大正製薬が、医師監修の「マインドフルネス思考を取り入れた快眠テクニック」を紹介している。

「夏の夜に快眠を得るためにしていること」をアンケート調査

同社が2024年7月、全国の20代以上の男女1000名を対象に「夏の夜に快眠を得るためにしていること」を調査したところ、多い順に「クーラーをつけっぱなしにする」(519名)、「扇風機をつけっぱなしにする」(304名人)、次いで「照明を真っ暗にする」(235名)、「規則正しい生活を送る」(181名)、「夜遅くに食事をしない」(155名)が上位5項目となった。

  • 夏の夜、快眠を得るためにしていることは?

脳神経内科医で医学博士の山下あきこ氏によると、夏の暑い夜に良質な睡眠を確保するためには、適切な食事、環境を心がけ、リラックス効果のあるルーティンを取り入れることがおすすめだという。

医師監修の快眠テクニック

朝日を浴びながらウォーキングなどの軽い運動をすることで、体内時計を整えることができるという。特に太陽が昇りきる前の時間帯、できれば朝9時頃までに窓を開け、朝日を浴びるよう、山下先生は勧めている。朝15分くらいの日光浴をするのがもっとも理想的なので、涼しい時間帯の散歩も推奨される。

良質な睡眠のためには、意識的に特定の栄養素を摂取すること、また、サプリメントの摂取も有効である場合があるという。

朝にはたんぱく質をたっぷり摂ることで、夜のメラトニン生成が促進されると考えられる。夕食は軽めにして、お腹いっぱい食べるのは避けるのが得策。脂質の多い食事は、睡眠時に胃腸に負担がかかり、睡眠の質を下げるため、夜は避けたほうが良いという。

寝る前にはカフェインを含む飲み物を避けることが推奨される。ただし、カフェインを含むものでも玉露の緑茶はカフェインの覚醒効果を打ち消すテアニンを含むため、適量ならば睡眠を妨げないと言われている。温かいノンカフェインのハーブティーなどもおすすめだとか。冷たい飲料は胃腸の負担になるので避けたほうがいいとされる。また、アルコールは一時的に眠気を誘発するので眠るために飲んでしまうという人もいるが、アルコールは睡眠の質を低下させ、夜中に覚醒しやすくなるため、寝酒は避けたほうが良いという。

睡眠の質の向上に有効な栄養素・成分は?

「グリシン」は血管を拡張し体温を調節することで、睡眠を促してくれる効果があるといわれている。特に脳疲労の回復のキー成分の1つ。不足すると不眠の原因になる可能性があるという。グリシンを多く含む食品は、エビ、カニ、ホタテ、牛すじ、鶏軟骨、豚足などがある。グリシンは、実はコンビニのおにぎりにも保存料として使われることがあるとか。

グリシンに加え「タウリン」を摂取することで、肉体の疲労回復の効率が向上することが期待できる。タウリンは、筋肉の回復を助け、疲労を解消する可能性がわかっている栄養素。タウリンを摂ることで、睡眠中の全身の回復が促進されると考えられる。睡眠で疲れが取れない場合には、タウリンを含む魚介類(特にイカやタコなど)を積極的に摂ることもおすすめだという。睡眠の質を改善するサプリメントにはグリシンを主成分とするものが多いが、ウリンも併せて配合されているものがあれば、脳と身体への相互の相乗的なアプローチが期待できる。

他にも、興奮した神経を落ち着かせる「GABA」や、神経伝達物質を作る「タンパク質」、セロトニンの合成に不可欠な「ビタミンB6」、脳神経の正常な働きを助けてくれる「ビタミンB12」、ドーパミンを作るのに必須といわれる「鉄」、睡眠を促進する効果のある「ラクチュコピクリン」、身体の自然なリラクゼーションを促進する「シゴカ」といった栄養素・成分が、睡眠の質の向上に有効だという。

ストレスを軽減し胃腸に負担をかけない「マインドフルネスイーティング」

「マインドフルネスイーティング」とは、食べ物を使った瞑想のこと。アメリカでは、肥満や糖尿病の治療にも役立てられているという。食事中にスマートフォンを見たり、考えごとをしたりするのはいったん休止して、食べることに集中。お腹を意識して今の空腹度を確認したら「目→手→香り→舌→喉→口の動き→耳→心→ストーリーを思い描く→自由に味わう」の順に意識を移して味わうことで、ストレスを軽減し、胃腸に負担をかけず食事を楽しむことができる。

睡眠環境の整え方

睡眠環境を整えることも、質の高い睡眠に不可欠。夏の夜には、室温を16~25度に保つことが理想的だという。湿度が高すぎると不快感を引き起こし、自律神経が乱れやすくなるため、湿度は40~70%の範囲で管理するのがおすすめだとか。

寝具は自分が触り心地が良いと感じる、リラックスできる素材を選ぶことができる。リネンやコットン製のシーツなど、汗を吸収しやすい素材が適している。シルクは天然素材だが、湿性が低くべたつきやすいのであまりおすすめはできないという。色に関しては、薄い青色がリラックス効果が高いといえる。

部屋を完全に暗くするほうが理想的な眠りを得られると考えられる。脳波はわずかな光でも影響を受けるため、真っ暗な環境で眠ることで、アルファ波が促進される。

香りは、ラベンダーなどのリラックス効果のある香りを使うと、脳波が安定し、良質な睡眠が得られる。

良質な睡眠を得るための睡眠前ルーティン

入浴は、40度のぬるめのお湯で、就寝の2時間前がおすすめだとか。就寝時に自然に深部体温が下がり、眠りに入りやすくなるという。

寝る直前に感情が高ぶると脳が覚醒してしまい、眠りが浅くなるため、寝る1時間前からは静かに過ごし、リラックスする時間を持つことが大切。パソコンやスマートフォンのブルーライトは脳を覚醒させてしまうので、電灯の下で日記を書いたり、家族と穏やかに話をするといった過ごし方がおすすめだという。

身体の感覚に意識を向ける「ボディースキャン」

ボディースキャンとは、身体の感覚に意識を向ける瞑想のこと。ふとんの中で、眠る前10分くらいの時間をかけて行うことができる。身体のどの部分に緊張があるかに気づき、そこをリラックスさせてあげることで、疲労の取れる効率的な睡眠を得る一助になるという。

まず目を閉じ、呼吸に集中してゆっくり息をし、左足の親指に意識を向ける。次に人差し指、中指、とそれぞれの指に意識を向けていく。そして土踏まず、踵、足首へと意識するところを上げていく。そしてゆっくりと上の方へと意識が戻ってくるように、それぞれの足の部位に意識を向けていく。ふくらはぎ、すね、膝、太もも、骨盤まで来たら、今度は右足の親指に意識を移動させ、左足同様、意識を爪先から骨盤に向かってゆっくりと移動させていく。

その後、おへその少し下のあたりに意識を向けて、呼吸とともにお腹が上下するのを感じ、そのまま少し上のほうに意識を上げ、背中が布団に当たっているところを感じる。続いて、身体の中にある肺や心臓に意識を向けて、肩に意識を向け、そこから、手のひら、前腕、上腕、肩、首、喉へと意識するところを上げていき、顔の口、鼻、目、耳、そして頭のてっぺんを意識。頭のてっぺんにぽっかりと穴があき、息を吸うとそこからエネルギーが入り、吐くときは両足先から入ってきて頭のてっぺんから抜けていくようなイメージをしてみる。

規則的な生活と神経も身体も緩ませ、メンテナンスしてあげる意識が、睡眠の質改善につながるという。