伊藤園とタリーズコーヒージャパンは4日、都内で「TULLY'S COFFEE」ブランド方針説明会を開催。"コーヒー2050年問題"の解決に向けた取り組みや、「コーヒー豆のこだわり」に関する新施策を発表した。ブランドアンバサダーに就任した俳優の新木優子さんが、コーヒー豆の希少品種の接ぎ木に挑戦するひと幕もあった。

  • 「TULLY'S COFFEE」ブランド方針説明会が開催

■コーヒー2050年問題に対応

冒頭、タリーズコーヒージャパンの内山修二氏が登壇し、コーヒーの現状とショップの戦略について説明した。直近2023年度のブランド売上は、ショップで404億円+RTD製品で426億円で、合わせて830億円となった。内山氏は「ショップブランドの規模で申し上げると、スタバさん、コメダさんに続いており、ほぼドトールさんと同程度、との認識です」と胸を張る。

  • タリーズコーヒージャパン 取締役 マーケティング本部長の内山修二氏

  • タリーズコーヒーブランドの事業状況

店舗数に関しては2024年7月末現在で796店舗を展開。コロナ禍を受けて一時期、店舗数も伸び悩んだが、人流の回復とともに店舗数・売上高が伸長した。特に2023年度は、過去最高の店舗数・売上高となった。内山氏は「この2024年度の第1四半期も、売上高は前年比で110%と大変好調です」と説明する。なお今後の店舗展開については、むやみに数を追わず、タリーズのクオリティ(商品、サービス、空間)を維持できる範囲で拡大していくとした。

  • 人流の回復とともに利益も戻った

ここで内山氏は、いわゆる"コーヒー2050年問題"にも言及。世界規模の気候変動によって、美味しいコーヒーには欠かせないアラビカ種のコーヒー豆の収穫量が2050年までに半減してしまうことが危惧されているが、タリーズコーヒージャパンではどのような対策を講じているのだろうか――。ここから先は、タリーズコーヒーマスターの南川剛士氏がプレゼンを引き継いだ。

  • 伊藤園 原料部 副部長で、TULLY'S COFFEEコーヒーマスターの南川剛士氏

南川氏は「コーヒー原料の取り組み」について解説。それによれば、同社では長期プロジェクトとしてブラジル・バウ農園にて2007年より、希少品種「レッドブルボン」を苗から栽培する産地開発に取り組んでいる。またペルー・センフロカフェ農協では2019年より、ティピカ種+ロブスタ種で接ぎ木するプロジェクトを開始した。

  • コーヒー豆を次世代に残すための長期プロジェクトが進行中

ティピカ種は、いまグローバルで商業生産されているコーヒー品種のうち、最も原種に近いとされている希少品種。味わいが素晴らしい一方で、病虫害に弱い、育て方が難しい、生産性が低い、といった理由から農園では生産されなくなってしまったそうだ。「ほぼ全滅状態にあるティピカ種の樹を、病虫害に強いロブスタ種の根に接ぎ木しています。テストでも良い結果が出ましたので、2024年10月から2025年2月にかけて、農地を拡大して展開する予定です」と南川氏。こうした地道な活動を通じて、コーヒー事業を持続可能なものにしていきたい、と力を込める。

  • 接ぎ木により、品質が良い+病虫害にも強い、夢のようなコーヒー豆を育てていく

■カフェラテの美味しさの秘訣は?

舞台上では、タリーズバリスタコンテスト16年および17年のチャンピオンである、チーフバリスタの石川千晴さんによるデモンストレーションも行われた。石川さんによれば、カフェラテの味を決めるものはエスプレッソ、牛乳、そしてバリスタの腕だという。

  • タリーズコーヒージャパン マーケティング本部 ドリンクグループ チーフバリスタの石川千晴さん

「カフェラテはシンプルな作りなので、素材のこだわりが非常に重要になります。タリーズでは、エスプレッソクラシコという豆を使用しています。ローストしたアーモンドのような香ばしさ、そして華やかで複雑な味わいが特徴です。エスプレッソマシンは、バリスタのひと手間が必要な半自動式です。挽いた粉をフィルターに詰めて圧力をかけて押し固める"タンピング"という工程によって、コーヒーの美味しさを抽出します」。このあと北海道の生乳100%を使用した無調整の牛乳に空気を取り込むミルクスチーミングを行い、クリーミングな質感を実現。エスプレッソとあわせ、美味しそうなカフェラテが完成した。

■2024年秋冬のタリーズ新商品

伊藤園の相澤治氏は、2024年秋冬のタリーズ新商品について紹介した。相澤氏によれば、コロナ禍によりコーヒー飲料の市場規模は2020年~2023年と縮小傾向にあった。しかしタリーズでは、ショップにおいて販売好調を維持できた。その理由については「ご自宅でこだわりのレギュラーコーヒーを淹れて楽しむお客様が非常に増えたことが予想されます」と分析する。

  • 伊藤園 マーケティング本部 コーヒーブランドマネジャーの相澤治氏

  • コロナ禍でもタリーズは販売好調だった

これを受けて「お客様がコーヒーの味わいに求める水準も上がったのではないか」と相澤氏。そこで今秋は、タリーズのバリスタが豆の選定、焙煎を監修した『BARISTA'S BLACK』および『BARISTA'S BLACKキリマンジャロ』の販売を強化する。

  • 『BARISTA'S BLACK』のボトル缶390ml。希望小売価格は176円

  • 『BARISTA'S BLACKキリマンジャロ』のボトル缶285mlは165円

  • レギュラーコーヒー(粉)商品の『キリマンジャロKIBOタリメ』は10月9日にショップ発売へ

このほか「コーヒーの苦みが苦手」という消費者に向けた新商品も展開する。それが「香りたつ苦くないエスプレッソ。AROMA ESPRESSO」と銘打った新シリーズ。相澤氏は「ブラックは飲めないけど甘すぎるラテには満足しないお客様にはノンシュガーラテ、コーヒーの香りとミルクの調和を愉しみたいお客様にはカフェラテ、飲みやすさとコーヒーの味わいを求めるお客様にはクリアブラックをご用意しました」と紹介する。いずれも発売日は9月9日、販売地域は全国。

  • AROMA ESPRESSOシリーズはPET500ml商品。『ノンシュガーラテ』(左)は183円、『カフェラテ』(中)は194円、『クリアブラック』(右)は172円

■接ぎ木にチャレンジ

説明会の最後には、ブランドアンバサダーの新木優子さんが登壇。タリーズコーヒーマスターの南川氏にレクチャーを受けながら、ティピカ種+ロブスタ種による接ぎ木を体験した。教えられた通り、手際よくロブスタ種の根にティピカ種の樹を接ぎ木していく新木さん。南川氏に「素晴らしいです。現地で即戦力として活躍できます」と褒められると、満面の笑顔を見せていた。

  • 接ぎ木に挑戦する、新木優子さん