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「40-40」の達成など卓越した個人成績の話題が目立つロサンゼルス・ドジャースの大谷翔平選手だが、本人の最大の目標はワールドチャンピオン、そのための勝利だ。その勝利に向けた大谷選手の貢献度や活躍度はどのようなものか?今回はMLBで用いられる2つの指標や「40-40」達成試合での実例も交えて分析する。(文:島倉孝之)
打点、本塁打がチームの勝利に直結!
ロサンゼルス・ドジャースの大谷翔平選手は、現地時間8月23日のタンパベイ・レイズ戦で、今季40盗塁を記録した後にサヨナラ満塁本塁打となる今季40号を打った。その「40-40」達成後のヒーローインタビューでわかるのは、チームの勝利やワールドチャンピオンが本人の第一目標であることだ。
この一発に関しても、勝利に直結したことが本人には一番大きかっただろう。レギュラーシーズン終了まで1か月を切った現在、大谷選手のチームの勝利への貢献がさらに重要になる。今回は、大谷選手の打撃のチームへの貢献に焦点を当てたい。
チームの勝敗別にみた大谷選手の2024年の成績(現地時間8月25日終了時点、以下時点は同じ)は以下のようになる。
率関連の数字はいずれも勝ち試合が上回り、特に長打率は勝ち試合が負け試合を2割近く上回る。違いが顕著なのは本塁打数で、勝ち試合は2.45試合に1本、負け試合は5.2試合に1本と、1本あたりの試合数は2倍以上の違いがある。
一方、盗塁に関しては、勝ち試合は3.62試合に1つ、負け試合は2.74試合に1つと、1試合当たりに換算すると勝敗の関係が逆転する。これは、大量リードでは盗塁しないというMLBの不文律も背景に、勝ち試合の盗塁機会が伸びにくい影響もあろう。
1試合の安打数、本塁打数、打点数、盗塁数別にみたチームの成績は以下のようになる。
指標をチームの成績と相関の高い順から並べると、打点>本塁打>安打>盗塁となろう。大谷選手に打点のない試合のチームの勝率は5割未満だが、打点を挙げると勝率は7割を超える。本塁打を打てば勝率は7割5分近くになる。本塁打を打てばチームの勝利に直結する傾向が明確なのだ。
なお、盗塁に関する相関が弱く、1試合2盗塁を挙げた試合の勝率は.333にとどまっているが、これは上記の試合展開の問題と考えられる。該当の勝ち試合のスコアは4-3、6-3のクロスゲームだ。
貢献度を現す2つの指標とは
勝利への貢献度につき、MLBではWAR(Wins Above Replacement)、WPA(Win Probability Added)の2通りの指標がある。前者は控え選手と比較して積み上げた勝利数、つまり当該選手の存在で何勝積み増せたかを示すもので、野手の場合は打撃・走塁・守備の各要素が加味される。
複数の主体が算出しているが、本稿では米分析サイト『Baseball Reference』のものを取り上げる。後者はプレーごとに計算される勝利の期待値の増加・減少幅の合計値である。
現地時間8月25日時点でのナショナルリーグのWAR、WPAランキング上位は以下のとおりである。
大谷選手はリーグ1位のWAR6.6を記録、2位のマルテ選手に0.6ポイントの差を付けている。WPAはプロファー選手に続く4.115を記録している。両指標とも5位以内にランクインしているのは大谷選手だけだ。
MLB全体では、ニューヨーク・ヤンキースのアーロン・ジャッジ選手がWARで1位(9.2)に、クリーブランド・ガーディアンズのクローザーであるエマニュエル・クレース投手がWPAで1位(5.272)になっている。野手のWPA1位はヤンキースのフアン・ソト選手(5.165)である。
ドジャースの他の主要野手に関する2024年のWAR(左側)、WPA(右側)は以下の通りで、大谷選手の数値の方が上回っている。
ムーキー・ベッツ:4.2/1.503
フレディ・フリーマン:3.9/1.482
テオスカー・ヘルナンデス:2.9/2.112
WPAの計算について簡単に説明したい。MLBの各試合には打席や展開ごとに「勝利の確率」が計算されている。以下は、大谷選手が「40-40」を決めた8月23日のタンパベイ・レイズ戦の例だ。
大谷選手が9回裏に本塁打を打つ直前、2死満塁の場面でのドジャースの勝利の確率は65.8%。打った直後はドジャースの勝利の確率は100%になる。
この本塁打に対し、100%-65.8%=0.342のWPAが加算される。打たれた投手からはこのWPAの値が減算される。「34.2%分のチームの勝利の確率を動かした」ことになるのだ。
この計算が全てのプレーに対し行われ、合計が当該試合での当該選手のWPAになる。他の4打席や1盗塁を合わせたこの試合でのWPAは0.311だった。
“数値で見る”今季の大谷翔平ベストゲームは…?
ここで、大谷選手の今季のWPAのベスト/ワースト5を以下に示した。ちなみに、上記レイズ戦は6位になる。
ベスト5のうち3試合、ワースト5のうち4試合が延長戦で決着した。ワースト5試合には不調期の試合が目立つ一方で、うち4試合が実はチームが勝利している。
1位のアトランタ・ブレーブス戦は、個人記録は3打数1安打2打点2四球で、この1安打が延長10回裏の同点タイムリーヒットだった。WPAは試合展開のほかチャンスでの打撃機会数も影響し、試合展開を左右する重要性が高くなるほどプラスやマイナスの幅が大きくなる。このランキングはWPAの特質を反映しているともいえる。
すでに「40-40」を達成し、「50-50」の可能性もささやかれるなど個人成績面で例年以上にファンを楽しませる大谷翔平選手。
そこに、今年はチームのポストシーズン進出という去年までにない楽しみが直結している。数字上からも、今年の大谷選手は「チーム最大の勝利への貢献者」といっていい。
ポストシーズンは、何より本人が未体験の楽しみな世界であろう。9月にMLBチームの一員として大谷選手が初めて体験するだろうシャンパンファイトはどのようなものになるだろうか。
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【了】