アメリカン・エキスプレスは9月25日、スモールビジネス支援と地域活性化に関するメディア説明会を開催。中小事業者の支援プログラムについて紹介したほか、京都府、および北海道においてショップを営む2人のオーナーを招いたパネルディスカッションを実施した。

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    アメックスがメディア向けに説明会を開催。テーマは「アメリカン・エキスプレスが考えるスモールビジネス支援と地域活性化」

「SHOP SMALL 2024」とは?

冒頭、アメリカン・エキスプレス副社長の津釜宜祥氏が登壇して説明した。同社は2010年より、まずは米国において地域コミュニティのスモールビジネスを支援し、経済の活性化を促す取り組み「SHOP SMALL」を開始。そしてここ日本でも2017年から同プログラムを展開している。

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    アメリカン・エキスプレス・インターナショナル, Inc. 加盟店事業部門マーケティング アジア太平洋地域 副社長の津釜宜祥氏

津釜氏は「私たちのビジョンは『日々、世界最高の顧客体験を提供する』です。また世界共通で掲げる基本理念BLUE BOX VALUESの中で『お客様をバッキング(応援)します』『地域社会(コミュニティ)を支援します』『多様性を尊重します』という方針を示しています。これを受けて立ち上がったのがSHOP SMALLです」と紹介する。

日本の中小事業者の多くは、資金面で課題を抱えている、経営のノウハウがない、集客・情報発信がうまくいかない、といったケースで悩んでいる。そこでアメリカン・エキスプレスでは、そんなスモールビジネスの経営者たちをバックアップすべく取り組みを進めている。

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    日本におけるスモールビジネスの経営者の意識(2022年スモールショップオーナー意識調査: アメリカン・エキスプレス調べより)

今年は「SHOP SMALL 2024」として、資金面でビジネスを応援する「RISE with SHOP SMALL」、イベントで集客と情報発信をサポートする「SHOP SMALLマルシェ」、人気店のノウハウを共有できる「SHOP SMALLセミナー」を開催する。

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    「SHOP SMALL 2024」日本における取り組み

RISE with SHOP SMALLは「多様性に配慮した商品・サービスを展開している」「地域の活性化に貢献している」といった側面で優れているスモールビジネスに支援金を出すプログラム。今年はA賞として2つの事業者に500万円、B賞として3つの事業者に200万円、特別賞として2つの事業者に200万円を用意した。

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    支援金でサポートするRISE with SHOP SMALL。総額2,000万円を用意した

「SHOP SMALL 2024を通じて中小事業者を元気にし、また日本の街を多様にすることで地域の活性化にも貢献していけたら」と津釜氏。このあと、RISE with SHOP SMALLにおいて見事受賞した2人の事業者がプレゼンを披露した。

障害児と健常児が共に使えるプロダクト「IKOU」

京都府京都市でショップ「IKOU」を展開するのは、Halu代表取締役の松本友里氏。自身の子どもに脳性まひによる運動機能障害があることが判明したことをきっかけに、障害児と健常児が共に使えるプロダクト・サービスの開発をスタートした。

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    「RISE with SHOP SMALL」でA賞を受賞したHalu代表取締役の松本友里氏

この日、壇上では「IKOUポータブルチェア」を紹介。コンパクトに折り畳めて持ち運べる障害児専用の椅子だった。松本氏は、開発の経緯について「従来の福祉機器としての椅子は大きくて重く、とても持ち運ぶことはできません。外出先で使える椅子がないために、これまで障害児とその家族は行動範囲を制限されてきました」と説明。そこでIKOUポータブルチェアを発売したところ、利用者からは「お出かけの回数が増えた」など、たくさんの喜びの声が寄せられたという。ブランドではその後も、肌への優しさと吸水速乾を両立したよだれかけの「IKOU Bib」、天然素材の心地よさにこだわった「IKOUキッズウェア」などを開発している。

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    IKOUポータブルチェアは折り畳み式。障害児とその家族の"外出したい気持ち"を後押しする

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    利用者の「IKOUがあればなんとかなる、が夫婦の合言葉になりました」「兄弟みんなに沢山の経験をさせたい、そんな想いに寄り添ってくれる椅子です」といった声も紹介された

北海道音威子府村の牧場が営むジェラート店

一方で、北海道の音威子府村にて牧草からこだわって生産した生乳を使ったジェラート店を展開しているのはGelateria the GreenGrass代表の名徳知記氏。地域の高齢化にともない、現在、村内では唯一の酪農家となっている。ジェラート店を開店したのは2023年のこと。たちまち評判となり、人々の交流の場になり、これを目当てに訪れる旅行者も増加した。ひいては"北海道で一番小さな村"の雇用を増やすことにも成功したそうだ。

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    「RISE with SHOP SMALL」でB賞を受賞したGelateria the GreenGrass 代表の名徳知記氏

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    店舗の外観。名徳氏は「昨年は大晦日にも営業しまして、氷点下15度に冷え込む屋外まで行列ができました。そのときショーケースの中の温度はマイナス12度でした」と笑いを誘う

「子どもの頃から甘いものが好きで、お菓子の国に住むことを夢見ていました。大学で農業経営を学んだ後に就農したんですが、将来的には、牧場のミルクを使って何かを作りたい気持ちがあった。オープンに際しては、村民の方をはじめ、役場、農協、商工会の方たち、たくさんの人に協力いただいたほか、いくつかの嬉しい偶然も重なったんです。これからもジェラート店を通じて、村を応援していければと思っています」と名徳氏。

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    津釜氏を交えてパネルディスカッション

今後、RISE with SHOP SMALLで獲得した支援金は、どんなことに使う予定だろうか? そんな質問に、松本氏は「障害者の課題を解決する商品に振り切ってしまうと、プロダクトを量産できません。そこでIKOUブランドは、これからも障害のある子もない子も包み込む、子ども向けのインクルーシブ・ブランドとして展開していきます。今回いただいた資金を活用して、専門の方たちのサポートも受けながら、皆さんが使いたいと思う商品の開発に役立てていければと思っています」、名徳氏は「いまは砂利敷の上に店舗が建っているだけの状態です。お年寄りやお子さんが歩きやすいように道を舗装し、また看板も立てたいと思います。地域のコミュニティの中核になるような場所にしていけたら」と説明していた。