東武鉄道と日立製作所は9月3日、生体認証を活用したセルフレジ「SAKULaLa」(サクララ)をコンビニ、家電量販店、ショッピングモールなど全国の100か所以上に順次導入していくと発表した。指をかざすだけで決済できるシステムで、店舗のポイントも付与され、アルコール類も(年齢確認の手間なく)購入できるのが特徴。都内で開催されたメディア発表会にはタレントの辻希美さんが登壇し、サービスを初体験した。

  • 東武鉄道と日立製作所が、生体認証を活用したSAKULaLaを本格展開する。発表会には辻希美さんのほか、公式キャラクターのサクラッコ&ララガイもPRに駆けつけた

手ぶらでモノが買える時代に

東武と日立は、スマートフォンやICカードなどを一切使わず、生体認証を活用することでデジタル空間上に保存されている個人の属性情報であるデジタルアイデンティティに安全にアクセスするサービスを開発中。今後、決済・ポイントの付与・本人確認などのサービスを、業種を横断してワンストップで提供する世界の実現を目指している。

  • 東武と日立は「デジタルアイデンティティの共通プラットフォーム」を通じて社会課題を解決するという

メディアにはSAKULaLaのデモが披露された。セルフレジで支払金額が決定した後に、決済方法として「指静脈認証」を選択。指を専用装置にかざすと、指静脈認証により事前登録した個人情報データと紐づいた。ここで登録済みの電話番号の下4桁を入力すると、支払いに使用するクレジットカードの選択画面に遷移。任意のカードを選ぶと決済が完了した。

  • デモの様子。これにより、お財布、スマートフォン、ICカードなどを携帯せずとも、手ぶらで店舗でモノが買えるようになる

今後は、コンビニ、家電量販店、ショッピングモール、鉄道など様々な業種に本格展開する。現時点では、9月3日より東京ソラマチR1Fにて、9月26日より福岡天神の商業施設ソラリアステージの催事スペースのポップアップストアにて、11月より埼玉県越谷・川越エリアの飲食店など約20店舗にて『SAKULaLa』の導入が決定している。また2024年度中には東京スカイツリーのオフィシャルショップ、2025年度には上新電機の大阪2店舗および東武東上線の座席指定制列車「TJライナー」、そして2026年度にはファミリーマートでも使えるようになるという。

  • 今後の導入計画。2025年度には顔認証にも対応。将来的には、鉄道改札への導入も考えられている

メディア発表会で、辻希美さんは「思ったより簡単な操作で決済できました。たとえば普段、小さい子どもを抱っこしながらお買い物をするようなシーンがあります。カバンの中からスマートフォンを探すのは大変だし、指で決済できるのはとても助かります」と笑顔を見せる。

  • タレントの辻希美さん。子育て中の同世代にも利用をオススメする

ポイントを貯めるサービスにも対応しているということで「お財布の中からポイントカードを探したり、スマホのアプリを起動させる手間も省けるわけですね。時短にもなるし、子どももグズらないし、とても楽になると思います」。このほかヨガやトレーニングジムなどで会員証の代わりにもなったら便利、と話していた。

  • 舞台上でデモを体験した

社会インフラにしていきたい

日立製作所の石田貴一氏は、生体認証を活用した「デジタルアイデンティティの共通プラットフォーム」を提供するメリットとして、省人化により労働力不足を改善できる、幅広い世代が利用できることで世代間のデジタル格差を解消できる、不正・なりすましの詐欺被害を防げる、災害時に身分証明書がなくても本人確認できる、といったポイントを挙げる。そして「東武鉄道様との共創により、今後も様々なユースケースに対応していきます。ゆくゆくは、人々が安心して利用できる社会インフラにまで成長させていけたら」と期待を寄せる。

  • 日立製作所 マネージド&プラットフォームサービス事業部 事業部長の石田貴一氏(左)と、東武鉄道 執行役員 経営企画本部長の前田隆平氏(右)

  • 東武・日立のあゆみ

これを受けて東武鉄道の前田隆平氏も「日立製作所様と協力して、このプラットフォームを東武グループにおける第3の社会インフラにしていきたい。最終的な目標として、あらゆる生活シーンで生体認証が使われる社会をつくっていきます」と力を込める。ちなみに2024年4月より東武ストア3店舗で実施したトライアルの結果については「中高年層の方にたくさんご利用いただけました。レジで会計する時間が半減した、登録キャンペーン終了後も継続利用している、といったポジティブな声も集まっています」と報告した。

  • これまでの取り組みと実績

  • 今後は、顔認証の対応、国内の主要なポイントサービスとの連携なども予定している

石田氏、前田氏はメディアからの質問にも対応した。生体認証サービスの利用のため、個人情報などを登録することに抵抗感を示す消費者もいるのでは、という質問に前田氏は「究極の個人情報を取り扱うわけですから、日立様でも東武でも、最大限の努力で安全性を担保してまいります」、石田氏は「やはり心のハードルはあるのではないか、と思います。私たちには丁寧な説明も求められる、との認識です。若者を中心に、生体認証サービスが普及する世の中の流れもありますので、私たちも努力を重ねてまいります」と回答した。