高級日本酒ブランドである「SAKE HUNDRED(サケハンドレッド)」は、米ぬかを醸造に使用した新商品『弐光|NIKO』(9,900円)を9月24日に発売した。同ブランドは従来、ブランドサイトでのEC販売が主流だったが、本商品は小売店および飲食店限定で販売される。
米ぬかを使っためずらしい酒は果たしてどんな味わいなのか。発売前の9月12日に開催された発表会に参加してきた。
日常と非日常の間に位置する"扉"のような酒
数千円が一般的な日本酒業界において、数万円~数十万円の高価格帯日本酒を提供するSAKE HUNDRED。日本酒のラグジュアリー市場を切り拓いてきた同ブランドが次に手掛けるのはなんと"米ぬか"を使った日本酒・弐光(にこう)だ。
同商品のコンセプトは「開かれる扉、非日常への誘い」。SAKE HUNDREDのブランドオーナーである生駒龍史氏は、その詳細を次のように説明する。
「SAKE HUNDREDは、強烈に特別であることを重要視しています。その特別は何かというと、非日常であることです。非日常の世界をSAKE HUNDREDとするならば、弐光は日常と非日常の間に存在する"扉"のようなお酒。ちょっとしたパーティなど日常の延長線のシーンでも、弐光があることによって、ほのかに非日常の雰囲気をまとう。そんなお酒になっていくと思います」
加えて、メインのEC販売ではなく小売店や飲食店限定での販売戦略に関して「今年で(ブランドを立ち上げてから)6年経つが、5年経ったあたりからインターネットの販売が安定し、ブランドのイメージも少しずつ広まってきた。メインの販売はあくまで3~5万円の商品ですが、(顧客との)接点を取るための扉は弐光が果たしていきます。"高いと売れないんじゃないか"というリテール市場は、変わってきている部分もあるが、それをさらに変えていきたい」と意気込んだ。
本商品の特徴である「米ぬか醸造」は、醸造の⼀部に同ブランドのフラグシップ日本酒である『百光』の米ぬかを使用。
玄米を精米したときに排出される米ぬかは、米菓や家畜の飼料などに再利用されることが多いが、⼀般的に醸造への使用は風味を損なうため積極的に使われることはない。だが、同ブランドと醸造パートナーである新潟の白瀧酒造との研究により、上質な甘味を生み出すサステナブル素材としての活用に成功。
SAKE HUNDREDの商品開発責任者である河瀬陽亮氏は、「米ぬかを使うと、ぬかくさくなってしまうため積極的に(酒造りに)は使われないが、今回、製法・使用する(米ぬか)の量・もろみの味わいのバランスを考慮することで、米ぬかのマイナス面が消え、プラスにもっていくことができた」と説明した。
今回、弐光は白麹四段仕込みという独自醸造法を採用。多くの日本酒は米・麹・水を3回に分けて投入する「三段仕込み」によって醸造されるが、弐光はそこからもう⼀度仕込みを行う「四段仕込み」で造られている。
加えて、一般的な日本酒では黄麹が使用されるところを、ここではクエン酸を多く生成する特徴を持つ白麹を使用。このかけあわせがリッチな甘味・酸味につながるのだという。
また、超低温仕込みも重要なポイント。もろみの温度を低温に設定し、じっくり発酵を進行させることによって、生成される炭酸ガスをお酒に溶け込ませ、フレッシュな風味を閉じ込められる。
"ぬかっぽい味"はしない…?
では、その気になる味わいは?
ワイングラスで提供された弐光は、和梨のように爽やかでジューシーなフルーツを想起させるようなみずみずしい香りと、とろりとした質感が特徴。
舌の上では上品な酸が広がり味のふくらみを感じられるほか、余韻にかけて米の旨味が広がり、心地よいフィニッシュを創出してくれる。個人的に米ぬかの雑味や苦みのようなものを感じると思っていたが、想像とは全く違うジューシーさとクリアな味わいに大変驚かされた。
相性がよいというトマトのカプレーゼと一緒に味わうと、弐光がトマトの酸味を引き立ててくれる優秀な盛り立て役に。
そのほか、牛肉のグリルなどとも相性抜群。ぜひ、気になる方は食事とのペアリングも楽しんでみてほしい。
最後に生駒氏は、弐光の今後について次のように語った。
「米ぬかをどう有効活用できるかというのが、この商品が背負っている1つのテーマ。米ぬかの量を増やす、またはより良い味に変えていくといったことを研究開発の中でやり続けていきたい。また、これはまだイメージですが、論文を出せたらいいなと。米ぬかを使ってこういうことができますとなれば、これは僕らの利益ではなく産業利益になると考えています」
加えて、国内での地盤を固めたあとは、世界への展開も見据えているのだそう。新商品・弐光は、新しいステージを切り拓けるのか。今後の展開に注目したい。