日本テレビ系ドキュメンタリー番組『NNNドキュメント‘24』(毎週日曜24:55~)で、9月1日に放送される『はるの空 聞こえなくても、できるんだよ』(札幌テレビ制作)。大自然が広がる北海道・美瑛町で民泊を営む春日晴樹さん(42)とその家族に密着した作品だ。
晴樹さんと妻の史恵さん(38)は、音のない世界で生きてきた聴覚障害者だが、番組で映し出されるのは、耳の聞こえる2人の子どもたちとの間で“バリア”を感じさせないコミュニケーションを取る姿。札幌テレビの山崎健太郎ディレクターは、諦めない気持ちを持つ晴樹さんを中心とするこの家族から、パワーをもらいながら取材したという――。
手話スタッフがいなくても順調に取材進行
取材を始めたのは、昨年4月。地元紙の「耳の聞こえない男性が宿を開業した」という記事を見てコンタクトを取ったが、聴覚障害者と接するのは初めてのことだったため、「どういう態度で、どういうコミュニケーションを取らせていただくのがいいのか…」と悩みながら対面に臨んだ。
しかし、実際に会ってみると「全くの杞憂でした。優しく迎え入れてくださって、人は誰でも向き合えばコミュニケーションできるんだと感じられましたし、ある意味“壁”を作っていたのは私たちのほうだったのかもしれないと、ハッとさせられました」と気付かされた。
最初はホワイトボードを使った筆談でやり取りをしていたが、「晴樹さんは僕らの口の動きや表情を見て言っていることを理解して、声で返してくださるんです。だから、ある程度スムースに会話が成立して、そこにまず驚きました。“この人は本当に聞こえていないのだろうか?”とさえ、ちょっと思ったくらいです」といい、手話のできるスタッフがいなくても順調に取材が進行。
生まれた時から耳の聞こえない晴樹さんが言葉を発することができるようになったのは、今回の番組にも登場する母親の強力なサポートを受け、幼少期から様々な壁にぶつかりながら、並々ならぬ努力を重ねて訓練してきた結果だという。
健常者の家族よりも密なコミュニケーション
晴樹さんを中心とする春日さん一家の印象は、「本当に皆さんが明るくて優しいご家族で、一緒にいると元気をもらえるような気持ちになります。取材を重ねていくたびに、自分もポジティブな晴樹さんたちからパワーを頂いたので、そういう部分も視聴者の方々に感じてもらいたいという思いもあります」とのこと。そして、いわゆる健常者の家族よりも、密にコミュニケーションを取っているように感じられた。
「聞こえないからこそ、目と目で向き合うということを非常に大事にされていて、日常的な家族のコミュニケーションで、夫婦も子どもたちも、お互いに目と目を見て会話されているんです。私たちは聞こえるからこそ、どうしても声だけのコミュニケーションがメインになって、相手の目を見て話すということを忘れがちになっていると思うのですが、それができていることが、思いが通じ合っている理由なのではないかと思いました」
それに加え、「親子で話しかけるときに体に触れたりして、時には“触覚”も使ってコミュニケーションを取ることも大事にしているのが印象的でした」とも受け止めた。