原田美伶さんは、「このような賞をいただき、本当にありがとうございます。上京して約半年間が経ちましたが、これからも熊本の魅力を全国で発信できるように、また地域の魅力を発信できるように頑張っていきたいと思います」と述べた。
もう1つのベストアクションは、北九州市の課題を食で解決!!の「竹を食べる?!北九州市の空の玄関の名物お土産の提案」に授与された。選出理由についてJ:COMの和泉部長は、「害となっている竹そのものを食べてしまって、地域課題を解決していこうというところに面白みを感じました。すでにエアラインとも話が進んでいるということで、我々も加わって3社コラボのような形にできればいいなと思っています。最終的に得られた利益は竹害の根本解決に循環できる活動にしていけたらと思うので、共に解決していきましょう」とコメントした。
その言葉に北九州市の課題を食で解決!!の矢原由依さんは、「商品化の実現に向けて頑張っていきますので、一緒によろしくお願いします」と応えた。
ゲスト審査員の山之内すずさんが感じたこととは?
各賞の発表が終わり、今回、「大学生と考えるSDGsアクション支援プロジェクト」の審査に参加した感想を、山之内すずさんは次のように語った。
「本日は皆さんのアイデアに対するお話をたくさん聞かせていただいて、すごく勉強になりました。テレビのお仕事でSDGsに対していろいろな方からお話しを聞くことが多いのですが、今日は想像もしなかったようなアイデアにたくさん触れることができて、とても刺激になりました。同世代として皆さんのような方がいることがすごく誇りに思います。私も自分にできることを探して取り組んでいこう思います」。
また、佐藤教授は、「今日は様々な切り口やアイデアを見せてもらって、非常に興味深かったです。アイデアを考える時に一般的な解決策で終わらないように、アクションにつながる解決策を考えてもらえるといいなと思います」とアドバイス。
田中名誉教授は「どのチームも非常に熱意を持って課題に取り組んで、一生懸命、解決のアイデアを考えられたことを高く評価しております。できることならば、解決策に地元の人が儲かるように考えていただきたい。解決とビジネスという視点を両方とも成功させている事例もあるので、参考にしながら、引き続き皆さん、課題に取り組んでいただければ嬉しいです」と、今日の感想を述べた。
最後に、J:COMの和泉部長が閉会の挨拶を行った。「今日は参加していただき、本当にありがとうございました。課題解決は続けていくことが大事です。学生の間はもちろん、社会人になっても続けていただくこと。後輩の皆さんに引き継ぐなど、継続する方法はいろいろあると思います。活動を持続的に続けていっていただければ、我々のコミュニティチャンネルで取材させていただくこともあると思います。本日は非常に大きな刺激をいただきました。どうもありがとうございました」と、最終選考&表彰式を締め括った。
なお、今回の「大学生と考えるSDGsアクション支援プロジェクト」の審査/選考の様子、ベストアクションに選ばれた学生の取り組みなどは、2025年3月にJ:COMチャンネルにて放送予定だという。