「バイクを楽しみたいけれど、運転に自信がない」そんな初心者やリターンライダーをサポートするため、メーカーでは、さまざまな形でライディングレッスンを開催している。長い歴史を誇るヤマハ発動機のバイクレッスンの中から、初心者を対象にしたU35(35歳以下限定)のレッスンの様子を覗いてみた。

  • ヤマハ発動機が開催するバイクレッスン、その内容は? U-35のレッスンをレポートする

バイク人気を支えるために大切なこと

最近、道路を通行していると、二輪車の数が増えたと感じる。筆者の自宅のすぐ近くを通る幹線道路では、その姿を見ないことはないと言っていいほど、ひんぱんに目にする。気になって日本自動車工業会の統計を見ると、実際にも増えていた。国内での二輪車の年間出荷台数は、近年減少傾向ではあったところから、新型コロナウイルスの流行が始まった翌年の2021年からは反転していたのである。

とりわけ増加が目立つのは、251cc以上の小型二輪車で、2020年の約3.7万台から2023年は約6.8万台と、倍近くにまで増えているのだ。

しかしメーカーはこの状況を、手放しで喜んでいるわけではない。せっかく入ってきてくれた二輪車の世界を、交通事故などで嫌いになってもらいたくないからだ。だからこそ各メーカーは、二輪車を正しく安全に楽しく乗れるためのメニューを用意している。

ヤマハ発動機の「ヤマハライディングアカデミー」もそのひとつで、1968年に始まった安全運転指導の実績を基盤に、2005年に規格・体系化したものだ。3段階のインストラクター制度を設定し、可視化や電子化を積極的に進め、グローバル展開も可能とする内容とするなど、かなり踏み込んだ内容になっている。

  • ヤマハ発動機の「ヤマハライディングアカデミー」

現在は、運転免許を持っているけれど運転に自信がない初心者やリターンライダーを対象とした「ヤマハバイクレッスン」と、子どものバイク体験を保護者がサポートしながらいっしょに学んでいく「親子バイク教室」がある。大人向けの「ヤマハバイクレッスン」は、車両貸出レッスンと車両持込レッスンに分かれており、それぞれにオンロードレッスンとオフロードレッスンがある。さらに車両貸出のオンロードレッスンは、レッスン&ツーリングコースと、終日レッスンコースが用意されており、ライダー自身のやりたいことに合ったレッスンを選択できる。

全国で開催するヤマハバイクレッスン

2024年は車両貸出レッスンだけで26回も行われ、場所も北海道から九州まで全国各地で開催している。今回、10月に東京・あきる野市で開催された、U35(35歳以下限定)のオンロードレッスン&ツーリングコースの様子をレポートしよう。

  • 開講式の様子

レッスンの参加者数は15人。講習者ひとりに対してインストラクター2人がついてしっかりと教えられるよう、このぐらいの人数を上限としているという。インストラクターはロードレースやモトクロスの選手だった人も多く、初心者にとっては心強い先生だ。

開講式ではインストラクターからの諸注意があったあと、受講者が自己紹介を行った。男女比は15人中8人が女性で、運転免許は取っているけれど路上でバイクに乗った経験がないという人も複数名いる。

  • バイクレッスンのために考案された準備運動

自己紹介が終わると、バイクレッスンのために考案された準備運動を全員で行い、レッスンで使うバイクの説明を受けた。使用するのは250ccの「XG250トリッカー」。軽量でスリム、コンパクトな車体なので扱いやすく、加減速でサスペンションが大きく動くことが特徴だ。受講者にとっては乗りやすく、インストラクターは操作の様子を外から確認しやすそうだ。

ちなみに車両貸出レッスンは、ヘルメットをはじめとする装備はすべてレンタルで用意されているので、手ぶらでも参加OKだ。

準備ができたらいよいよコースへ。バイクに跨ると、まずは発進の際に重要な半クラッチの練習から始まる。クルマと違ってエンストすると転倒につながることもあるので、時間をかけてじっくり行っていた。

次は隊列で周回走行に移るが、半クラッチがマスターできていない人は、別グループで練習を続ける。最終的にはすべての受講者が同じメニューをこなせるようになっており、つまづいたとしても置いていかない丁寧な指導だ。

  • ブレーキやギアチェンジのタイミングも指導を受ける

続いては、ブレーキの練習。直線で速度を上げたあと、短距離で止まるという内容だ。公道では試せない急ブレーキの体験ができるのは、初心者にとって貴重な経験かもしれない。その後はギアチェンジのタイミング、前後ブレーキの使い方などを練習した。

初心者も安心して公道ツーリングを体験

用意された昼飯を食べたあと、午後のレッスンへ。まずはUターンの練習だ。ブレーキを使わず、半クラッチを活用してパイロンを小回りするというもので、乗り慣れていても苦手という人が多いはず。初心者が苦手な動作もしっかり教えてもらえるありがたいメニューに思えた。

  • 午後一番はUターンの練習

その次は長い直線からヘアピンカーブ、スラロームなどを織り交ぜた総合コースで、これまで学んだテクニックをすべて使いながら走行し、場内レッスンは終了した。一度テントに戻り、ツーリングの前に注意事項の説明があった。

こちらも走行時や停止時、駐車車両がある時のグループでのマナーを細かく教えてくれて、講習後も役に立ちそうだったし、ウインカーを出すタイミングなどはインストラクターが合図してくれるので安心でもある。

  • 学んだことをもとに、いざツーリングへ!

ツーリングは3グループに分かれてスタート。市街地から山道まで30kmほどの距離を走る。朝の時点では半クラッチができない人もいたが、たった半日でここまで上達できるメニューや指導が組まれているのは心強い。

終了後、受講者に感想を聞いた。

免許は取ったが車両は持たず、公道走行が初めてだったという女性は、初心者向けで安心だったこと、同世代の仲間を作りたいことから応募。初めての公道はドキドキ感もあったが、練習のためもあって安心してこなすことができたとのことだった。

10年ぐらい前に250ccを2年間乗っていたが、その後上京で乗る機会がなかったという女性は、最初はクラッチがどちらかも忘れていたが、こちらが知らないテクニックも教えてくれたと言い、またバイクが欲しくなったと話していた。

インストラクターの方にも話を伺った。講習でもっとも気をつけているのは、転倒して怪我をしてバイクが嫌にならないようにということだそうで、講習者ひとりに対してインストラクター2人をつけることで、サポートを手厚くするしているという。

ツーリングを含めたレッスンは、技能的に難しい人のためにショートコースを用意するなど、なるべく体験してもらうという方向で考えているのこと。若い人は飲み込みが早いこともあり、今回はシフト操作を忘れていた人もいたが、最終的に同じコースを体験できたことは良かったと話していた。

なおレッスンの費用は、今回のような車両貸出・オンロードレッスン&ツーリングコースで1万5,000円。手ぶらで参加でき、基本から公道の走行まで体験できることを考えれば、安いのではないだろうか。「バイクに乗りたい」の気持ちを後押しし、ツーリング仲間を得る機会にもなるヤマハバイクレッスン、年内は大分県での開催を予定しているほか、今後の開催日程はヤマハ発動機「ヤマハバイクレッスン」のWebサイトを確認してほしい。