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故障者が相次ぐも、地力の強さでプレーオフ進出を決めているロサンゼルス・ドジャース。しかし、レギュラーシーズンでの戦いとプレーオフでの短期決戦は全くの別物とされており、ドジャースの戦い方にも変化が求められる。そこで今回は、プレーオフでの戦いを見据えたドジャースの野手陣について詳しく見ていきたい。(文:Eli)
今シーズンのメジャーリーグは
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スタメンは”ほぼ確定”
全体的に野手はほとんど陣容が固まっている。レギュラーシーズンと同じ布陣でプレーオフに臨むはずだ。
その上で重要になってくるのが選手運用だ。右投手が先発の場合はトップに大谷翔平、ムーキー・ベッツ、フレディ・フリーマンのMV3を置き、テオスカー・ヘルナンデス、ウィル・スミス、マックス・マンシーのクリーンアップ、トミー・エドマン、ギャビン・ラックス、ミゲル・ロハスで締めくくる。
比較して左腕が先発の場合は少し変わってくる。先ず左投手にwRC+165とめっぽう強いテオスカーとフリーマンを交代。また左投手を苦手としているマンシーの打順を下げ、エドマンを上げる。
さらには、左投手を全く打てないラックスを外し、キケをラインアップに入れる。今季のドジャースは左右で成績に大きく差が出る選手が多い。選手の弱み強みをどう活用するかがカギとなる。
隠れ重要点となりそうなのがアンディ・パヘスの使い方だ。パヘスは今季左投手に対して101打席に立ち打率.344,wRC+145と実は大谷より成績が良い。
しかし、守備位置である外野陣の3人、左からテオスカー、エドマン、ベッツは成績が同等かそれ以上でパヘスのポジションがない。
対左打者wRC+
アンディ・パヘス(OF) 145
トミー・エドマン(OF/IF) 247 (30打席のみ)
テオスカー・ヘルナンデス (OF) 165
ムーキー・ベッツ (OF/IF) 144
現状はショートにロハス、外野が上記3人で配置されているが、左投手先発時にはエドマンの万能性を活かしてショートへ移動、パヘスを空いた外野のポジションに移すのも良いのではないか。
また、DSで当たりそうなサンティエゴ・パドレス、アリゾナ・ダイアモンドバックスにはタナ―・スコットや松井裕樹、A.J パクなど強力な左リリーフもおり、いつパヘスのカードを切るのかが重要な決断となりそうだ。
ベンチ入りを誰にするか
現在メジャーのベンチ入り可能野手は、基本の13人から14人に拡大されており、プレーオフでは13人に戻される。これはつまり1人野手が余るということだ。スタメンは大体固定されているのでベンチメンバーを1人削ることになる。
現在のドジャースベンチはユーティリティープレイヤーのキケ・ヘルナンデス、クリス・テイラー、控え捕手のハンター・フェドゥーシャ、控え外野手のケビン・キアマイアーとパヘスが入っている。
全員シーズンの打撃力に大きな差はないため、チームにフィットするかで決めることになる。オースティン・バーンズは故障によりシーズン絶望の報道が出ているので、ここではフェドゥーシャを入れる。
先ず入るのが控え捕手のフェドゥーシャだろう。他に捕手をできる選手がいないため、よっぽどのことがなければロースター入りは確定である。
次に入るのがキケだ。レギュラーシーズンの成績は物足りないが、キケのポストシーズンの成績は非常に優秀だ。通算72試合、202打席に立ち、打率.274,13HR,OPS.893となっている。ベッツ、フリーマンの沈黙により敗退した昨季のNLDSでもヒットを3本放つなど,一人気を吐いた。
そして代走、守備固めとして身体能力が高く、シーズンでも成績を残しているパヘスは入る可能性が高い。23歳の若手としてのエネルギーも発揮してほしいところだ。
残ったのがテイラーとキアマイアーだ。2人とも打撃成績は非常に低く、空振り三振も多い。パワーもないためコンスタントに長打を打てるわけではない。
テイラーはドジャース、キアマイアーはレイズの一員として長く、2人ともポストシーズンの経験は豊富だ。2人で異なる箇所はキアマイアーではリーグトップクラスの外野守備力と走力を持ち、テイラーは内外野守れるユーティリティー性と打席でボール球を振らず四球を選べるアプローチの良さが挙げられる。
能力以外の事項を挙げるとキアマイアーは今季で引退を発表。テイラーはドジャースで様々な記憶に残る瞬間を生み出してきた。このように同じようなスペックの2人である。どちらがロースター入りするのだろうか。
ドジャースが誇るトッププロスペクトはロースター入りするか?
以前テオスカーのIL入りが可能性として浮上した際にささやかれたのが、MLB.comのランキングでドジャース傘下No.1の評価を受けるドルトン・ラッシングの昇格だ。
2022年ドラフトでドジャース入りしたラッシングは今季初めてAAAに到達し、28試合に出場、打率.273,5HR,OPS.882とマイナーの上位階層でもしっかりやれることを示している。
昨季のポストシーズンではテキサス・レンジャースのエヴァン・カーターが、2022年はヒューストン・アストロズのジェレミー・ペーニャがルーキーとは思えない活躍をした。
投手とは異なり野手陣には故障者がいないため特例が使えない。故にラッシングのロースター入りの可能性は限りなく低いが、頭の片隅に入れておきたい。
”勝負強さ”は存在する…?
最後にプレーオフに関するちょっとした話を紹介する。プレーオフに限らず野球では頻繁に「勝負強さ」が言及される。しかし「勝負強さ」が存在するのかは意見が分かれるところだ。
これについて米メディア『The Athletic』のEno Sarris氏が昨年の10月に書いた記事が非常に面白い。タイトルが「古いプレーオフの迷信について数字は何を示すか」とあり、様々な野球に関する迷信をデータ分析している。
その中に勝負強さ、英語では「Clutch」と呼ぶが、それは選手の特性と言えるかについて言及している。例えば「選手にパワーがある」と言うのはその選手の特性として言える。
大谷翔平は何年も連続でホームランを30~50本量産しているのに対し、ミゲル・ロハスはその11年のキャリアで2桁に届いた年は2018年のみだ。この場合、大谷にはパワーがあるのに対し、ロハスにはパワーがないことになる。
では、これと同様に「勝負強さ」は特性と言えるだろうか。これを言い換えれば「勝負強さ」があるとされる打者はこれを複数年連続で達成できるかと言うことだ。
記事では近年の研究を挙げ、現在の技術では「勝負強さ」は存在しないこと、存在したとしても非常にわずかな差(打率では.001の違い)であることが判明したとしている。
一方で、試合中の心拍数などを測ることで緊張度合いを測り、精神の強さなどを測れば「勝負強さ」が証明できるかもしれないと指摘している。
投手、特にリリーフ陣でもどんな場面でも動じず自分のピッチングをするいわゆる「強心臓」っぷりがときより言及されるが、この能力が科学的に解明されるのも近いのかもしれない。
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【了】