テレビ画面を注視していたかどうかが分かる視聴データを独自に取得・分析するREVISIOでは、13日に放送されたNHK大河ドラマ『光る君へ』(総合 毎週日曜20:00~ほか)の第39話「とだえぬ絆」の視聴者分析をまとめた。

  • 『光る君へ』第39話より (C)NHK

    『光る君へ』第39話より (C)NHK

「藤原朝臣惟規をもって、従五位下に叙す」

最も注目されたのは20時27分で、注目度80.9%。まひろ一家が絶頂を迎えるシーンだ。

「正六位上・藤原朝臣惟規をもって、従五位下に叙す」内裏からの使者は、まひろ(吉高由里子)の弟・藤原惟規(高杉真宙)に向かって確かにそう言った。「臣惟規、詔を拝し奉り、慎みてお受けつかまつりまする」惟規が頭を下げると、そばで控える姪の藤原賢子(南沙良)と乳母のいと(信川清順)も、惟規にならって頭を下げた。

使者を見送ると、惟規は開口一番、「いやー、信じられないな。そんなに真面目に働いたわけでもないのに」と、あっけらかんと言った。今回の出世が一番信じられないのは、惟規本人だった。

「そういうことを申すでない」父・藤原為時(岸谷五朗)が軽くたしなめるが、みんな笑った。「若様の赤い束帯、ご用意してございますよ」いとの唐突な言葉に、「え?」と、惟規は驚きの声を上げた。「いつか、こういう日が来ると思ってひそかにご用意しておりました」惟規が幼いころより乳母として仕えてきたいとは、惟規を溺愛していると言っていい。「いとは、俺が赤い束帯を着るほど偉くなると思っていたんだな」「幼き日より、私がお育て申し上げたのでございますよ」「そうだな」いつもふざけた調子の惟規だが、さすがに込み上げてくるものがあるようだ。

「若様…」「いと…」2人は強く抱きしめ合った。「上向いてまいりましたよ。ご運が」いとは感極まり、ついに泣き出してしまった。「ははははは…」「若様…」「よかった、よかった」為時と賢子もおだやかな表情で2人を見守っている。一家にはさらに思いがけない僥倖が訪れた。春の除目で為時が越後守に任じられたのだ。今、まひろ一家は幸せの絶頂にいた。

  • 『光る君へ』第39話の毎分注視データ

束の間の幸せを喜ぶ「いとさんも感無量だね」

注目された理由は、前回の予告で惟規の退場が示唆されていたため、惟規の登場シーンに視聴者の注目が集まったと考えられる。

前回の予告編や史実での惟規の没年から、多くの視聴者は今回で惟規が退場となることを把握していたと思われる。グラフを見ると惟規の登場するシーンでは注目度が上がっていることが分かる。そんな中、惟規が従五位下に昇り、為時は越後守へ任官されるなど、まひろ一家の栄達が描かれたこのシーンを、『光る君へ』お得意の、いったん持ち上げてから悲劇に突き落とすパターンだと視聴者は確信したのではないだろうか。

露骨な死亡フラグともいえるこのシーンだが、X(Twitter)では、「いとさん、本当に嬉しそう…」「惟規くん、とうとう従五位下に。いとさんも感無量だね」「赤い束帯がよく似合っている」「いとさん、為時パパが宣孝さんに束帯を借りにいったの覚えてたんだな」といった、束の間の幸せを喜ぶコメントが多く寄せられた。

従五位下という位は、名実ともに貴族として認知される節目の位と言える。重要な役職を任され朝廷での発言力も大きくなる。今回、従五位下に叙位された惟規のためにいとが赤い束帯を用意していたが、束帯は位階に応じて色が分かれていた。これを当色(とうじき)と呼ぶ。初位は浅縹(あさはなだ)、八位は深縹(こきはなだ)、七位は浅緑(あさみどり)、六位は深緑(ふかみどり)、五位は浅緋(あさひ、あさあけ)、四位は深緋(ふかひ、こきあけ)、二・三位は浅紫(あさむらさき)、一位は深紫(ふかむらさき)と細かく分かれている。いとは惟規が本当の貴族となることを信じて、ずっと待っていたのだ。